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君の心と僕の心は同じじゃない。
だけど。
君と一緒に話すことで。
君の心に少しでも近づけるのなら。
僕は君と話していたい。
そこに君が、居るのだから。
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その日は初夏の、なんてことない、普段通りの日だった。
いつも通り、庭をふらふらと歩いていると。
「ねぇ、君は『理解』と『共感』についての違いは何だと思う?」
突然彼が僕にこう問いかけてきた。
なんてことない日常の中の、なんてことのないごくありふれた些細な疑問だった。だけど僕はこの日の事をしっかりと覚えている。
思えば、この日を境に、僕は…僕達はこの庭の美しさに気付いたのではないだろうか。
「随分突然だね。何言ってるのさ、全然ちが………」
僕は笑いながら全然違う物だと言おうとし、途中でふと自分でもその『違い』がなんであるか、瞬時に答えられない事に気が付いた。
「うーん………」
僕は小首を傾げながら小さく唸る。
すると彼は落ち着いた口調で話し始めた。
「『理解』とは、物事の道理や意味を正しくわかる事に使われる言葉だよね」
「そうだね、あとは他人や自分が今おかれている立場だったり、相手の気持ちを知った時に使われるね。
似たような言葉だと『把握』とかもそうなるかな?」
「じゃあ『共感』は?」
彼は僕を試すかのように続ける。
しかし、彼は決して僕に意地悪や僕の知識量を測るために聞いているようではなかった。
彼の真意は解らない。この問いに何の意味があるのか、僕に何がしてほしいのか。
僕は改めて彼の顔をみる。
その顔には表情といえるものがあまり感じられなかった。
僕はさっき、まるで僕を試すかのように…と思ったが、何か違う気がする。もっと単純で、純粋な………。
まるで子供が『どうして鳥は空を飛べるのか』『どうして空は青いのか』そんな疑問を母親に聞いているような、そんな顔だった。
だから僕は気付いた。
彼はもしかしたら『定義付けされた答え』を求めている訳ではないのではないだろうか。
子供にどうして鳥が空を飛べるのかを応える時に、親は地球の重力の事、鳥の身体の構造により羽ばたける事等、そういった科学的根拠に基づいた話で答えるだろうか?
空が青いという事は、海が光に反射しているから等と答えるだろうか?
もし答えたとしても理解できない『解っていないのに、解った』と、すごくつまらない結果になるか、或いは、その科学的根拠にさらに『じゃあなんで?どうして?』が連鎖し、自分の知識が底をつき『自分でもわからない』となるだろう………。
それはとてもつまらない事だ。
子供に『どうして鳥は空を飛べるの?』と聞かれたら僕はいったいどう答えればいいんだろう………。
今の僕にはそれすらもわからなくなっていた。
だから僕は一呼吸おいて彼に微笑みながら答えた。
「一緒に考えようか」
すると彼は少し明るい声で「うん、考えよう!」と言ってくれた。
僕達は庭の地べたに座り、共に『意味』の違いについて考え始める。
「『共感』は、『同じ気持ちを感じた』時に使う言葉で…例えば、今日は天気が良くて気持ちがいいね、とか…いや、なんかちょっと違う気がする………」
「天気が良いという事は、空が青々と澄んでいて、太陽も綺麗に大地を照らし、風が程よくあって、人間にとって快適と感じる物だよね。
それなら君の言っている意味で合ってるんじゃないかな?」
「そうなんだけど…なんというかもっとこう、心に寄り添うっていうか、相手を『理解』して…」
そこで僕はハッとした。
ついさっき僕なりに答えた『理解』という言葉が自然と出ていたのだ。
「理解、か。
さっき君が答えてくれた物がもう出てきた…えぇと、君は確か『他人や自分が今おかれている立場だったり、相手の気持ちを知った時に使われる』と言っていたね、成程」
彼はそう言って満足そうな笑みを浮かべた。
だけど、僕はイマイチすっきりしない、何かモヤモヤした物がお腹に残ってる感覚がして気持ち悪かった。
そう思うと彼の笑顔も本当に満足しているのか?とも思えてきてしまった。
だから僕は必死に考えた。
これじゃあ彼はまだ満足できないんじゃないかというエゴか、それとも自分のなかのこのモヤモヤを解消したいという自己満足か、或いはその両方か………。
そうして必死に考え答えて…僕は一つの答えが浮かび上がり。
無意識に彼の手を握った。
「『心』だよ」
「『心』?」
彼の表情は相変らずだ、だけど少しキョトンとした様子で首を傾げた。
「『共感』はその人の『心』に『触れる』事なんじゃないかな」
「心に…触れる………」
「そう、人は心に円い線みたいなのがあるんだ。
それはその人がとても大事にしている場所で、その人が許した人しか入れない場所なんだ。それを僕は『心』と呼んでいる。
『理解』とはその人の『心』の線を見る事。
そして『共感』はその人の『心』に触れて、同じ世界を見て………『共有』出来る。
そんな…あったかい言葉なんじゃないかな………」
そういって僕は彼の手を少し力を入れて握った。
暫くの沈黙の後、僕の手を握る彼の手にも少し力が入るのと同時に、優しい風が僕達を優しく撫でた。
「………うん、なんとなくだけど………わかった気がする。
これは辞書にも載ってない事だけど、君にとって『共感』とは『理解』のその先にある、相手を思いやる物なんだね。
僕は、君を少し理解しているつもりだ。
でも、多分まだ君の心に『共感』は出来ていない………」
彼は少しだけ俯く。
「『大丈夫』それは僕もだ。
だから、これからゆっくりでいい、二人で『心』に触れあっていこう。
急ぐことは無い。
僕達のペースで………」
「…うん、ありがとう………」
彼がそういうと、僕はゆっくりと手を放した。
その時だった。
僕と彼の手の間から一粒の種が落ちた。
そうだ。
この日。
僕達は。
―『種』を撒いていたんだ―
君の心と僕の心は同じじゃない。
だけど。
君と一緒に話すことで。
君の心に少しでも近づけるのなら。
僕は君と話していたい。
そこに君が、居るのだから。
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その日は初夏の、なんてことない、普段通りの日だった。
いつも通り、庭をふらふらと歩いていると。
「ねぇ、君は『理解』と『共感』についての違いは何だと思う?」
突然彼が僕にこう問いかけてきた。
なんてことない日常の中の、なんてことのないごくありふれた些細な疑問だった。だけど僕はこの日の事をしっかりと覚えている。
思えば、この日を境に、僕は…僕達はこの庭の美しさに気付いたのではないだろうか。
「随分突然だね。何言ってるのさ、全然ちが………」
僕は笑いながら全然違う物だと言おうとし、途中でふと自分でもその『違い』がなんであるか、瞬時に答えられない事に気が付いた。
「うーん………」
僕は小首を傾げながら小さく唸る。
すると彼は落ち着いた口調で話し始めた。
「『理解』とは、物事の道理や意味を正しくわかる事に使われる言葉だよね」
「そうだね、あとは他人や自分が今おかれている立場だったり、相手の気持ちを知った時に使われるね。
似たような言葉だと『把握』とかもそうなるかな?」
「じゃあ『共感』は?」
彼は僕を試すかのように続ける。
しかし、彼は決して僕に意地悪や僕の知識量を測るために聞いているようではなかった。
彼の真意は解らない。この問いに何の意味があるのか、僕に何がしてほしいのか。
僕は改めて彼の顔をみる。
その顔には表情といえるものがあまり感じられなかった。
僕はさっき、まるで僕を試すかのように…と思ったが、何か違う気がする。もっと単純で、純粋な………。
まるで子供が『どうして鳥は空を飛べるのか』『どうして空は青いのか』そんな疑問を母親に聞いているような、そんな顔だった。
だから僕は気付いた。
彼はもしかしたら『定義付けされた答え』を求めている訳ではないのではないだろうか。
子供にどうして鳥が空を飛べるのかを応える時に、親は地球の重力の事、鳥の身体の構造により羽ばたける事等、そういった科学的根拠に基づいた話で答えるだろうか?
空が青いという事は、海が光に反射しているから等と答えるだろうか?
もし答えたとしても理解できない『解っていないのに、解った』と、すごくつまらない結果になるか、或いは、その科学的根拠にさらに『じゃあなんで?どうして?』が連鎖し、自分の知識が底をつき『自分でもわからない』となるだろう………。
それはとてもつまらない事だ。
子供に『どうして鳥は空を飛べるの?』と聞かれたら僕はいったいどう答えればいいんだろう………。
今の僕にはそれすらもわからなくなっていた。
だから僕は一呼吸おいて彼に微笑みながら答えた。
「一緒に考えようか」
すると彼は少し明るい声で「うん、考えよう!」と言ってくれた。
僕達は庭の地べたに座り、共に『意味』の違いについて考え始める。
「『共感』は、『同じ気持ちを感じた』時に使う言葉で…例えば、今日は天気が良くて気持ちがいいね、とか…いや、なんかちょっと違う気がする………」
「天気が良いという事は、空が青々と澄んでいて、太陽も綺麗に大地を照らし、風が程よくあって、人間にとって快適と感じる物だよね。
それなら君の言っている意味で合ってるんじゃないかな?」
「そうなんだけど…なんというかもっとこう、心に寄り添うっていうか、相手を『理解』して…」
そこで僕はハッとした。
ついさっき僕なりに答えた『理解』という言葉が自然と出ていたのだ。
「理解、か。
さっき君が答えてくれた物がもう出てきた…えぇと、君は確か『他人や自分が今おかれている立場だったり、相手の気持ちを知った時に使われる』と言っていたね、成程」
彼はそう言って満足そうな笑みを浮かべた。
だけど、僕はイマイチすっきりしない、何かモヤモヤした物がお腹に残ってる感覚がして気持ち悪かった。
そう思うと彼の笑顔も本当に満足しているのか?とも思えてきてしまった。
だから僕は必死に考えた。
これじゃあ彼はまだ満足できないんじゃないかというエゴか、それとも自分のなかのこのモヤモヤを解消したいという自己満足か、或いはその両方か………。
そうして必死に考え答えて…僕は一つの答えが浮かび上がり。
無意識に彼の手を握った。
「『心』だよ」
「『心』?」
彼の表情は相変らずだ、だけど少しキョトンとした様子で首を傾げた。
「『共感』はその人の『心』に『触れる』事なんじゃないかな」
「心に…触れる………」
「そう、人は心に円い線みたいなのがあるんだ。
それはその人がとても大事にしている場所で、その人が許した人しか入れない場所なんだ。それを僕は『心』と呼んでいる。
『理解』とはその人の『心』の線を見る事。
そして『共感』はその人の『心』に触れて、同じ世界を見て………『共有』出来る。
そんな…あったかい言葉なんじゃないかな………」
そういって僕は彼の手を少し力を入れて握った。
暫くの沈黙の後、僕の手を握る彼の手にも少し力が入るのと同時に、優しい風が僕達を優しく撫でた。
「………うん、なんとなくだけど………わかった気がする。
これは辞書にも載ってない事だけど、君にとって『共感』とは『理解』のその先にある、相手を思いやる物なんだね。
僕は、君を少し理解しているつもりだ。
でも、多分まだ君の心に『共感』は出来ていない………」
彼は少しだけ俯く。
「『大丈夫』それは僕もだ。
だから、これからゆっくりでいい、二人で『心』に触れあっていこう。
急ぐことは無い。
僕達のペースで………」
「…うん、ありがとう………」
彼がそういうと、僕はゆっくりと手を放した。
その時だった。
僕と彼の手の間から一粒の種が落ちた。
そうだ。
この日。
僕達は。
―『種』を撒いていたんだ―
