ミレリアからホテルに戻ってきた聖奈は部屋のドアを開けた。フワッとラベンダーの香りが漂ってくる。奥を見ると窓が少しだけ開けられていた。
「おかえり」
加奈子はベッドの上であぐらをかいて座りながらスマートフォンを触っていた。
「ただいま」
聖奈は部屋の中にある椅子の上に荷物を下ろす。
「どうだった? 散歩」
加奈子は顔を上げ、視線をスマートフォンから聖奈へと移した。
「行って良かったーって感じ」
聖奈の表情はどことなくスッキリとしていた。
「そっか」
「舞台はどうだったの?」
聖奈は加奈子の方を向いてベッドに腰をおろした。
「行って良かったーって感じ!」
加奈子はニヤッと笑いながら少し早口で続けた。
「薬の会社を舞台にした作品なんだけどね。その会社の社長は自分にミスが続いたことをきっかけに『病気かもしれないから社長辞める』って言いだして、秘書に後継を任せるの。でも、実は社長のミスは秘書が仕組んだものでしたって話で」
「ほう……」
あまりの早口に、加奈子の話のほとんどが聖奈の頭を素通りしていく。
「そのまま秘書が会社を乗っ取っちゃうんだけど。面白いのがここから。なーんか昨日のミュージカルに似てる気がするんだよね」
「『メイレートン宮殿の秘密』?」
「そう! おそらく劇団コウモリは、『100年前の事件は全て王様の弟が仕組んだものかもしれない』って言いたかったんだと思う。序盤で優秀な研究員が解雇されちゃうんだけど、それは『メイレートン宮殿の秘密』でいう王妃王女殺害とリンクしてたんじゃないか……ってね!」
聖奈がついてこれていないことなどお構いなしに、加奈子はまるで推理ショーを披露するかのようにどんどんと話を続けていく。
「あと『王様が狂ったのも裏がある』ってメッセージ性も感じたんだよね。社長が途中から自社の薬を試飲するようになるんだけど、そこから明らかに演技が変わってて。実は麻薬的なものを飲んでた表現なんじゃないかって思ってね」
加奈子のベッドには「劇団コウモリ」と書かれているパンフレットが落ちている。『この秘密を握るもの』というのがタイトルなのだろう。
「まあ、私の憶測だけどね。めっちゃ深読み!」
加奈子はケロッとした表情を見せた。
「なるほど……」
自分でも何が「なるほど」なのかよく分からないまま、聖奈は相槌を打った。
「ちなみに、この劇団コウモリの主要メンバーの1人がどうやら元貴族らしいんだよね。政治する気がなかったせいで、家から追い出されたっぽい。ってのを今ネットで見てた!」
「ほう……。パンフレット見ていい?」
「もちろん」
聖奈は加奈子からパンフレットを受け取った。
劇団コウモリ。エグレシア芸術大学の同期5人が立ち上げた演劇ユニット。活動歴は10年。
「おかえり」
加奈子はベッドの上であぐらをかいて座りながらスマートフォンを触っていた。
「ただいま」
聖奈は部屋の中にある椅子の上に荷物を下ろす。
「どうだった? 散歩」
加奈子は顔を上げ、視線をスマートフォンから聖奈へと移した。
「行って良かったーって感じ」
聖奈の表情はどことなくスッキリとしていた。
「そっか」
「舞台はどうだったの?」
聖奈は加奈子の方を向いてベッドに腰をおろした。
「行って良かったーって感じ!」
加奈子はニヤッと笑いながら少し早口で続けた。
「薬の会社を舞台にした作品なんだけどね。その会社の社長は自分にミスが続いたことをきっかけに『病気かもしれないから社長辞める』って言いだして、秘書に後継を任せるの。でも、実は社長のミスは秘書が仕組んだものでしたって話で」
「ほう……」
あまりの早口に、加奈子の話のほとんどが聖奈の頭を素通りしていく。
「そのまま秘書が会社を乗っ取っちゃうんだけど。面白いのがここから。なーんか昨日のミュージカルに似てる気がするんだよね」
「『メイレートン宮殿の秘密』?」
「そう! おそらく劇団コウモリは、『100年前の事件は全て王様の弟が仕組んだものかもしれない』って言いたかったんだと思う。序盤で優秀な研究員が解雇されちゃうんだけど、それは『メイレートン宮殿の秘密』でいう王妃王女殺害とリンクしてたんじゃないか……ってね!」
聖奈がついてこれていないことなどお構いなしに、加奈子はまるで推理ショーを披露するかのようにどんどんと話を続けていく。
「あと『王様が狂ったのも裏がある』ってメッセージ性も感じたんだよね。社長が途中から自社の薬を試飲するようになるんだけど、そこから明らかに演技が変わってて。実は麻薬的なものを飲んでた表現なんじゃないかって思ってね」
加奈子のベッドには「劇団コウモリ」と書かれているパンフレットが落ちている。『この秘密を握るもの』というのがタイトルなのだろう。
「まあ、私の憶測だけどね。めっちゃ深読み!」
加奈子はケロッとした表情を見せた。
「なるほど……」
自分でも何が「なるほど」なのかよく分からないまま、聖奈は相槌を打った。
「ちなみに、この劇団コウモリの主要メンバーの1人がどうやら元貴族らしいんだよね。政治する気がなかったせいで、家から追い出されたっぽい。ってのを今ネットで見てた!」
「ほう……。パンフレット見ていい?」
「もちろん」
聖奈は加奈子からパンフレットを受け取った。
劇団コウモリ。エグレシア芸術大学の同期5人が立ち上げた演劇ユニット。活動歴は10年。
