「一花〜? どこにいるの〜?」
遠くから、母親の朝霧 澪が娘を捜し優しくのんびりとした声が響く。
けれど、五歳の一花はその声に答えることも忘れ、公園の隅にある鬱蒼とした草むらの中にしゃがみこんでいた。
綺麗なまつ毛がきちんと整列した、幼いつぶらな瞳。
その視線はじっと一点に注がれている。
視線の先にいたのは、ボロボロになって地面に横たわる、一羽の青紫色の蝶々だった。
片方の羽は無残に引き裂かれ、鱗粉も剥げ落ちて、今にも消えてしまいそうなほどに弱り切っている。
一花は息をひそめ、そっとその姿を見つめながら、小さな声をかけた。
「……どうしたの? 怪我しちゃったのかな……?」
触れたら壊れてしまいそうで、小さな指先を伸ばすことすらためらわれる。
すると、その蝶々は一花の言葉に応えるかのように、ゆっくりと、もぞもぞと身体を動かし始めた。
―――生きていた。
一花はくりっとした純粋な目を見開いて、驚きと心配のあまり、思わず声を張り上げる。
「え、動いちゃだめだよ!」



