僕の願いを君にたくして

 ジリリリリリリリ……ジリリリリリリリ……。
「はっ……!」
 弾かれるように目を覚ました聖奈はゆっくりと息を吐いた。
 なんだか恐ろしい夢を見た気がする。今まで感じたことのない絶望感。胸を締め付けられるような重たいものがぐるぐると渦巻いている。「悔しさ」とか「申し訳なさ」とか、分かりやすい言葉で表すならそんな感情が近いと思うが、苦しすぎて、それ以上何も考えられなかった。
 一方で、救いようのないこの夢に、聖奈はどこかあたたかさも感じていた。

 カーテンからほんわかとした光が透けている。このぼんやりとした明るさが見せるいつもと変わらない部屋の空気が、聖奈の身体を少しずつほぐしていった。
 落ち着きを取り戻し、部屋中に響き渡る金属音を煩わしいと感じはじめたとき、リビングからお母さんの声が聞こえてきた。
「聖奈! 起きてるの? いい加減目覚まし止めなさい!」
 チラッと時計に目をやる。時刻は7時05分。
「今起きた!」
 聖奈は身体を捻りながら手を伸ばし、目覚まし時計のボタンを軽く叩いた。そして、鉛のような身体を引きずるように起こした。

 リビングへ続く階段を降りながら、夢の内容を思い出そうとしてみる。けれど、思い出せない。感情が残っているだけ。

「どうしたの? 遅かったじゃない! 朝ごはんできてるわよ」
 お母さんはTVを見ながらすでに朝食を食べはじめていた。聖奈も椅子に座り、テーブルに並べられたトーストに手を伸ばす。
「リエール国侵攻により、グレマレ国から国外に避難する人が増えるなか、永田総理大臣は日本でも難民受け入れを進める方針を明らかにしました。政府は……」
 この時間はいつも重めのニュースが流れてくる。そのせいなのか、はたまた今朝見たと思われる夢のせいなのか、聖奈は食欲を失っていた。ちびちびとトーストを噛みちぎっては無理やり喉の奥に押し込んでいく。
「聖奈も中学生になったんだから、こういうニュースもちゃんと聞いておくのよ。高校受験で出るかもしれないわよ」
 そう言ってお母さんはコーヒーを飲み始めた。正直、朝から戦争だの事件だの、そういう類の話は聞きたくない。聖奈はもっと明るい番組にチャンネルを変えたいと常日頃思っている。
「続いてのニュースです。エグレシア王国の貴族、メリアッシュ家が襲撃された事件について、発見されたご遺体のうち2体の身元がエドワード・メリアッシュ、エマ・メリアッシュのものと分かりました。尚、夫妻の息子の行方については未だ分かっておらず……」
 聖奈はトーストを口に放り込むペースを上げた。そして、最後の一切れを頬に押し込み、静かに席を立った。漢字(かんじ)