青い朧月

それから先の展示も、会場からどんな会話をしながら、どんなふうに帰ったのかも、真夏は覚えていなかった。

頭の中はずっとふわふわとしていて、帰ってから、久しぶりに葉月との個人チャットに

「今日はありがとう、また学校でね!おやすみなさい。」

と、眠そうな可愛いうさぎのスタンプと共にメッセージが来た時は、ベッドの上で足をバタバタさせながら悶えた。

そして、

「こちらこそ、ありがとう。おやすみ」

と、無難なスタンプで返してから、大きく息を吐いた。

今まで感じたことが無いくらいに気分が高揚していた。

「初カノジョ、かぁ…」

しかし、そんな浮かれた気持ちは、次にスマホが震えたときにしゅっと萎んだ。

「どうだった?原画展」

涼斗からのメッセージだ。

続けて来た画像には、キャンプ場で火を起こして、妹たちと一緒にマシュマロを焼いている様子が映っていた。

「俺も楽しんでるよ!」

笑顔の絵文字と共にそう送られてきたのを見て、ズキッと心が痛んだ。

(今日言うのは、ちょっとズルかったかもしれない…)

涼斗のことを忘れていたわけではなかったし、本当は今日こんな形で葉月に言うつもりはなかった。

言い訳がましいけれど、雰囲気に流されてしまったのだ。

(葉月と付き合うことになった、って言ったら、涼斗怒るかなぁ…)

メッセージで伝えるか否かを迷って、結局伝えられずに、

「展示、めっちゃすごかった。今度土産渡す。」

とだけ、よく使うスタンプと共に送って、真夏はスマホを閉じてしまった。

夏休みの間、真夏は涼斗と会う機会が何度かあった。美術部の活動もあったからだ。

ただ、夏休み中盤に差し掛かっても、なかなか真夏は葉月と付き合ったことを涼斗に伝えられないままでいた。

葉月には、

「涼斗に知られるのが気恥ずかしいから、しばらく秘密にしたい。」

と言っていた。我ながら卑怯だなと思いながらも、心の準備が決め切れなかった。

しかし、これは完全に悪手だった。