青い朧月

高校入学から二週間も経つと、新品の制服の匂いは薄れてくる。

授業にも何となく慣れて来て、教室では何となくグループが固まり始めて来ていた。

浮足立った空気が落ち着き、反動で少し重苦しく感じる。

ざわつく春の毒気とのアンバランスさで疲れるから苦手だ。

ここから五月になるとこれはもっと重くなり、精神的に参ってくる人が出てくるんだろうな、そんなことをぼーっと考えていたら、帰りのホームルームが終わった。

「なぁ真夏、お前部活どうすんの?」

クラスメイト達の大半が教室を出て行ってしまってからそう聞いてきたのは、幼馴染の夏川涼斗だった。

涼斗との付き合いは、もはや腐れ縁と言っても差し支えないほどに長い。

家が近いせいもあって、幼少期から小中学校、そして高校まで一緒に来た。

一緒のクラスになったのはこれで六回目だったから、もうクラス発表の時に同じクラスの名簿の中に互いの名前を見つけても「またかよ」という感想だった。

「僕は高校でも美術部に入るって、前に言ったじゃん。涼斗はどうなん?また剣道?」

中学時代はそれぞれ違う部活に入っていたから、会う回数は減っていた。

それでもクラスは二回被っていたのと、ふらっと互いの家を行き来していたから、一般的な友人と同じくらいは一緒に行動する機会があったと思う。

涼斗は、教科書がパンパンに詰まった重そうなリュックを背負いながら、

「いや、高校では俺も美術部入るわ。」

と続けた。

「え、まじ?なんで?あんなに頑張ってたし、総体で結構いいとこまで行ってたのに…それにこの高校の剣道部、結構強いって有名じゃん。あ、もしかして兼部するとか?言っとくけど美術部もそんなに甘くないよ?」

今までそんなことを言ってなかったため、目を丸くして真夏がそう聞くと、

「いや、兼部はしないよ。なんか、もういいやってなったんだよね。やり切ったって感じ。練習かなりハードだったしさ。それに、絵にも興味あったから、やってみたかったんだよな。」

と涼斗は穏やかに笑った。未練や後悔など一切感じられない、爽やかな笑みだった。

「なるほどな、…ってことは、涼斗と部活まで一緒かよ。」

「そういうことになるな。」

「僕たち、どんだけ腐れ縁なんだろ…」

「真夏は俺が居たら嫌なの?」

「いや、そういうことじゃないけどさー」

「ならいいじゃん。美術部の仮入部いつからだっけ?」

「えーと、固定の活動日が水、木、金。他の日は、美術室を使用している人が居なければ鍵借りて使ってもいいらしい。」

真夏は、入学後のオリエンテーションの時に貰った各部活紹介のプリントを読み上げる。

「今日は火曜日だから、行くなら明日か。」

「だな。今日は帰ろう。明日英単語の小テストあるし。」

真夏が手製の単語帳を取り出すと、涼斗の顔がさっと青くなった。

「テストの存在を忘れてた…」

その日は、二人で単語帳を眺めつつ、問題を出し合いながら下校した。

既にほとんど散って葉桜になった桜の木々が、春の陽光の元で穏やかに揺れていた。