青い朧月

そんなことがあっても、あまり変わらない日常が続いていた。

ほんの少し変わったことがあるとしたら、涼斗が積極的に葉月さんに挨拶したり、話しかけたりする機会が増えたな、ということだった。真夏も部活内では話すけど、教室で話しかける勇気はなかった。

葉月さんの周りはいつも女の子たちが取り巻いていて、そこに入って行けるコミュ力がなかったからだ。

涼斗はあまり臆せずに他愛もない会話ができていた。恐らく、涼斗には蘭と凜という双子の妹が居るから、女の子と話すことへの抵抗が少ないのだろう。

歳が離れているため、真夏は涼斗の妹たちと関わる機会があまりなかったが、涼斗によく似た快活な性格をしていた記憶がある。

真夏は既に成人済みで偶にしか家に帰ってこない兄貴が一人居るだけなので、羨ましくはあった。

不貞腐れていても仕方がないので、真夏も葉月さんと話す努力をして、連絡先をゲットした時は天にも昇るような気持ちになった。

まぁ、涼斗も同じくゲットしていたようだが、個人的に会話できる手段ができただけで大進展だ。

毎日他愛もない会話を送り続けて、最近では葉月さん、ではなく、葉月、と呼び捨てで呼ぶ仲になってきていた。

これで涼斗ともいい勝負だろうと思っていた。

しかし、

「なんか、涼斗くんと真夏くん(この頃には、苗字呼びではなく名前呼びに変化していた。)って、いつも同じ感じの話を送ってくるよね。」

ある日の部活中、真夏と涼斗と葉月の三人で話しているときに、不意に葉月にそう言われて、ガクッと落胆した。葉月はそんな真夏たちに気づかずに、

「やっぱ、幼馴染だから仲良いね。」

と、やはり目尻をきゅっと細めてにこにこ笑っている。」

かわいいけど、今はそれどころじゃなかった。

「でも、ちょっと返信が面倒だからさ、3人でグループチャット作ろうよ。そしたら、同じ内容を2人に送らなくて済むし。」

とさらに追い打ちをかけて来た。

涼斗の方も、トドメ寸前くらいまで食らっている。

見えない何かにぶっ刺された胸を抑えながら半分放心状態で言われるままにグループチャットを作ると、

「これからはこっちで連絡するね!」

葉月は爽やかにトドメを刺し、画材を取りに去って行った。

屍と化した真夏と涼斗はその日、二人して埴輪のような表情で埴輪のような表情の石膏人物像を描いていたため、部長の山川先輩に心配されて早めに帰らされてしまった。

(埴輪が悪いわけではなく、今日描く画題が石膏の胸像だったのに埴輪のような顔を描いていたので心配された。)

ふらふらと帰りながら、真夏と涼斗はひとしきり、お前が悪いんだ、なんだと言い合いをしたのち、

「もう一度頑張ろう。」

と決意を固めて再度拳を突き合わせたのだった。