僕の願いを君にたくして

 キーンコーンカーンコーン。
「はい、やめー。1番後ろの席の人は答案用紙回収してー」
 聖奈は立ち上がり、答案用紙を集め、試験監督の先生に手渡した。
「やっと終わったー!」
 聖奈の1つ前の席に座っている茜は開放感に満ちた様子で伸びをしている。

 蒼が星ノ谷高校を去った翌週、後期中間試験が1年8組の生徒たちをいつもと変わらない日常へと引き戻した。
 とは言え、教室の出入り口側から2列目。蒼の席がなくなり、1つずつ前に詰められぽっかり空いた空間に、違和感と寂しさを感じずにはいられない。
「そういえばさー、藤原くんのメッセージアプリアカウントが消えてるって話知ってる?」
 聖奈と加奈子が着席するのを見計らったかのように、茜は後ろを振り向きながら話しかけた。
「え、そうなの?」
 聖奈はとぼけながらメッセージアプリを開く。が、本当はとっくに気付いている。
「あれま、ほんとだ……」
 加奈子もスマートフォンを触って確かめている。
「白王子ファンってわけじゃないけどさ、やっぱり寂しいよねー」
 茜はもともと藤原くんの席があったはずの場所に視線を向けた。
「うん……」
 聖奈は「藤原蒼」の名が消えてしまったメッセージ履歴一覧を見つめる。「別れの挨拶くらいちゃんと言えばよかったな」という後悔を抱きながら。
 思い出される。蒼の最終登校日ですら、聖奈は何も話せなかったのだ。帰り際、蒼と目があったにもかかわらず。蒼が女生徒に囲まれているのを見て遠慮してしまった。
「それにしても、藤原くんって本当に謎多き人だったよね」
 加奈子はスマートフォンを机に伏せた状態で置いた。
「分かる。実はどこかの国の王子様で、身分を隠して日本で生活していたけど、戻る理由ができて国に帰りました……って言われても信じちゃいそうだよ」
 聖奈はドキッとした。茜よ、何も考えていないんだろうけど、半分くらい当たっているぞ。
「それはアニメの見過ぎ。……でも、『事実は小説よりも奇なり』って言うしね。案外、的を射てたりして。」
 加奈子が笑いながらツッコミを入れた。

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 クリスマスイブ。聖奈に1件のメッセージが届いた。送り主は宗馬さんだ。
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お久しぶり。藤原宗馬です。
おかげさまで蒼の件は少しずつ前に進んでいます。
改めてお礼を言わせてほしい。ありがとう。
ところで、もし都合がつきそうなら理玖くんと一緒にエグレシア王国に遊びに来ませんか?
交通費や宿泊費はこちらで負担します。
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