キーンコーンカーンコーン。
「はい、やめー。1番後ろの席の人は解答用紙回収してー」
3日間にわたる前期中間試験が終わった。聖奈は解答を回収するために席を立つ。手応えはあるようなないような。
今日、茜と加奈子は部活らしいが、聖奈は何も予定がない。お気に入りのエグレシア料理屋「えぐれしあん」に行って1人打ち上げを楽しもうと、聖奈は解答用紙を集めながら心に決めた。
星ノ谷高校から歩いて15分。たくさんの会社が入っている大きなビルの地下に、そのお店はあった。焦茶を基調としたアンティーク風の外観に似つかわしくない、妙に親しみやすい「えぐれしあん」の看板。日本好きのエグレシア人夫婦がやっているらしい。「まあ、このネーミングセンスは日本人ではないよな」と聖奈は思っている。
ちなみに聖奈がこのお店を見つけたのは星ノ谷高校の入試の日。電車から降りて改札を出た聖奈は、星ノ谷高校に1番近い出口ではなくそのとき視界に入った出口から出てしまい、そのまま迷子になった。そして、出口付近をウロウロと歩き回る中で「えぐれしあん」と巡り合ったのだ。「受かったらここで合格祝いしよう」と当時思ったことは今でも覚えている。そして、心の中の宣言通り合格発表の帰り道に立ち寄ってみた。それ以来、聖奈にとって一番お気に入りのお店となっている。
「メラール1つ」
カウンター席に案内された聖奈はこの店の看板メニュー、メラールを頼んだ。茜風に言えば「牛肉をトロトロに煮詰めたシチューみたいな料理」というやつだ。
注文を終えた聖奈はカバンから「日本史一問一答」を取り出す。試験を終えたばかりではあるが、「待ち時間に勉強」がクセになってしまっている。
「……さすがに今日はやめよう」
参考書を開いた瞬間、聖奈の頭を「試験」の2文字がよぎった。1文字も読んでいない参考書をパタンと閉じ、スッと鞄にしまう。店内のラジオから流れてくるケルト音楽を思わせるBGMがじわりと身体に染み込んできた。
「持ち帰り、メラール2つ」
レジの方から聞こえた男性の声に反応して聖奈は横を向いた。そのとき声の主の男性とばっちり目があった。気恥ずかしくなった聖奈は慌てて目を逸らす。制服姿の聖奈が珍しかったのだろうか。どうやら男性側も聖奈を見ていたらしい。
それにしても、お持ち帰りができるなんて聖奈は知らなかった。これなら学校のお弁当として……と考えて1秒で諦めた。徒歩15分はさすがに遠い。行って帰って……走れば間に合うかもしれないが食べる時間がない。
「はい、メラールね」
カタコトの日本語と共に目の前に置かれた皿から、ほろほろに煮込まれた牛肉の香りがふわりと広がった。
「いただきます」
聖奈は手を合わせて小さく呟いた。
やっぱりここのメラールは美味しい。本場の味がする。聖奈は1人打ち上げを満喫した。
「はい、やめー。1番後ろの席の人は解答用紙回収してー」
3日間にわたる前期中間試験が終わった。聖奈は解答を回収するために席を立つ。手応えはあるようなないような。
今日、茜と加奈子は部活らしいが、聖奈は何も予定がない。お気に入りのエグレシア料理屋「えぐれしあん」に行って1人打ち上げを楽しもうと、聖奈は解答用紙を集めながら心に決めた。
星ノ谷高校から歩いて15分。たくさんの会社が入っている大きなビルの地下に、そのお店はあった。焦茶を基調としたアンティーク風の外観に似つかわしくない、妙に親しみやすい「えぐれしあん」の看板。日本好きのエグレシア人夫婦がやっているらしい。「まあ、このネーミングセンスは日本人ではないよな」と聖奈は思っている。
ちなみに聖奈がこのお店を見つけたのは星ノ谷高校の入試の日。電車から降りて改札を出た聖奈は、星ノ谷高校に1番近い出口ではなくそのとき視界に入った出口から出てしまい、そのまま迷子になった。そして、出口付近をウロウロと歩き回る中で「えぐれしあん」と巡り合ったのだ。「受かったらここで合格祝いしよう」と当時思ったことは今でも覚えている。そして、心の中の宣言通り合格発表の帰り道に立ち寄ってみた。それ以来、聖奈にとって一番お気に入りのお店となっている。
「メラール1つ」
カウンター席に案内された聖奈はこの店の看板メニュー、メラールを頼んだ。茜風に言えば「牛肉をトロトロに煮詰めたシチューみたいな料理」というやつだ。
注文を終えた聖奈はカバンから「日本史一問一答」を取り出す。試験を終えたばかりではあるが、「待ち時間に勉強」がクセになってしまっている。
「……さすがに今日はやめよう」
参考書を開いた瞬間、聖奈の頭を「試験」の2文字がよぎった。1文字も読んでいない参考書をパタンと閉じ、スッと鞄にしまう。店内のラジオから流れてくるケルト音楽を思わせるBGMがじわりと身体に染み込んできた。
「持ち帰り、メラール2つ」
レジの方から聞こえた男性の声に反応して聖奈は横を向いた。そのとき声の主の男性とばっちり目があった。気恥ずかしくなった聖奈は慌てて目を逸らす。制服姿の聖奈が珍しかったのだろうか。どうやら男性側も聖奈を見ていたらしい。
それにしても、お持ち帰りができるなんて聖奈は知らなかった。これなら学校のお弁当として……と考えて1秒で諦めた。徒歩15分はさすがに遠い。行って帰って……走れば間に合うかもしれないが食べる時間がない。
「はい、メラールね」
カタコトの日本語と共に目の前に置かれた皿から、ほろほろに煮込まれた牛肉の香りがふわりと広がった。
「いただきます」
聖奈は手を合わせて小さく呟いた。
やっぱりここのメラールは美味しい。本場の味がする。聖奈は1人打ち上げを満喫した。
