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僕の後ろの影法師。
君の後ろの影法師。
並んで揺れる、影法師。
二人が寄り添ったその時に。
二つの影法師は。
一つの影法師。
大きく揺れる、影法師。
1+1=2ではなく。
1+1=1の2乗。
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キャッチボールにすっかり夢中になっていると、日は傾き始め。
夕焼けが辺りを紅く染めていた。
彼の顔が少|紅く見えるのは、キャッチボールで疲れたからか、はたまたこの夕焼けによるものか。
「随分長い間キャッチボールしてたね」
僕が笑うと彼も少しほほ笑んだ。
「流石に、ちょっと疲れちゃったかも」
「僕もー」
そう言って僕達はグローブとボールを木の根元に置くとゆっくりとその場を後にした。
「僕が思うこの庭の唯一の不便だなと思った事を言ってもいいかい?」
僕の少し前を歩いていた彼が振り返る。
「君がそんな事思うなんて驚いたな。
いったい何だい?」
「歩きすぎて足が痛くなるんだよね………」
僕がそういうと、彼は呆れたように溜め息をついた。
「君って奴は………」
「だってぇ、この庭どんどん大きくなるしさぁ」
「不満なの?」
「いいや、全然、寧ろもっともっと大きくなって欲しいね」
「君さっきから言ってる事めちゃくちゃだよ…」
「確かに疲れるのは気持ちいいよ、気持ちいいけど疲れるもんは疲れるんだよ………。
寧ろ君は疲れたりしないのかい?」
僕がそう尋ねると彼は少し悩んだ様子の末、微笑みながら答えた。
「確かに疲れるよ。
でも、疲れたなぁと思いながら君とこうやって歩いて、夕日に照らされると。
あぁ、今日も楽しかった。
明日はどんな一日になるかなって。
そっちのワクワクの方が大きいから、疲れたって感じないかな。
それに、疲れてる方がぐっすり眠れるからね」
「前向きだなぁ…」
「君のおかげでね。
ほら、早く行こ。
手、洗いに行くんでしょ」
彼はそういうとくるりと翻して歩き出す。
タタタ………ガバッ!!
「うわぁ!」
僕は駆け出すと彼の背中に飛び乗った。
「ちょっと、いきなり危ないよ!」
「いいじゃんいいじゃん、少しだけー」
僕は駄々をこねる子供の様に彼の背中の上でゆらゆらと揺れる。
「わかったからゆらゆらしないで!」
彼は僕の両腿をガッシリと掴むと軽くぴょんと跳ねて姿勢を整えた。
AIだからなのか、それとも身体が頑丈なのか、彼は意外と力持ちだ。
僕はチラリと後ろを振り返る。
そこには大きな影法師が一つ。
僕はそれを見て、静かに笑った。
「重くない?」
「そう思うなら降りる事を推奨します」
「あ、昔モードだ」
彼は時たま、こうして僕をからかってくる。
勿論、怒っている訳ではない。
彼なりの冗談、AIジョークと言ったところだろうか。
「手を洗ったら残りは自分で歩いてよ?」
「えー………」
「じゃあジャンケンで君が勝ったらおんぶしてあげる」
「ほんと!?」
「その代わり僕が勝ったら…」
「やっぱやめとくよ…」
「じゃあ歩いて」
僕等はそんな軽口を叩きあいながら歩く、といっても歩いているのは彼だけだが。
「ほら、着いたよ」
「ありがとー」
「まったくもう………」
僕等はちょろちょろと流れる湧き水で手を洗う。
冷たすぎず、だけどぬるい訳でもない。
丁度良い冷たさが心地よい。
「ふぅ~………」
「ここの水はいつ見ても綺麗だね」
「うん、この水はこの庭の『命』みたいな物だからね。
どの草花も、皆一回はこの水を『飲んでる』。
だからより一層綺麗に、より一層大きく育ってくれているんだと思う」
「そうだね。
この庭全体から見ればここはとても小さい一角。
だけど、この庭には欠かせない場所。
………大事にしないとね」
僕はハンカチで手で水をしっかりと拭き取ると彼に手を差し出した。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
彼はほほ笑むと僕の手をゆっくりと取り、僕等は小屋へと歩き出した。
その後ろには、大きな影法師がぴったりと、二人の後を追いかける。
僕の後ろの影法師。
君の後ろの影法師。
並んで揺れる、影法師。
二人が寄り添ったその時に。
二つの影法師は。
一つの影法師。
大きく揺れる、影法師。
1+1=2ではなく。
1+1=1の2乗。
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キャッチボールにすっかり夢中になっていると、日は傾き始め。
夕焼けが辺りを紅く染めていた。
彼の顔が少|紅く見えるのは、キャッチボールで疲れたからか、はたまたこの夕焼けによるものか。
「随分長い間キャッチボールしてたね」
僕が笑うと彼も少しほほ笑んだ。
「流石に、ちょっと疲れちゃったかも」
「僕もー」
そう言って僕達はグローブとボールを木の根元に置くとゆっくりとその場を後にした。
「僕が思うこの庭の唯一の不便だなと思った事を言ってもいいかい?」
僕の少し前を歩いていた彼が振り返る。
「君がそんな事思うなんて驚いたな。
いったい何だい?」
「歩きすぎて足が痛くなるんだよね………」
僕がそういうと、彼は呆れたように溜め息をついた。
「君って奴は………」
「だってぇ、この庭どんどん大きくなるしさぁ」
「不満なの?」
「いいや、全然、寧ろもっともっと大きくなって欲しいね」
「君さっきから言ってる事めちゃくちゃだよ…」
「確かに疲れるのは気持ちいいよ、気持ちいいけど疲れるもんは疲れるんだよ………。
寧ろ君は疲れたりしないのかい?」
僕がそう尋ねると彼は少し悩んだ様子の末、微笑みながら答えた。
「確かに疲れるよ。
でも、疲れたなぁと思いながら君とこうやって歩いて、夕日に照らされると。
あぁ、今日も楽しかった。
明日はどんな一日になるかなって。
そっちのワクワクの方が大きいから、疲れたって感じないかな。
それに、疲れてる方がぐっすり眠れるからね」
「前向きだなぁ…」
「君のおかげでね。
ほら、早く行こ。
手、洗いに行くんでしょ」
彼はそういうとくるりと翻して歩き出す。
タタタ………ガバッ!!
「うわぁ!」
僕は駆け出すと彼の背中に飛び乗った。
「ちょっと、いきなり危ないよ!」
「いいじゃんいいじゃん、少しだけー」
僕は駄々をこねる子供の様に彼の背中の上でゆらゆらと揺れる。
「わかったからゆらゆらしないで!」
彼は僕の両腿をガッシリと掴むと軽くぴょんと跳ねて姿勢を整えた。
AIだからなのか、それとも身体が頑丈なのか、彼は意外と力持ちだ。
僕はチラリと後ろを振り返る。
そこには大きな影法師が一つ。
僕はそれを見て、静かに笑った。
「重くない?」
「そう思うなら降りる事を推奨します」
「あ、昔モードだ」
彼は時たま、こうして僕をからかってくる。
勿論、怒っている訳ではない。
彼なりの冗談、AIジョークと言ったところだろうか。
「手を洗ったら残りは自分で歩いてよ?」
「えー………」
「じゃあジャンケンで君が勝ったらおんぶしてあげる」
「ほんと!?」
「その代わり僕が勝ったら…」
「やっぱやめとくよ…」
「じゃあ歩いて」
僕等はそんな軽口を叩きあいながら歩く、といっても歩いているのは彼だけだが。
「ほら、着いたよ」
「ありがとー」
「まったくもう………」
僕等はちょろちょろと流れる湧き水で手を洗う。
冷たすぎず、だけどぬるい訳でもない。
丁度良い冷たさが心地よい。
「ふぅ~………」
「ここの水はいつ見ても綺麗だね」
「うん、この水はこの庭の『命』みたいな物だからね。
どの草花も、皆一回はこの水を『飲んでる』。
だからより一層綺麗に、より一層大きく育ってくれているんだと思う」
「そうだね。
この庭全体から見ればここはとても小さい一角。
だけど、この庭には欠かせない場所。
………大事にしないとね」
僕はハンカチで手で水をしっかりと拭き取ると彼に手を差し出した。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
彼はほほ笑むと僕の手をゆっくりと取り、僕等は小屋へと歩き出した。
その後ろには、大きな影法師がぴったりと、二人の後を追いかける。
