聖奈はメガネをかけた優しい顔つきの金髪男性に連れられ、赤レンガ造りの少し古びた建物の中へと入っていった。建物の中は薄いクリーム色の床と壁が広がっており、大学と言うよりは老舗のホテルっぽい感じだ。
聖奈は透明なガラス棚が壁一面に敷き詰められた部屋へと案内される。数えきれないくらいたくさんの鉱物がきれいに展示されていた。石好きというわけではないが、これはちょっと感動する……!
聖奈を案内してくれている男性はジョン・クレマンという鉱物学化学研究室の学生らしい。ジョンはいくつか鉱物をピックアップすると、聖奈を隣の研究室へと案内した。職員室にあるような机が10台向かい合わせで並んでおり、各机にはパソコンや顕微鏡が置かれている。部屋にはジョンの他に2人の学生がいて、それぞれパソコンに向かって何やら打ち込んでいた。
「どうぞ、ここに座って。」
ジョンは聖奈を自分の机へと案内し、キャスターのついた椅子を用意した。聖奈は忙しそうにしている学生たちに迷惑をかけないよう、一礼だけして静かに腰をおろす。
「お、高校生?」
「1人だけかー」
「来ないよりよくない? 去年0だったし」
「確かに」
「日本の学生さんだっけ? よろしく」
聖奈の気遣いは不要だったらしく、ジョンと2人の学生が話し始めた。
「日本から来ました金子聖奈です。よろしくお願いします」
聖奈は椅子から立ち上がって日本人らしく真面目な挨拶をしたあと、再び椅子に腰掛けた。ジョンと2人の学生は顕微鏡を使いながらいろいろなことを教えてくれた。鉱物の採掘について。鉱物の活用について。この研究室で行っている活動について。
聖奈が研究室に到着して30分くらい経っただろうか。白衣を着た白髪の男性と金髪の男性が入ってきた。初日に講義の説明をしてくれた2人組だ。
「ジョン、ありがとう」
白髪の男性は聖奈の方を向いて続ける。
「どうも、教授のシモン・ルルーです」
シモン教授は聖奈に向かってニコリと微笑みかけた。
「助手のリュカ・ウェルディエです」
若い金髪の男性は一礼をする。
「金子聖奈です。はじめまして」
聖奈は少し緊張した面持ちで立ち上がろうとした。
「あー、座って大丈夫だよ。聖奈さんってシュルカナイトのレポートを提出してくれた子だよね?」
シモン教授は喋りながら自席と思われる真ん中の席まで歩き、ゆっくりと腰かけた。
「はい」
聖奈は背筋をピンと伸ばした状態で返事をした。
「これがシュルカナイトだよ、見てみるかい?」
そう言いながら、シモン教授は机の上にあった木箱の蓋を開け、聖奈のいる机の前に置いた。そこには深い蒼色の光沢のある石が入れられていた。
「シュルカナイトの医療活用研究はマニアックな分野だから、この研究を知っていることに驚いたよ」
シモン教授は興味深そうに聖奈の方を見ながら座り直した。
「それは……」
聖奈はこの重い話が「自分事でない」という事実に一瞬躊躇った。が、ここにいる人たちが本件の専門家であることを思い出し、話を続ける。
「私の知人がコールグリンパ症という病気を患っているのですが……その薬にシュルカナイトが使われていると知って、レポートにまとめました」
「……」
気のせいだろうか。聖奈の言葉に研究室が一瞬静まりかえった。
「そうか……」
シモン教授は目線を机に落としながら重い口を開く。
「研究の中止を阻止できなかったこと、大変申し訳なく思うよ」
申し訳なさそうな顔をしているシモン教授の言葉を、聖奈はすぐに理解できなかった。
「えっと……」
頭をぐるぐる働かせている聖奈の表情は完全にかたまっている。「研究の中止」と聞こえた気がする……でも英語だったし、聞き間違いかもしれない。
いや、多分合っている。宮田くんの様子がそれを物語っているではないか。
「あの……研究って中止してるんですか?」
聖奈はおそるおそる聞いてみた。心臓がバクバクと音を立てている。
「まだ知らなかったみたいですね。ここ1〜2ヶ月の話だから」
シモン教授の隣に座っていたリュカは気まずそうな顔をした。
「あの、研究再開の予定はあるんでしょうか?」
聖奈は拳をギュッと握りしめた。
「……。僕たちも手を尽くしてるんだけどね」
シモン教授の寂しげな表情からは本件に関する疲労感が読み取れる。彼らにとっても研究の中止は不本意なことだったのだろう。
「そう、ですか。……あの、どうしてこの研究は中止になってしまったんでしょうか」
聖奈は、まるで自分ごとかのようにショックを受けていた。手がわずかだが震えている。
「エグレシア王国は王族貴族が中心となって政治を行っているってのは知ってるかな?」
シモン教授の問いに聖奈は静かに頷いた。
「もともとシュルカナイトの医療活用研究はエドワード・メリアッシュ前公爵の時代にはじまったものなんだ。当時、シュルカナイトは使用価値が見出されていない鉱物だったんだけど、15年くらい前だったかな……日本の研究医、鈴木悠聖先生と竹本栞菜先生の論文によって病気の治療に使える可能性が指摘されて」
シモン教授は淡々と話し出した。英語が得意な聖奈にとっても、これはなかなかに難しい内容である。聖奈は聞き漏らしのないよう、耳を傾けた。
「それから5年くらい経った頃、つまり10年前だね。エグレシア王国の小児科医となった鈴木悠聖先生が協力するかたちで、日本の製薬会社とタッグを組み、コールグリンパ症の新薬開発を行うことになったんだ」
この話は聖奈も知っている。シモン教授の言う「日本の製薬会社」というのは宮田くんのお父さんの会社なのだろう。
「それが、3年前の事件で……」
今までスラスラと言葉を繰り出していたシモン教授の口が止まる。それだけ彼にとって辛い出来事だったのだろう。
「メリアッシュ惨殺事件……ですか。」
聖奈の問いにシモン教授はゆっくりと頷いた。
「本当に残念な事件だったよ……。そこで、エドワード・メリアッシュ前公爵と、その息子、継承権第一位のアズール・メリアッシュ前公子が亡くなってしまい、公爵位は継承権第二位の弟、モリス・メリアッシュ公爵が引き継ぐことになったんだけど……」
「そのせいで研究を中止せざるを得なくなったんだ」
リュカが怒りを抑えきれない様子でシモン教授の説明に加わってきた。
聖奈は頭の中で整理する。つまり、元公爵の弟が偉くなって、研究が中止になったってこと……?
「メリアッシュ家は『鉱物に関する権利』というものを所有しているんだけど、それをモリス・メリアッシュ公爵が引き継ぐことになってね……そこから風向きが変わってしまったんだ」
シモン教授は聖奈に伝わるよう補足した。
「シュルカナイトが宝石として売れることが分かったらしくて。モリス・メリアッシュ公爵は、シュルカナイトを『政府特別使用石』っていうのに指定して、全て宝石として近隣国に輸出することを決めてしまったんだ」
シモン教授は寂しそうに俯いた。
「国として儲けを出すことが正しいのは分かるけどさー、政府特別使用石に指定することはないよな!」
リュカは、訴えかけるように言い放った。
つまり、3年前のメリアッシュ惨殺事件でエドワード・メリアッシュ前公爵が亡くなられ、モリス・メリアッシュ公爵が権利を引き継いだ。そして、国として儲けを出すためにシュルカナイトの使用法が変更された。その結果、コールグリンパ症の新薬開発が行えなくなった……ということらしい。
理不尽な事件と国の政治が原因というのはなんともやるせない。
「いや、もう、マジで、モリスは準公爵のままでいろよって感じ」
研究室にいた学生のジョンがぼやいた。
「準公爵……?」
聞き慣れない言葉に思わず聖奈は聞き返す。
「メリアッシュ家の公爵位がモリスに移ろうとしたときに、どういうわけか『鉱物に関する権利書』と『公爵位継承権に関する権利書』が見つからなかったんだって。しかもいくつかある重要書類の中でピンポイントにその2つだけ。だから、国の決まりで3年間は準公爵って立場でしか政治ができなかったんだ」
リュカが説明してくれた。
「えっと、つまり……」
聖奈は頭の中をフル回転させた。
「その権利書がもしあったら、シュルカナイトの医療活用研究はもっと昔に止められていたかもしれないね」
シモン教授は冷静に答えた。
エグレシア大学での3日間のプログラム。最終日の研究室見学は、ほとんどこのシュルカナイトの話で終わった。
「期待させてしまうことを簡単に言えないけど、こちらとしてもシュルカナイトをまた日本の製薬会社に供給できるよう引き続き動こうと思っている。我々にとっても大切な研究だったから。……その前に他の治療法が見つかるかもしれないし、お知り合いの方が良くなることを祈っているよ」
シモン教授は立ち上がって、右手を差し出した。
「今日はありがとうございました」
聖奈も右手を差し出し、握手に応えた。
「じゃあ、ジョン、外まで送っていってあげなさい」
聖奈はジョンに案内され、研究室をあとにした。
研究室を出たところでジョンが聖奈に話しかけた。
「実は僕、シュルカナイトの医療活用研究をしていた鈴木悠聖先生にお世話になっていたんだ」
「そうなんですか?」
「悠聖先生の小児病院が近所で。その悠聖先生もエドワード・メリアッシュ前公爵が亡くなられたときに一緒に殺害されてしまったんだけどね。大好きな先生だったよ」
「え……」
聖奈は新たな事実に思わず小さな声が漏れた。
「悠聖先生は日本人だから、僕も日本が好きなんだ。今日は日本の学生さんに会えて嬉しかったよ」
「あ、こちらこそ、いろんなお話が聞けてすごくためになりました」
ジョンの差し出した右手に応えるように聖奈は握手をした。
「ところで、聖奈さんってエグレシア王国かこの辺りの国に住んでたことある?」
「……? いえ、ずっと日本に住んでいました」
「そうなんだ。英語の訛り方が僕たちと同じだなって思ったんだ。悠聖先生もエグレシア英語上手だったから、もしかしたら日本語とエグレシア英語のアクセントは似ているのかもしれないね。じゃあ。引き続き、エグレシア王国を楽しんで!」
ジョンは手を振って聖奈を見送った。
聖奈は透明なガラス棚が壁一面に敷き詰められた部屋へと案内される。数えきれないくらいたくさんの鉱物がきれいに展示されていた。石好きというわけではないが、これはちょっと感動する……!
聖奈を案内してくれている男性はジョン・クレマンという鉱物学化学研究室の学生らしい。ジョンはいくつか鉱物をピックアップすると、聖奈を隣の研究室へと案内した。職員室にあるような机が10台向かい合わせで並んでおり、各机にはパソコンや顕微鏡が置かれている。部屋にはジョンの他に2人の学生がいて、それぞれパソコンに向かって何やら打ち込んでいた。
「どうぞ、ここに座って。」
ジョンは聖奈を自分の机へと案内し、キャスターのついた椅子を用意した。聖奈は忙しそうにしている学生たちに迷惑をかけないよう、一礼だけして静かに腰をおろす。
「お、高校生?」
「1人だけかー」
「来ないよりよくない? 去年0だったし」
「確かに」
「日本の学生さんだっけ? よろしく」
聖奈の気遣いは不要だったらしく、ジョンと2人の学生が話し始めた。
「日本から来ました金子聖奈です。よろしくお願いします」
聖奈は椅子から立ち上がって日本人らしく真面目な挨拶をしたあと、再び椅子に腰掛けた。ジョンと2人の学生は顕微鏡を使いながらいろいろなことを教えてくれた。鉱物の採掘について。鉱物の活用について。この研究室で行っている活動について。
聖奈が研究室に到着して30分くらい経っただろうか。白衣を着た白髪の男性と金髪の男性が入ってきた。初日に講義の説明をしてくれた2人組だ。
「ジョン、ありがとう」
白髪の男性は聖奈の方を向いて続ける。
「どうも、教授のシモン・ルルーです」
シモン教授は聖奈に向かってニコリと微笑みかけた。
「助手のリュカ・ウェルディエです」
若い金髪の男性は一礼をする。
「金子聖奈です。はじめまして」
聖奈は少し緊張した面持ちで立ち上がろうとした。
「あー、座って大丈夫だよ。聖奈さんってシュルカナイトのレポートを提出してくれた子だよね?」
シモン教授は喋りながら自席と思われる真ん中の席まで歩き、ゆっくりと腰かけた。
「はい」
聖奈は背筋をピンと伸ばした状態で返事をした。
「これがシュルカナイトだよ、見てみるかい?」
そう言いながら、シモン教授は机の上にあった木箱の蓋を開け、聖奈のいる机の前に置いた。そこには深い蒼色の光沢のある石が入れられていた。
「シュルカナイトの医療活用研究はマニアックな分野だから、この研究を知っていることに驚いたよ」
シモン教授は興味深そうに聖奈の方を見ながら座り直した。
「それは……」
聖奈はこの重い話が「自分事でない」という事実に一瞬躊躇った。が、ここにいる人たちが本件の専門家であることを思い出し、話を続ける。
「私の知人がコールグリンパ症という病気を患っているのですが……その薬にシュルカナイトが使われていると知って、レポートにまとめました」
「……」
気のせいだろうか。聖奈の言葉に研究室が一瞬静まりかえった。
「そうか……」
シモン教授は目線を机に落としながら重い口を開く。
「研究の中止を阻止できなかったこと、大変申し訳なく思うよ」
申し訳なさそうな顔をしているシモン教授の言葉を、聖奈はすぐに理解できなかった。
「えっと……」
頭をぐるぐる働かせている聖奈の表情は完全にかたまっている。「研究の中止」と聞こえた気がする……でも英語だったし、聞き間違いかもしれない。
いや、多分合っている。宮田くんの様子がそれを物語っているではないか。
「あの……研究って中止してるんですか?」
聖奈はおそるおそる聞いてみた。心臓がバクバクと音を立てている。
「まだ知らなかったみたいですね。ここ1〜2ヶ月の話だから」
シモン教授の隣に座っていたリュカは気まずそうな顔をした。
「あの、研究再開の予定はあるんでしょうか?」
聖奈は拳をギュッと握りしめた。
「……。僕たちも手を尽くしてるんだけどね」
シモン教授の寂しげな表情からは本件に関する疲労感が読み取れる。彼らにとっても研究の中止は不本意なことだったのだろう。
「そう、ですか。……あの、どうしてこの研究は中止になってしまったんでしょうか」
聖奈は、まるで自分ごとかのようにショックを受けていた。手がわずかだが震えている。
「エグレシア王国は王族貴族が中心となって政治を行っているってのは知ってるかな?」
シモン教授の問いに聖奈は静かに頷いた。
「もともとシュルカナイトの医療活用研究はエドワード・メリアッシュ前公爵の時代にはじまったものなんだ。当時、シュルカナイトは使用価値が見出されていない鉱物だったんだけど、15年くらい前だったかな……日本の研究医、鈴木悠聖先生と竹本栞菜先生の論文によって病気の治療に使える可能性が指摘されて」
シモン教授は淡々と話し出した。英語が得意な聖奈にとっても、これはなかなかに難しい内容である。聖奈は聞き漏らしのないよう、耳を傾けた。
「それから5年くらい経った頃、つまり10年前だね。エグレシア王国の小児科医となった鈴木悠聖先生が協力するかたちで、日本の製薬会社とタッグを組み、コールグリンパ症の新薬開発を行うことになったんだ」
この話は聖奈も知っている。シモン教授の言う「日本の製薬会社」というのは宮田くんのお父さんの会社なのだろう。
「それが、3年前の事件で……」
今までスラスラと言葉を繰り出していたシモン教授の口が止まる。それだけ彼にとって辛い出来事だったのだろう。
「メリアッシュ惨殺事件……ですか。」
聖奈の問いにシモン教授はゆっくりと頷いた。
「本当に残念な事件だったよ……。そこで、エドワード・メリアッシュ前公爵と、その息子、継承権第一位のアズール・メリアッシュ前公子が亡くなってしまい、公爵位は継承権第二位の弟、モリス・メリアッシュ公爵が引き継ぐことになったんだけど……」
「そのせいで研究を中止せざるを得なくなったんだ」
リュカが怒りを抑えきれない様子でシモン教授の説明に加わってきた。
聖奈は頭の中で整理する。つまり、元公爵の弟が偉くなって、研究が中止になったってこと……?
「メリアッシュ家は『鉱物に関する権利』というものを所有しているんだけど、それをモリス・メリアッシュ公爵が引き継ぐことになってね……そこから風向きが変わってしまったんだ」
シモン教授は聖奈に伝わるよう補足した。
「シュルカナイトが宝石として売れることが分かったらしくて。モリス・メリアッシュ公爵は、シュルカナイトを『政府特別使用石』っていうのに指定して、全て宝石として近隣国に輸出することを決めてしまったんだ」
シモン教授は寂しそうに俯いた。
「国として儲けを出すことが正しいのは分かるけどさー、政府特別使用石に指定することはないよな!」
リュカは、訴えかけるように言い放った。
つまり、3年前のメリアッシュ惨殺事件でエドワード・メリアッシュ前公爵が亡くなられ、モリス・メリアッシュ公爵が権利を引き継いだ。そして、国として儲けを出すためにシュルカナイトの使用法が変更された。その結果、コールグリンパ症の新薬開発が行えなくなった……ということらしい。
理不尽な事件と国の政治が原因というのはなんともやるせない。
「いや、もう、マジで、モリスは準公爵のままでいろよって感じ」
研究室にいた学生のジョンがぼやいた。
「準公爵……?」
聞き慣れない言葉に思わず聖奈は聞き返す。
「メリアッシュ家の公爵位がモリスに移ろうとしたときに、どういうわけか『鉱物に関する権利書』と『公爵位継承権に関する権利書』が見つからなかったんだって。しかもいくつかある重要書類の中でピンポイントにその2つだけ。だから、国の決まりで3年間は準公爵って立場でしか政治ができなかったんだ」
リュカが説明してくれた。
「えっと、つまり……」
聖奈は頭の中をフル回転させた。
「その権利書がもしあったら、シュルカナイトの医療活用研究はもっと昔に止められていたかもしれないね」
シモン教授は冷静に答えた。
エグレシア大学での3日間のプログラム。最終日の研究室見学は、ほとんどこのシュルカナイトの話で終わった。
「期待させてしまうことを簡単に言えないけど、こちらとしてもシュルカナイトをまた日本の製薬会社に供給できるよう引き続き動こうと思っている。我々にとっても大切な研究だったから。……その前に他の治療法が見つかるかもしれないし、お知り合いの方が良くなることを祈っているよ」
シモン教授は立ち上がって、右手を差し出した。
「今日はありがとうございました」
聖奈も右手を差し出し、握手に応えた。
「じゃあ、ジョン、外まで送っていってあげなさい」
聖奈はジョンに案内され、研究室をあとにした。
研究室を出たところでジョンが聖奈に話しかけた。
「実は僕、シュルカナイトの医療活用研究をしていた鈴木悠聖先生にお世話になっていたんだ」
「そうなんですか?」
「悠聖先生の小児病院が近所で。その悠聖先生もエドワード・メリアッシュ前公爵が亡くなられたときに一緒に殺害されてしまったんだけどね。大好きな先生だったよ」
「え……」
聖奈は新たな事実に思わず小さな声が漏れた。
「悠聖先生は日本人だから、僕も日本が好きなんだ。今日は日本の学生さんに会えて嬉しかったよ」
「あ、こちらこそ、いろんなお話が聞けてすごくためになりました」
ジョンの差し出した右手に応えるように聖奈は握手をした。
「ところで、聖奈さんってエグレシア王国かこの辺りの国に住んでたことある?」
「……? いえ、ずっと日本に住んでいました」
「そうなんだ。英語の訛り方が僕たちと同じだなって思ったんだ。悠聖先生もエグレシア英語上手だったから、もしかしたら日本語とエグレシア英語のアクセントは似ているのかもしれないね。じゃあ。引き続き、エグレシア王国を楽しんで!」
ジョンは手を振って聖奈を見送った。
