「きゃっ!!」
一花は短い悲鳴を上げて勢いよく振り返った。
そこには、感情の消えた虚ろな瞳で、小首を傾げている朔也が立っていた。
「だめだよ、一花。人の物を勝手に覗いたら」
いつもの優しいトーンのはずなのに、その声には一切の体温が感じられない。
一花の身体は完全に硬直した。恐怖で顔が引きつり、喉の奥から絞り出すように声を絞り出す。
「あれ、朔也くん……、お茶、飲んだよね……?」
朔也は子供を諭すようににっこりと微笑んだ。
「うん、ゴミ箱に流した。だめだよ、一花? 二度も薬を入れるなんて悪い子だね?」
すべてが見破られていた。
背筋に冷水が走った一花は、本能的な恐怖からその場を逃げ出そうと、朔也から距離を取ろうとした。しかし、それよりも早く、朔也の長い腕が一花の手首を掴んだ。
「っ、離して……!」
「逃げちゃだめだよ、一花」
驚くほどの怪力で引っ張られ、一花はそのままベッドへと押し倒された。
「朔也くん!?何するの!! 嫌っ!! 離してっ!!」
一花は懸命に抵抗しようとしますが、朔也の強い力に押さえ込まれ、身動きが取れなくなってしまう。一花の瞳には恐怖が浮かび、必死に彼を拒絶した。
「なんで? 俺たち、恋人同士だよね? なんで抵抗するの?」
朔也は至近距離から一花をじっと見つめ、静かに問いかけていく。その瞳には、一花が知っているかつての優しさは微塵もなかった。
「なんでって……! 朔也くん、どうしちゃったの? おかしいよ……! やめて、痛いっ!」
自由を奪われた恐怖と悲しみで、一花の声は震えている。しかし、その必死の訴えも、今の朔也には届かないようだった。
朔也は、氷のように冷たい目で一花を見下ろした。その瞳の奥には、底知れない執着と暗い感情が渦巻いている。
「ずっとわかってたよ……」
低い声が、静かな部屋に重く響いた。



