原画展は、絶妙に行きにくい場所が会場だったため、スマホで地図を見ながら迷いつつ向かった。
人の流れに乗っていけば何とかなると思っていたけど、夏休みだから街には人が結構いたのと、何かしらのイベントなんてあちこちでやってたため、あてにならなかった。
ようやく会場に辿り着いて建物に入ると、その涼しさに一気に生き返った感じがした。
長くやっている人気の漫画だから人が多いことを懸念していたけど、チケット制のお陰か、ゆっくり見られそうだった。
「会場が東京とかだったら、きっとこうは行かなかっただろうね。」
一応都会ではあるけど、地方だから入場数が抑えられているところもあるのかもしれない。
葉月とそんな会話をしながら受付でチケットを見せて入場した。
ちなみに、今日来れなかった涼斗の分のチケットは、葉月の母親の知り合いに回されたらしい。
一枚で大丈夫だったのかな、と思ったけど、独り身で単独行動が好きな人らしいのでちょうど良かったそうだ。
涼斗は、チケットが無駄にならなかったのでほっとしていた。
思ったよりも展示は充実していて、子供から大人まで、そしてライトなファンからコアなファンまで楽しめそうな内容だった。
解りやすくカッコいいカラーのイラストから、直筆の細かい設定集、作品を描く上で実際に使用された資料、没になった原稿まであって、真夏と葉月は始終興奮気味だった。
食い入るように展示を眺めているうちに、不意に距離が近くなってしまうことがあって、真夏は何度か我に返ってドキドキしていた。
ふと周囲を見渡すと、カップルで見に来ている人たちが多くて、自分たちももしかしたらそう見えているんじゃないかと想像して、顔の温度が上がった。
「ねぇ、あっちの絵の前で写真撮ってもいいんだって!!行こうよ!」
葉月は唐突にそう言って、真夏の手首をぎゅっと掴んできた。
何か意図していたわけではなく、単に真夏がぼけっとしていたから焦れてそうしたのだろう。
だけど、葉月の滑らかな手の感触に驚き、真夏は思わず、
「うわっ!!」
と声を上げて手を引っ込めてしまった。
葉月は面食らったような顔になり、数秒静止した後、ようやく気付いたのか、じわじわと耳まで真っ赤になって俯いた。
「ごめん…」
真夏もつられて赤くなった。
思った以上に照れている葉月の反応が可愛くて、あと、周りのカップルたちの空気にも当てられて、ちょっと、いや、かなり舞い上がっていた。
真夏はそのまま、
「写真、行こっか。」
と、照れを隠すように踵を返した葉月の腕を、先ほどされたようにぎゅっと捕まえた。
殆ど無意識だった。
軽く力を込めて引き寄せると、葉月の困惑したような顔が近づいた。
てのひらの中に、少しひんやりとした細くてしなやかな感触を感じる。
葉月の、少し色素が薄い虹彩と視線が絡んだ瞬間、
「僕の彼女になってくれませんか?」
と、真夏の喉から滑り出た。
一瞬、全ての音が消えた。
今までに一度だって言ったことがない言葉だし、なんなら誰かに言われたことすらない言葉なのに、至って自然に口から出たから、全身の毛が逆立つくらいに驚いた。
一拍遅れて、耳から頬にかけてがカッと熱くなる。
耳が熱でぼわぼわして、ジーッと耳鳴りがする。
葉月は、また固まった後、周りのカップルたちが自分たちを見てクスクスと笑っていることに気が付くと、慌てて真夏を連れて足早にその場を離れた。
少し離れた場所まで来た時、葉月は真夏を振り返って、頬を染めながら、上目遣いでこう聞いてきた。
「さっきの話、ほんき?」
真夏は無言でコクコクと頷く。
葉月は、「そっか…」と頬を掻いて、しばらく考えてから、
「私でよければ、よろしくお願いします。」
と言って、いつもよりももっと目を細めてふわっと笑った。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。」
真夏も慌ててそう言った。
人の流れに乗っていけば何とかなると思っていたけど、夏休みだから街には人が結構いたのと、何かしらのイベントなんてあちこちでやってたため、あてにならなかった。
ようやく会場に辿り着いて建物に入ると、その涼しさに一気に生き返った感じがした。
長くやっている人気の漫画だから人が多いことを懸念していたけど、チケット制のお陰か、ゆっくり見られそうだった。
「会場が東京とかだったら、きっとこうは行かなかっただろうね。」
一応都会ではあるけど、地方だから入場数が抑えられているところもあるのかもしれない。
葉月とそんな会話をしながら受付でチケットを見せて入場した。
ちなみに、今日来れなかった涼斗の分のチケットは、葉月の母親の知り合いに回されたらしい。
一枚で大丈夫だったのかな、と思ったけど、独り身で単独行動が好きな人らしいのでちょうど良かったそうだ。
涼斗は、チケットが無駄にならなかったのでほっとしていた。
思ったよりも展示は充実していて、子供から大人まで、そしてライトなファンからコアなファンまで楽しめそうな内容だった。
解りやすくカッコいいカラーのイラストから、直筆の細かい設定集、作品を描く上で実際に使用された資料、没になった原稿まであって、真夏と葉月は始終興奮気味だった。
食い入るように展示を眺めているうちに、不意に距離が近くなってしまうことがあって、真夏は何度か我に返ってドキドキしていた。
ふと周囲を見渡すと、カップルで見に来ている人たちが多くて、自分たちももしかしたらそう見えているんじゃないかと想像して、顔の温度が上がった。
「ねぇ、あっちの絵の前で写真撮ってもいいんだって!!行こうよ!」
葉月は唐突にそう言って、真夏の手首をぎゅっと掴んできた。
何か意図していたわけではなく、単に真夏がぼけっとしていたから焦れてそうしたのだろう。
だけど、葉月の滑らかな手の感触に驚き、真夏は思わず、
「うわっ!!」
と声を上げて手を引っ込めてしまった。
葉月は面食らったような顔になり、数秒静止した後、ようやく気付いたのか、じわじわと耳まで真っ赤になって俯いた。
「ごめん…」
真夏もつられて赤くなった。
思った以上に照れている葉月の反応が可愛くて、あと、周りのカップルたちの空気にも当てられて、ちょっと、いや、かなり舞い上がっていた。
真夏はそのまま、
「写真、行こっか。」
と、照れを隠すように踵を返した葉月の腕を、先ほどされたようにぎゅっと捕まえた。
殆ど無意識だった。
軽く力を込めて引き寄せると、葉月の困惑したような顔が近づいた。
てのひらの中に、少しひんやりとした細くてしなやかな感触を感じる。
葉月の、少し色素が薄い虹彩と視線が絡んだ瞬間、
「僕の彼女になってくれませんか?」
と、真夏の喉から滑り出た。
一瞬、全ての音が消えた。
今までに一度だって言ったことがない言葉だし、なんなら誰かに言われたことすらない言葉なのに、至って自然に口から出たから、全身の毛が逆立つくらいに驚いた。
一拍遅れて、耳から頬にかけてがカッと熱くなる。
耳が熱でぼわぼわして、ジーッと耳鳴りがする。
葉月は、また固まった後、周りのカップルたちが自分たちを見てクスクスと笑っていることに気が付くと、慌てて真夏を連れて足早にその場を離れた。
少し離れた場所まで来た時、葉月は真夏を振り返って、頬を染めながら、上目遣いでこう聞いてきた。
「さっきの話、ほんき?」
真夏は無言でコクコクと頷く。
葉月は、「そっか…」と頬を掻いて、しばらく考えてから、
「私でよければ、よろしくお願いします。」
と言って、いつもよりももっと目を細めてふわっと笑った。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。」
真夏も慌ててそう言った。
