TRAP×GIRL【完結】




テレビから流れる電子音が、映画の終わりを告げた。
静寂が戻ると思った次の瞬間、パチリと画面が切り替わり、アナウンサーの硬い声が部屋に響き渡る。

「続いてのニュースです。20YX年に長谷川賞を受賞した作家、朝霧青紫氏の新作が、早くも異例のヒットを記録しています。タイトルは『和。ーそれぞれの道の全てー』。純文学に精通している朝霧氏にとって5年ぶりとなるこの作品は、発売と同時に瞬く間に売り切れ、現在も予約が殺到しているとのことです……」

その名前が耳に飛び込んできた瞬間、一花の手がピタリと止まった。
視線がテレビの画面に吸い付けられる。食い入るように文字を追い、報じられる「朝霧青紫」という四文字を、網膜の奥へ、記憶の底へと深く焼き付けた。

(――パパだ)

心臓が早鐘を打ち鳴らす。はっと我に返った一花は、もう一秒だってじっとしていられなかった。朔也の部屋のドアを乱暴に押し開け、外へと飛び出す。

走った。ただひたすらに、前だけを見て走った。
肺が焼けるように熱い。すれ違う何人かが、狂気じみた形相で疾走する一花の姿に驚き、何度も振り返る。だが、そんな周囲の視線など、今の彼女にはどうでもよかった。

住宅街の入り口まで差し掛かったところで、ついに足の脂が切れ、一花はアスファルトの道路に崩れ落ちた。地面に座り込んだまま、激しく肩を上下させる。

そして、狂ったように笑い出した。

「あはっ、あははは! あはははははは!!」

涙が出るほど、息が切れるほどに笑い転げる。その笑い声は、静かな住宅街にどこか不気味に響き渡った。
一花は震える手でポケットを探り、中からクシャクシャになった一枚の写真を引っ張り出す。それを愛おしそうに、そして壊れそうなほど強く胸へと押し当てた。

天を仰ぎ、喉の奥から絞り出すように彼女は呟く。

「……やっと、やっとよ。パパに、やっと会える……!」

歪んだ歓喜の涙が、一花の頬を伝って流れ落ちた。