動いたら、もっと痛くなってしまう。
もっと羽が壊れてしまう。
幼い一花は本気でそう心配した。
けれど、蝶々はその制止の言葉など無視するかのように、重い羽を引きずりながら、ゆっくりと地面を這い出し始めた。
心配そうに顔を近づけて見つめる一花を他所に、蝶々はただひたすらに、まっすぐ前へと突き進む。
その行く手を阻むように、地面の泥の隙間から、黒くて小さなアリたちが何匹もやってきた。
弱った獲物を狙おうと、蝶々のボロボロの羽をつつこうとする。
「あっ……」
一花が息を呑んだ瞬間、蝶々は残された力を振り絞るように、激しく身体を震わせた。
必死にアリたちを振り払い、一度も後ろを振り返ることなく、ただひたすらに前へ、前へと進んでいく。
その姿は、痛々しくて、無様だった。それなのに、どうしてだろう。



