だから、俺たちは原因を追う

居酒屋
滝ノ都大学の同期4人。短髪黒髪、市役所勤務、一ノ瀬朔(24)。金髪ピアス、美容師、鬼頭絵育(24)。青シャツ、高校教師、風見大吾(24)。tシャツにスラックス、介護士、相馬仁(24)が集まる。
目の前にはビール、タコのおつまみ、唐揚げ、居酒屋の定番メニューが置かれている。
一ノ瀬は、一気にビールをゴクリと飲み干した。

鬼頭「ていうかまじで乙、なんもいい事ねー」
一ノ瀬「鬼頭はカット得意じゃん、どうした」
鬼頭「俺、美容師向いてねーかも、先輩からもアンチだし、ぴやぴやさせてやりてーわ、
一ノ瀬は市役所どうなん、窓口」
一ノ瀬「んーよくも悪くもって感じ」
鬼頭「いや悪いだろ、国への文句と炎上」
一ノ瀬「まあ、人によるかな、発火するのは相手だしね、こっちは無心でいることだよ」
風見大吾がビールを持って、入ってきた。
風見「一ノ瀬は大学の時から、無を徹底してるよね」
一ノ瀬「こう言う顔なだけだよ、そういう風見は高校教師どう?」
風見「俺は逆に吐き出さないと死ぬ、うわあ」

目の前にいた鬼頭と相馬はびくっとして引いていた。
風見「あれ?ビビっちゃった?」
一ノ瀬は唐揚げにレモンを無心でかけていた。
鬼頭「高校教師って、勤務時間とか終わってそうだもんな」
風見「まあ連日寝ずにもあるから」
鬼頭「はあ?まじで」
風見「だから最近思うんだけどゴリラを、俺んとこで雇おうかな」
一ノ瀬「っぶ、はっはは、何ゴリラ?」
風見「うん、代わりにぶん殴って欲しいわ。てか相馬は?介護どう?」
相馬はジンジャエールをちびちび飲んでいた。
相馬「誰も視界にも入らないよ、介護は。こっちもゴリラ案件だよ」
鬼頭「はあ〜相馬くんも苦労ものだ」
相馬「鬼頭くっつくな、うざい」
風見「はあ、もう疲れた〜」
鬼頭「今日は盛大に飲んで、吐くぞ」
相馬「吐く宣言やめて、自分で帰ってよ?」
鬼頭「はあ?今日は帰らせねーから」
風見「覚悟しとけよ」
相馬「キモい、アイドルかよ」

鬼頭と風見は決めポーズして、酔っている。
相馬「そういえば、一ノ瀬なんか言いたいことあったんじゃない?」
一ノ瀬「あー、なんかもういいや」
相馬「皆わざわざ来てるんだから、言えばいいのに、なんで集まったの?」
一ノ瀬「…あー」
鬼頭「まあまあ、今日は発散だ!!おっと!ビールたんないじゃん、すいませーん」
鬼頭は相馬と一ノ瀬を仲介して、ビールを頼んだ。相馬は真顔で、ジンジャエールを飲む。
鬼頭はテンション高く、風見と相馬は笑っていて、一ノ瀬は無心だった。懐かしい大学サークルと、恋と青春と、思い出話に盛り上がった。

○中津川河川敷
2時17分。中津川河川敷。トンネルの端におばちゃんがいる、こちらをじっと見ていた。
気づいているのは一ノ瀬朔だけだ。
鬼頭、風見、相馬は気付かない。
鬼頭絵育の美容師の先輩、大喜多天、高良瑛人と船木裕翔が向かってきた。
鬼頭、一ノ瀬、風見、相馬に絡んでくる。

大喜多「あ、鬼頭くんじゃん、こんなとこで?」
鬼頭「あ、大喜多さん、偶然っすねー飲んでたんすか」
高良「誰、一緒の店のやつ?」
大喜多「そうそう、鬼頭まじでくそだから、お前がカットやると全員囚人だもんな〜」
船木「おお〜囚人いいじゃん、やってもらおっかな」
高良「船木が刑罰受けろよな」
大喜多、高良、船木は爆笑をかましている。
風見の肩にぶつかった船木は、風見に向かってゲップをした。
風見「君たち、その態度はないんじゃない」
船木「ああ、なんだ、お前もしてもらえよ囚人」

船木は、風見のお腹を殴ると風見は倒れ、顔面も騎乗位で殴られる。風見は草木に飛ばされ、動かなくなった。高良は鬼頭と殴りあいが始まった。
鬼頭の拳は強く、高良と船木の顔面を殴り、道中に飛ばした。大喜多天は、近くにいた一ノ瀬朔の首を絞めていた。
一ノ瀬「うっつ!!」
鬼頭「やめろって!!」
鬼頭が一ノ瀬を助け、大喜多を止めに入るが、大喜多の拳が鬼頭の顔面に命中し、鬼頭は道中に倒れた。相馬が鞄から医療用ハサミを持ち、大喜多にハサミを向けた。
大喜多「へえ、いいの持ってるじゃん、やれよ」
相馬のハサミを持っている手は、震えていて動けない。
大喜多「はあ、俺がしてあげよっか?」
大喜多と相馬はハサミの取り合いになり、相馬の手は血がドバッと垂れていた。
大喜多のお腹にハサミが刺さり、お腹は裂けて血があまりにも出ていた。
おばちゃんが、中津川近くでこっちを見ていた。相馬が大喜多を中津川へ突き飛ばし、大喜多は転がって川に沈んだ。
相馬「え…」
一ノ瀬、鬼頭はその光景を見ていてた。
辺りは血に混じり、草木で風見は気を失っていた。
鬼頭「はあはあ、はあ、相馬」
相馬「え…俺…」
一ノ瀬は、相馬の肩を強く掴んだ。
一ノ瀬「やっぱりね」
相馬「え…」
一ノ瀬「相馬、鬼頭、早く逃げるぞ、風見も!!」
相馬は混乱していて、顔面真っ青だ。
一ノ瀬と鬼頭は、風見の肩を背負って河川敷を走り去った。

○中津川河川敷・トンネル
一ノ瀬、鬼頭、風見、相馬はその場に倒れた。
相馬は混乱して、風見は顔面が腫れていて、鬼頭は呆然としていた。はあ、はあ、はあと呼吸の音だけが聞こえていた。
第一声を発したのは、一ノ瀬だった。

一ノ瀬「相馬、おばちゃん見えたか、中津川にいた」
相馬「え…ああ、なんかいたかも」
一ノ瀬はどこからか視線を感じる。
トンネルの奥からおばちゃんが、こっちを見ている。一ノ瀬は決意したように立ち上がる。
一ノ瀬「いた、あそこのおばちゃん」
鬼頭、風見、相馬が、一ノ瀬が指さす方向を見ると、おばちゃんがじっと見ていた。
鬼頭「うわああああああーーー」
風見「誰?」
相馬が真っすぐに、おばちゃんを指刺した。
相馬「あ、あのおばちゃん、大喜多の隣にいた」
一ノ瀬は平然としていて、何も感じていない。
一ノ瀬「あれ、最近ニュースになっている、殺人鬼かもしれない」
鬼頭「うそ、だろ」
風見「まじだったらやばくね」
鬼頭「こええええ」
風見「むりむり」

一ノ瀬、鬼頭、風見、相馬が混乱して奇声をあげていると、おばちゃんはいなくなっていた。
相馬「あれ、いない」
鬼頭「うええええこえーー」
一ノ瀬が真剣な顔で、鬼頭、風見、相馬の前に立つ。
一ノ瀬「俺、あのおばちゃんに殺されるかも」
鬼頭「はあ?何言ってんの」
風見「一ノ瀬、お前何かしたのか」
一ノ瀬「…何もしてない、あのおばちゃんがいると、何かの事件に巻き込まれるんだ」
風見「事件?狙われてるって事?」
一ノ瀬「俺たちのこと、殺すよ」
風見「うそ…だろ」
鬼頭「冗談やめろよ」
一ノ瀬「近ずいてきてる、だからこっちがおばちゃんを探して、殺さないと」
鬼頭「はあ?今なんつった」

鬼頭は一ノ瀬の首服を掴んで壁に打ち付ける。
鬼頭「殺人鬼だったらどうするんだよ!」
一ノ瀬「こっちが追われてるんだ、その前におばちゃんを抹消しないと」
風見「…殺されるって?」
鬼頭と風見は強張っていた。
相馬はまっすぐに、一ノ瀬を見ていた。
相馬「自分たちを、守るしかない」
鬼頭「はあ?相馬分かってんのか、殺人鬼だぞ」
相馬「じゃあ、鬼頭はバイバイだね」
鬼頭はゴクリとつばを飲み込んだ。
鬼頭「…何言ってんの?」
相馬「バイバイだって」
風見「まあまあ、やめとけって」

風見は鬼頭と相馬の間に入った。一の瀬は決意する。
一ノ瀬「皆がおばちゃんを探してくれたら、俺が殺す、やってくれる?」
ピーと電子音がトンネルに響きわたる。

鬼頭「…おばちゃんを、探す?」
一ノ瀬「うん、鬼ごっこだよ」
風見「俺らが、鬼になるって事か?」
一ノ瀬「そうだよ、こっちが最強の鬼だ」
相馬「やっぱり、そんな事だと思ったよ」

相馬は満面の笑顔で、目がギンギンになっていた。鬼頭と相馬はどんどん、前のめりになっている。
鬼頭「お前らまじでやばいわ」
風見「やばくなってきたねー」
一ノ瀬「不快な物には、こっちから不条理になるしかない」
鬼頭「不条理?」
風見「それと、楽しむしかないって感じ?」
一ノ瀬「うん、だって類は友だよね?」
一ノ瀬は前歯を見せて、奇妙な笑顔だった。
鬼頭、風見、相馬は興奮して発狂していた。
鬼頭「いええええいーーーー」
風見「うわあああーーーー」
相馬「てか喉乾いた、一ノ瀬ラムネ買って」
一ノ瀬「あーおっけ」
相馬「あ、俺無理だから、それ以外は」
さっきまで怖がっていた相馬は、おばちゃん捜索に乗っかっていた。
一ノ瀬「無理なんだ、それ以外は、やっぱり、ね?」

一ノ瀬、鬼頭、風見、相馬はラムネの缶ジュースを一斉に開けると、泡が勢いよく出てきた。
一ノ瀬、鬼頭、風見、相馬がトンネルを走って抜けると、空気が薄くて、とにかく笑った。