ぎらぎらと照りつける太陽が、容赦なくアスファルトを焦がしていた。
本格的な夏休みに入った一花は今、巨大な遊園地の入場ゲート前に立っていた。
本来なら、今日は朔也との念願の二人きりのデートになるはずだった。しかし、一花の視線の先には、並んで楽しそうにパンフレットを広げる朔也と空麗、そして――あの碓氷馨の姿がある。
お人好しで誰も拒まない朔也の性格が、ここへ来て最悪の形で仇となってしまった。「みんなで行った方が楽しいから」と空麗たちを誘ってしまい、一花の緻密な計算を遥かに超えたダブルデートという最悪の計画に変貌を遂げていた。
一花は三人に気づかれないよう、ひとり静かにため息をついた。
はしゃぐ背中を恨めしそうに見つめながら、最悪の夏休みの幕開けを呪う。
その時、前を歩いていた馨が、ちらりと後ろを振り返った。
一花と目が合った瞬間、その細い瞳の奥に邪悪な愉悦が走る。馨はわざとらしく歩幅を緩めて一花の隣に並ぶと、いかにも気が利く優しい男子の声を装って話しかけてきた。
「あれ、一花ちゃん大丈夫? 暑い?」
その完璧な演技と、自分にだけ向けられた憎らしい笑みに、一花の胸の内で激しい怒りが爆発する。
(何でせっかくの夏休みにまで、コイツの顔を見なきゃいけないわけ…?)
空麗が彼を繋ぎ止めてくれているはずだったのに、なぜこの男は、こうも自然に自分の領域へ踏み込んでくるのか。
一花は爆発しそうな苛立ちを必死で抑え込み、限界ギリギリの精神力で「可愛い彼女」の笑顔を顔面に貼り付けた。
「うん、本当、今日もすごく暑いね! せっかくの遊園地だし、今日はみんなで思いっきり楽しもう!」
明るく弾んだ声で答える一花。しかし、その瞳の奥は一切笑っていなかった。馨の不敵な視線を受け流しながら、一花は狂い始めた復讐のシナリオをどう修正すべきか、冷徹に思考を巡らせ始めていた。



