あれから数日後―――。
「早く観たいね、馨!」
対照的に、陽の光が降り注ぐ映画館の前は、大勢の観客で賑わっていた。
上映を待つ行列の中で、一花は弾んだ声を上げて馨を見上げた。かつて復讐の闇に囚われていた彼女の顔からは完全に憑き物が落ち、今はただ、愛しい人を見つめる純粋な笑顔が咲いている。
二人の手は、指と指を絡める恋人繋ぎで、片時も離れないよう固く結ばれていた。
「なんせ、朝霧蒼士さんの映画だもんな。俺も楽しみだよ」
馨もいつもの意地悪な笑みを潜め、愛おしそうに一花の手を強く握り返した。
二人が付き合い始めたというニュースは、夏休み明けの学校を瞬く間に駆け巡った。
学校一のプレイボーイだった馨を取り巻いていた女子生徒たちは一斉に悲鳴を上げたが、あの気まぐれな彼を完全に射止めた一花は、今や校内のちょっとした伝説になりつつある。
「いや〜、ちょっと怪しいと思ってたんだよね!」
クラスでそう言って豪快に笑ったのは、空麗だった。
「私じゃさすがにノルマが高かったっていうかさ!馨くんはどちらかというと、恋愛対象っていうより『推し』に近かったんだよね!!」
すっかり吹っ切れた様子で親指を立てる空麗に、一花は申し訳なさから「本当にごめんね……!」と必死に頭を下げていた。
けれど、空麗は本当に温かい心の持ち主だった。
一花の肩をぽんと叩き、心からの祝福をくれたのだ。
大切な友達に守られ、そして、何よりも自分を求めてくれる人の手を引いて、一花は一歩を踏み出す。
これから歩む未来が、たとえどんなに不確かでも。
繋いだこの手の温もりだけは、決して離さない。
二人は互いの体温を確かめ合うように笑い合い、光の差す映画館のなかへと進んでいった。
「早く観たいね、馨!」
対照的に、陽の光が降り注ぐ映画館の前は、大勢の観客で賑わっていた。
上映を待つ行列の中で、一花は弾んだ声を上げて馨を見上げた。かつて復讐の闇に囚われていた彼女の顔からは完全に憑き物が落ち、今はただ、愛しい人を見つめる純粋な笑顔が咲いている。
二人の手は、指と指を絡める恋人繋ぎで、片時も離れないよう固く結ばれていた。
「なんせ、朝霧蒼士さんの映画だもんな。俺も楽しみだよ」
馨もいつもの意地悪な笑みを潜め、愛おしそうに一花の手を強く握り返した。
二人が付き合い始めたというニュースは、夏休み明けの学校を瞬く間に駆け巡った。
学校一のプレイボーイだった馨を取り巻いていた女子生徒たちは一斉に悲鳴を上げたが、あの気まぐれな彼を完全に射止めた一花は、今や校内のちょっとした伝説になりつつある。
「いや〜、ちょっと怪しいと思ってたんだよね!」
クラスでそう言って豪快に笑ったのは、空麗だった。
「私じゃさすがにノルマが高かったっていうかさ!馨くんはどちらかというと、恋愛対象っていうより『推し』に近かったんだよね!!」
すっかり吹っ切れた様子で親指を立てる空麗に、一花は申し訳なさから「本当にごめんね……!」と必死に頭を下げていた。
けれど、空麗は本当に温かい心の持ち主だった。
一花の肩をぽんと叩き、心からの祝福をくれたのだ。
大切な友達に守られ、そして、何よりも自分を求めてくれる人の手を引いて、一花は一歩を踏み出す。
これから歩む未来が、たとえどんなに不確かでも。
繋いだこの手の温もりだけは、決して離さない。
二人は互いの体温を確かめ合うように笑い合い、光の差す映画館のなかへと進んでいった。



