不吉な影を落として割り込んできたのは、一羽の大きな黒いカラスだった。
獰猛な嘴と、漆黒の肉塊。
カラスは何の慈悲もなく、ただ通りすがりの凶器となって、小さな青紫の肢体に容赦なく激突した。
嫌な音がして、繊細な鱗粉が初夏の光にきらきらと霧のように舞う。
片方の羽を無残に引き裂かれ、均衡を失った蝶は、風に弄ばれる木の葉のように、真っ逆さまに冷たい地面へと叩きつけられた。
湿った土の上に、横たわる蝶。
ちぎれかけた右羽は力なく折れ曲がり、ピクリとも動かない。
誰もが、その命はここで潰えたのだと思うだろう。
しかし、蝶は諦めていなかった。



