だから、俺たちは原因を追う

○バッティングセンター
バッティングセンター、4つのバッティング。ホームランは大きい前歯で笑顔を見せるパンダのマーク。パラパパッパパーと鳴る音は、始まりの合図になる。
鬼頭と一ノ瀬は100円を入れて、バットを振っていた。
風見と相馬は、フェンス前のベンチに座って観覧していた。

鬼頭「よっしゃあ一ノ瀬、パンダいこかあ」
一ノ瀬「鬼頭の方が有利じゃん、元野球部」
鬼頭「俺のバットで、おばちゃんをぴやぴやさせるつーの」
一ノ瀬「うわーまじでやってくれよー」
鬼頭「棒読みかよ」
ボールが直球110キロで飛んでくる。
鬼頭も一ノ瀬が思いっきりバットを振り、当たってライナーヒットだ。

受付前のテレビが流れている。中津川河川敷事件。死亡、大喜多天(22)と表示されている。相馬はビクッと身体が硬直し、風見は自販機でラムネ缶を買って相馬に渡す。
風見「はい、相馬ラムネ好きなんだろ」
相馬「うん、ありがとう」
ここの主人の瀧口淳弥がきた。瀧口はニヤリと広角が上がっていた。
瀧口「お前ら逃げてたよな、この事件」
風見「え、瀧さんー冗談やめてくださいよ」
瀧口「ああ、違った?風見、顔面ぼこぼこだけどどした〜」
風見の顔面の腫れ具合に、瀧口は怪しんでいる。
風見「いや、これは昨日飲み屋で絡まれたんすよー助けてくださいよ」
瀧口「ふーん」
風見「そうだ、瀧さんに聞きたいことあって、例のことなんですけど」
瀧口「おおーやっと風見がくるか!イケメン待ってました」
風見は、瀧口さんとコンパの話をしている。
相馬は一ノ瀬と、鬼頭がバットを振っている姿を観察していた。
パッパラーとホームランパンダに当たったギラギラ音が鳴った。

鬼頭「一ノ瀬、パンダきたかあーー!?」
一ノ瀬はホームランパンダはなく、おばちゃんにボールが当たっていた。
一ノ瀬「当たっちゃったわ」
鬼頭「は?おばちゃん!いるじゃん!」
おばちゃんの鼻に当たったのか鼻血を出して、にやりと笑っていた。
鬼頭「やっべえええ、まじで当ててんじゃん」
相馬「え、いつからいた?」
相馬もフェンスから、話しかける。
一ノ瀬「でもさ、全然痛くなさそうなんだけど」
鬼頭「はあ?もっと、俺がえぐってやるよおお」
鬼頭がおばちゃん目掛けて打つと、おばちゃんは身体をくねって避けた。
鬼頭「へえーすげえ、舐めてくんじゃん」
一ノ瀬と鬼頭は打ち続けるが交わされ、なんだかおばちゃんは踊っているみたいだ。
鬼頭「あーなんで当たんねえんだよ」
一ノ瀬「てか、なんか踊ってない?」
鬼頭「あーーー」
鬼頭のイラついた罵声が、ホール全体に響く。
相馬はフェンスから中に入ってきて、おばちゃんの方に真っ直ぐに向かう。

一ノ瀬「え、相馬待って」
鬼頭「待て、相馬早まるなって」
相馬は振り返り、一ノ瀬と鬼頭に宣言する。
相馬「俺が話つけてくる。正体もわかるし、その方が早いじゃん」
一ノ瀬「相馬、危険かもよ」
相馬「うん、大丈夫だから」

相馬がおばちゃんの方に行くと同時に、一ノ瀬が突然バットで自分を殴った。
一ノ瀬「あああああああ」
相馬と鬼頭は一ノ瀬のバットを止めるが、混乱している。
鬼頭「一ノ瀬なにしてる、やめろおおお」
相馬「一ノ瀬!!」
一ノ瀬はようやく動きが止まったが、頭から血が出ている。
相馬「一ノ瀬、何してんの?」
一ノ瀬「…わかんない、わかんないけど」
相馬「頭…病院」
一ノ瀬「え、痛くないよ、全然大丈夫なんだけど?」
鬼頭「大丈夫ってお前」
一ノ瀬は前歯剥き出しの気持ち悪い笑顔だった。鬼頭、相馬は呆然としていた。
鬼頭「おばちゃん、いないし」
相馬「消えるの早いね」
鬼頭「ていうか、風見どこ行った?」
相馬「ああ、瀧口さんと非公開の話」
鬼頭「ああ、瀧さんが好きな合コンね」
相馬が真剣な顔で、鬼頭、一ノ瀬に向き合う。
相馬「瀧さんあの事件、中津川で俺たちが逃げているとこ見たって」
鬼頭「うそだろ…あん時いたのかよ」
相馬「多分合コン帰りだったんだろうけど、相当怪しんでた。だから風見が、弁解してるっぽい」
鬼頭「あ、それでか」

一ノ瀬は血まみれだが、バットを素振りしながら、いつも通り無心で元気だった。
一ノ瀬「大丈夫だって、誰も悪くないし」
鬼頭「大丈夫って、一ノ瀬正気?」
一ノ瀬「普通だよ、それよりおばちゃんの踊りあれなんだったの」
鬼頭「たしかに、変な踊ってた」
一ノ瀬「鬼頭も踊ってみなよ、そしたら出てくるかも」
鬼頭「はあ出るわけないだろ」
相馬が踊って見て、変なダンスだった。
一ノ瀬「はははっはは、いいじゃん」
相馬「おばちゃん出てきてよー」
鬼頭「相馬、羞恥どこやった」
相馬「とっくにないよ、どこまでも行ってやる」
一ノ瀬「相馬いいねー、絶対ぴやぴやさせよーね」
一ノ瀬は、ホームランパンダを指さした。ホームランパンダは前歯全開で、満面の笑顔だ。