「桐生……、それはなんだ?」
「え? どうしたの? 可愛いでしょ?」
桐生がどや顔でその物体を前へ押し出した。
ここは俺の探偵事務所兼自宅。
朝っぱらから事務所の扉をうるさく叩く奴がいたので、仕方なく扉を開ける。
すると、呑気な笑顔を向ける桐生がいた。
その背後に、とんでもないモノを引き連れて――
「輪島隆様、ご気分でも悪いのですか? 顔色がよくありません」
いきなり可愛らしい女性の顔が目の前に現れ、そんな事態に慣れていない俺は驚き一歩後退する。
「こら、リリー、輪島さんが驚いてるでしょ? そんなに近づいてはいけない」
桐生に諭され、リリーと呼ばれた少女は不思議な顔をして首を捻った。
リリーは桐生が作ったアンドロイド。
AIを搭載した最新型だそうだ。
自分で考え行動し、どんどん学習していくらしい。
姿はなぜか可愛いメイドさんスタイルだった。どうやら桐生の好みが入っているらしかった。
「リリーは見た目はこんなに可愛いけど、格闘の腕も一流なんだよ。
悪い奴が襲ってきても彼女がいれば安心さ!」
桐生が胸を張り自信満々に言い放つ。
まだ言いたいことがあるのか、ニヤついた顔で俺の顔を眺めてくる。
「ふっふっふ。
さらにリリーは家事全般もお手の物! なんでも完璧にこなせるのさ!
だから、この子を輪島くんにプレゼントするよ」
「……はあ!?」
あまりにも驚き過ぎて、素っ頓狂な声を上げてしまった。
そのとき初めて、佐々木が笑った。
彼が声を発したことに、俺は驚いていた。
彼も、先ほど桐生と共にやってきていたのだが、あまりにも大人しく声も発しないので、存在を忘れていた。
「よかったな……彼女、とても役に立ちそうだ」
佐々木はリリーを見つめ微笑んだ。
珍しく佐々木が興味を示している、気に入ったのだろうか。
「なら、おまえが貰うか?」
「駄目だよ!」
桐生が珍しく怒鳴った。
いつも笑ってばかりの印象だったから、少し意外だった。
彼でも怒りの感情を表すことがあるのか……ってそりゃそうだよな、人間だもん。
「リリーは、輪島くんの助手なんだから」
「はい?」
「この探偵事務所の助手兼家政婦だよ。
輪島くんは一人で探偵業をしているだろう? 助手がいればすごく助かるんじゃないかと思って。
それに、君は独り身だから、家事も疎かになってるんじゃないかと心配でさ」
余計なお世話だ。
……まあ、確かに、しっかりはできていないが。
部屋を見渡すとかなりの散らかりようだ。
まあ、男の一人暮らしなんて、こんなもんだろ。
「とにかく、今日から僕と佐々木くんもお世話になる事務所だからね。
それなりに整えないと。リリー頼んだよ」
「はい、よろこんで」
リリーは可愛く微笑んだ。
まあ、確かに家事をしてくれるロボットがいれば助かるが。
「本当におまえら、ここで探偵するのか?」
「もっちろん」
「……ああ」
桐生が笑顔で頷くと、佐々木が真顔で頷いた。
「マジか……。
まあ、別にいいけど、給料は出せないからな」
「わかってるって。僕、お金には困ってないから大丈夫」
余裕の笑みを見せる桐生。
そりゃそうだろうよ。
聞けば桐生は大学の教授らしい。
今は現役を退いて週に一度だけ講義をし、残りの日は研究に没頭しているそうだ。
いいご身分だ。
「俺も金はいらない」
佐々木は事情を言わないのでわからないが、何か危ないことしてきたような雰囲気がある。
知らぬが仏だ。聞かない方が身のためだろうから、聞かないでおく。
「じゃ、そういうことだから、これからよろしく」
桐生が手を差し出すと、俺は一応握手を交わした。
それにならって、佐々木もついでのように手を差し出す。
桐生がすぐにその手を取り、無理やり三人の手を合わせた。
「よろしく!」
「……よろしく」
「……ああ」
こうして奇妙な三人組のおじさん探偵の日々は、幕を開けたのだった。
「え? どうしたの? 可愛いでしょ?」
桐生がどや顔でその物体を前へ押し出した。
ここは俺の探偵事務所兼自宅。
朝っぱらから事務所の扉をうるさく叩く奴がいたので、仕方なく扉を開ける。
すると、呑気な笑顔を向ける桐生がいた。
その背後に、とんでもないモノを引き連れて――
「輪島隆様、ご気分でも悪いのですか? 顔色がよくありません」
いきなり可愛らしい女性の顔が目の前に現れ、そんな事態に慣れていない俺は驚き一歩後退する。
「こら、リリー、輪島さんが驚いてるでしょ? そんなに近づいてはいけない」
桐生に諭され、リリーと呼ばれた少女は不思議な顔をして首を捻った。
リリーは桐生が作ったアンドロイド。
AIを搭載した最新型だそうだ。
自分で考え行動し、どんどん学習していくらしい。
姿はなぜか可愛いメイドさんスタイルだった。どうやら桐生の好みが入っているらしかった。
「リリーは見た目はこんなに可愛いけど、格闘の腕も一流なんだよ。
悪い奴が襲ってきても彼女がいれば安心さ!」
桐生が胸を張り自信満々に言い放つ。
まだ言いたいことがあるのか、ニヤついた顔で俺の顔を眺めてくる。
「ふっふっふ。
さらにリリーは家事全般もお手の物! なんでも完璧にこなせるのさ!
だから、この子を輪島くんにプレゼントするよ」
「……はあ!?」
あまりにも驚き過ぎて、素っ頓狂な声を上げてしまった。
そのとき初めて、佐々木が笑った。
彼が声を発したことに、俺は驚いていた。
彼も、先ほど桐生と共にやってきていたのだが、あまりにも大人しく声も発しないので、存在を忘れていた。
「よかったな……彼女、とても役に立ちそうだ」
佐々木はリリーを見つめ微笑んだ。
珍しく佐々木が興味を示している、気に入ったのだろうか。
「なら、おまえが貰うか?」
「駄目だよ!」
桐生が珍しく怒鳴った。
いつも笑ってばかりの印象だったから、少し意外だった。
彼でも怒りの感情を表すことがあるのか……ってそりゃそうだよな、人間だもん。
「リリーは、輪島くんの助手なんだから」
「はい?」
「この探偵事務所の助手兼家政婦だよ。
輪島くんは一人で探偵業をしているだろう? 助手がいればすごく助かるんじゃないかと思って。
それに、君は独り身だから、家事も疎かになってるんじゃないかと心配でさ」
余計なお世話だ。
……まあ、確かに、しっかりはできていないが。
部屋を見渡すとかなりの散らかりようだ。
まあ、男の一人暮らしなんて、こんなもんだろ。
「とにかく、今日から僕と佐々木くんもお世話になる事務所だからね。
それなりに整えないと。リリー頼んだよ」
「はい、よろこんで」
リリーは可愛く微笑んだ。
まあ、確かに家事をしてくれるロボットがいれば助かるが。
「本当におまえら、ここで探偵するのか?」
「もっちろん」
「……ああ」
桐生が笑顔で頷くと、佐々木が真顔で頷いた。
「マジか……。
まあ、別にいいけど、給料は出せないからな」
「わかってるって。僕、お金には困ってないから大丈夫」
余裕の笑みを見せる桐生。
そりゃそうだろうよ。
聞けば桐生は大学の教授らしい。
今は現役を退いて週に一度だけ講義をし、残りの日は研究に没頭しているそうだ。
いいご身分だ。
「俺も金はいらない」
佐々木は事情を言わないのでわからないが、何か危ないことしてきたような雰囲気がある。
知らぬが仏だ。聞かない方が身のためだろうから、聞かないでおく。
「じゃ、そういうことだから、これからよろしく」
桐生が手を差し出すと、俺は一応握手を交わした。
それにならって、佐々木もついでのように手を差し出す。
桐生がすぐにその手を取り、無理やり三人の手を合わせた。
「よろしく!」
「……よろしく」
「……ああ」
こうして奇妙な三人組のおじさん探偵の日々は、幕を開けたのだった。



