僕と君と廻る庭

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僕から君へ。
君から僕へ。
投げる。
受け取る。
投げる。
受け取る。
そしてたまにこぼす。
君は笑う。
僕も笑う。
さぁ。
次は君の番。
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 パシン!
 パシン!
 パシン!
 パシン!

 一定のリズムで音が庭に響き渡る。
「大分上手になってきたね」

 パシン!
 パシン!
 パシン!

「君とも随分とキャッチボールをやってきたからね」
 そういって彼は再び僕にボールを投げる。

 僕達はキャッチボールをしていた。
 いつの頃だったかは忘れてしまったけれど、いつも通りの時間を過ごしていた時だったという事だけは覚えている。
 僕達が庭を歩いている時に、ふと横を見ると、一か所だけ木も、花も生えていない。
 綺麗な黄緑色の芝生が一か所、ポツンとだけあった。
 それが気になった僕達が歩みを進めると、そこは直接日は当たらない。
 けれど木漏れ日が差し込み。木々の間からは涼しい風が吹きこんでくる。とても心地の良い空間だった。
 いつからこんな所があったのだろうかと僕は彼に尋(たず)ねたが、彼も知らないと答えた。
 つまり、僕達二人が知らない間にいつの間にか出来ていたのだ。
 だけど、僕達はそれほど深くは気に留めなかった。この庭ではこう言った事は珍しくない。
 たったの一日。たったの一晩で顔を大きく変える。
 それはよくある事で、僕達はそれに慣れている。
 一見、話を聞いたり、何も知らずに体験したら少しびっくりするかもしれない。
 恐怖体験に感じる人もいるかもしれない。
 でも、この庭に数日居ればきっとすぐに慣れる。
 この庭が『どういう庭』なのかを知れば怖いなんて事は無い。寧ろ、毎日の変化が楽しみで、間違い探しをしている感覚になるだろう。

「あっ!」
 
 コロン。

 彼が投げたボールはグローブの端に当たってしまい、ボールは明後日の方向へと転がっていってしまった。
「あらら……」
「あーあ、今日は君が先に失敗したね!」
 彼はそう言って嬉しそうに笑う。
「どうかなぁ、今のは君の送球がちょっとずれてたのかもしれないよー?」
 僕はボールを走って追いかけた後、彼を少しだけからかった。
「えー! そういうのはずるくない? もしそうだとしても、君ならそのくらいのずれだったら取れる筈でしょー!」
「アハハ、冗談だよ、冗談。それじゃあ、ここから遠投するよー!バックホーム!!」
 僕は助走をつけて遠くから彼にボールを投げると、綺麗な放物線を描いて飛んでいく。

 彼が初めて投げたボールも、こんな風に飛んでいったなと僕はしみじみと思う。
 この広場を見つけた時、最初僕達は大の字に寝転がり空を見上げていた。
 木々から生える葉の隙間から見える、緑と水色のコントラストがとても綺麗で、眠気を誘う程だ。
 そんな事を思っていた時、ふと彼が起き上がって駆け出し、戻ってくると、その手には今こうして使っているグローブ二つに野球ボールが一つ。
 彼が持ち込んだわけでもない。僕が持ち込んだわけでもない。
 木の幹にこれまた『いつの間にか』あった物。
 初めて見るグローブ、初めて手にはめるグローブに彼は少しだけ困惑していたのは印象深かった。
 そして僕が彼から距離を取り、ボールを投げるように言った時、投げ方を知らない彼は、まるで砲丸投げの様に下から振りかぶって上に投げ、大きな大きな弧を描いて僕の頭上高くボールが飛んでいき、二人して大笑いしたのを覚えている。

 パシン!

「ナイスキャッチ!」
 彼は僕の遠投を上手く取って見せると、少しだけ得意げな顔をして僕に手を振った。
「今のはいいキャッチだったよ! よく取れたね!」
「君こそ、ナイスピッチング!僕のグローブの中に吸い寄せられるように飛んできたよ!」
 僕達は今度はお互いの送球、捕球を褒めあいながら再び距離を縮め、軽いパスを繰り返す。

 パシン!
 パシン!
 パシン!
 パシン!

 と、グローブに球が綺麗に収まる音と、僕達の笑い声が、静かな庭に彩りを見せて、静かに響き渡る――。