TRAP×GIRL【完結】



危険なフェンスを跨ぎ、ようやく安全な屋上の床へと戻った二人は、張り詰めていた糸が切れたようにコンクリートの上へと仰向けにひっくり返った。

頭上に広がる秋の空を見上げながら、馨は堪えきれないというようにクスクスと肩を揺らし始めた。

「いや、ごめんてっ……あはは! そんなに怒んなくてもいいじゃん」

「だって、あの状況なら誰が見たってそう思うでしょ!? 最低!!」

一花は寝転がったまま、ぷいっと顔を背けて激怒した。涙で濡れた頬が、怒りと恥ずかしさで今度は真っ赤に染まっている。

馨の引きつったような笑い声が、ようやく少しずつ収まっていく。彼は腕を枕にしながら、ぽつりと本音を漏らした。

「まぁ……死ぬ気はなかったけど、一人暮らしして、学校も辞めてバイトでもして生きていこうかなとは、真面目に考えてたとこだけどね」

親に見捨てられ、血の繋がりも失った自分が、ここに残る意味などないと思っていた。
けれど、一花は即座にそれを拒絶した。

「それも、嫌だ。私にとっては、居なくなるのと同じじゃん」

まっすぐな一花の言葉に、馨は一瞬だけ目を見開いた。それから、どこか諦めたような、だけど心底嬉しそうな笑みを浮かべて、横たわる一花の顔を覗き込んだ。

「まぁ、でも……こんなに必死になってくれる女の子、きっとこれから先、俺の人生には現れないだろうからね。――一花ちゃんのそばに、いる事にするよ」

その瞬間、一花の顔に一気に熱が上った。心臓がうるさいほどの音を立て始める。

(私……いま冷静に考えたら、どさくさに紛れて、とんでもないことを言った気がする……!)

『愛してやるわよ!』
『ずっと馨くんを離さない!』

自分の口から飛び出したあまりにも熱烈な告白の数々が脳裏に蘇り、一花は羞恥心で破裂しそうになった。

「ああああ!!忘れてっ!!やっぱさっきの、なしっ!!」

叫びながら、一花は両手で勢いよく顔を覆い、馨に背を向けるようにゴロンと寝返りを打った。耳の裏まで真っ赤にしながら小さく丸まる一花の背中を見て、馨はまた、楽しそうに笑声を響かせた。

ぬるかった秋の風が、いつの間にか、二人を心地よく包み込むような涼しさに変わっていた。