朔也は、気が狂ったように笑いだした。その乾いた笑い声が、狂気に染まった部屋に響き渡る。
「あはは、ははははっ!」
突然、朔也が一花の身体を勢いよく突き押した。抵抗する間もなく、一花はベッドの下の床へとドサリと落ちる。激しい衝撃が背中を走ったが、痛みを自覚するより早く、朔也がその上に覆いかぶさるように跨ってきた。
「一花、だめだよ? 終わらせたら……。一花は俺の事、大好きって言ったよね?」
歪んだ笑みを浮かべ、熱を帯びた瞳で覗き込んでくる朔也。その執着に、一花は激しい嫌悪と恐怖を覚えた。
「あなたの事、一度も好きになったことなんてない!!」
一花は涙を流しながら叫び、自由な手を振り上げて勢いよく朔也の顔を叩いた。乾いた音が室内に響く。しかし、朔也は痛みを感じていないかのように、ただ表情を歪ませた。
「なんで……? なんで一花まで俺の事をみてくれないの……? なんで、よりによって馨なんだよっ!!」
朔也の声が、嫉妬と怒りで怒号へと変わる。彼は一花の両腕を掴むと、床へときつく押さえつけた。
「俺なら一花をずっと憎んで、愛してあげれるのに!!」
「やめて!! 離してっ!!」
一花は必死に身体をジタバタと暴れさせ、抵抗を試みる。だが、男の力で押さえつけられた腕はびくともしない。
すると朔也は急に声を落とし、這い寄る蛇のように、そっと一花の耳元で囁いた。
「なあ一花、馨とキスしたんだろ? それか、もうヤッたとか?」
その名前が出た瞬間、一花は顔を真っ青にした。心臓が凍りつくような衝撃が走る。
「やめて……!! 碓氷くんは関係ないでしょ!!」
必死に声を荒げて叫ぶ一花。しかし、その必死な拒絶が、かえって朔也の確信を深めさせた。朔也は光を失った虚ろな目で一花を見下ろし、低く呟いた。
「俺の知らない所で、キスしてたくせに……裏切り者だね? 一花は。俺、許せないよ……」
「私だって嫌いよ、あんたなんて大っきらい!!」
一花は涙混じりの声を張り上げ、全力で彼を拒絶した。その言葉を聞いた瞬間、朔也の唇が奇妙な形に吊り上がる。
「ねぇ…ここで、俺が一花を犯したら……朝霧蒼士と碓氷馨はどんな顔するのかな……?いい復讐の余興になると思わない?」
クスクスと楽しげに笑う朔也。
その最悪な言葉に、一花は全身の血の気が一気に引いていくのを感じた。
「なっ……! やめて!! 何かんがえてるの!! 離してっ!!」
恐怖に支配されながらも、一花は狂ったように首を振り、残された力で激しく抵抗する。しかし、朔也はその叫びを無視し、ゆっくりと顔を近づけていく。
そして、抵抗する一花の首筋に、そっと自分の顔を埋めた。



