僕と君と廻る庭

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 言葉は一つの単語。
 だけど一つ一つ、大切な『意味』がある
 そして僕達は探す。
 『意味』に隠された別の『意味』を。
 辞書には載らない。
 一人ではわからない。
 二人で見つけて。
 それを手にする。
 『心』という辞書に。
 新たな(ページ)を増やすため。
 今日も僕らは。
 庭を観る。
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「少し、疲れてきたね」
「そうだね、今日は結構色々な事を話した気がするよ」
 僕は腰を軽く叩いて身体を伸ばす。
「ちょっと戻って休もうか」
 僕達は庭の(すみ)――といっても、この庭には(さく)がない。
 なので隅とも呼べるかわからないけれど、この木々や草花から少し離れた場所にある。
 小さな赤い屋根の小屋に戻る。
 小屋の前には白いベンチが置いてあり、僕はこのベンチから(なが)める庭の景色が気に入っている。
 ここからは庭の景色が良く見える。
 だから僕は、このベンチに座って彼と庭を眺めるそんなひと時が、たまらなく好きだ。
 ある時は、今のような夕焼けに照らされて(あか)く染まった景色を――。
 ある時は、澄んだ青空の下、静かに風に揺られる草花を――。
 またある時は、月明かりというスポットライトに照らされた舞台を――。
「今日はより景色が綺麗に見えるね」
 彼は嬉しそうに言う。
「君は毎日そう言うね」
 僕はハハハと笑いながらからかう。
 すると彼は少しムッとした顔になった。
 だけど僕には解る、本当に怒っている訳ではない。
 彼も会話を続ける為に、次への架け橋を作っているのだ。
「だって本当の事じゃないか『毎日違う景色』に見えるんだから。確かに、あの木も、あそこの茂みも昨日もあった。でもあそこに生えてる雑草は、昨日は無かった……いや、あったのかもしれないけれど、僕は気付かなくて、今気が付いた」
 彼は足をパタパタさせながら、庭に生えている雑草を指さしてそう言った。
「だから昨日見た景色とは違う。仮に全く同じ景色だとしても、その時の僕の心が違えば、見える景色も違って見える。そうでしょう?」
「ふふっ」
 僕は彼の言葉を聞いて思わず笑みがこぼれる。
「なにかおかしなことをいったかい?」
「いや、嬉しいんだ。君が『僕の心が違えば』、そう言ってくれたことが。やっぱり『大丈夫』だったんだなって、そう思っただけだよ」
「……君はたまに意地悪だ」
「そんな事ないよ、でも…そうだね、君の言う通りだ。『心の変化』は『視界の変化』、つまり世界の見え方が変わる…。庭にあるこの様々な『問い』の意味が、変わる度にね」
 僕はそう言って、少しだけ微笑む。
「この庭ではそれが顕著(けんちょ)に現れる。だからこの庭は退屈しない。だからこの庭は素晴らしい。
 そしてその問いの意味を変える事は、一人じゃ出来ない。一つ一つの問いに対し、君と一緒に考える。だから景色は変わっていく。これはとても大事な事、だから僕は何度だって同じことを言う……この言葉だけは、『(うた)』のようにして残し、わからなくならないようにしたいんだ」
 僕の言葉に彼は黙って頷くと、ゆっくりと口を開いた。 
「……そうだね、そして僕は君が同じことを言う度、何度もこう思うんだろうね、『君に出会えて、良かった』って」
 僕はフフッとまた一つ呟くと大きく深呼吸をしてポツリと呟く。
「僕もだよ」