ぜんぶお前のためだから


辿り着いたのは僕の家からそう遠くない場所にある青い屋根の家。

最後に陽太の家に上がったのは、記憶が確かなら小学校4年生のとき以来。

およそ7年は経つというのに、彼の家は変わらずあのときのままだった。

当時はまだまだ新築だった二階建て一軒家。

広い庭に咲いた花々やハーブのいい香りが、来訪した僕の緊張をほぐした。


「今でもロティアさんのガーデニング手伝ってるの?」


「母さんから言ってくるんだよ、手伝えって……だから仕方なくな」


「へぇ……」


ロティアさん……それは陽太のお母さんの名前だった。

白い肌に陽太とお揃いの髪色と目。

お世辞なんかじゃなく美しかった彼女を“おばさん”と呼ぶのが申し訳なくて、僕はずっとそう呼んでる。


「お邪魔します」


おずおずと玄関をくぐる僕に、陽太は靴を脱ぎながら言った。


「そんな緊張しなくていいよ、今日は母さんも父さんも用事があって夜まで帰ってこないから」


「そ……そうなんだ?」


それはそれで気まずい。

またさっきみたいな空気になったらどうしよう。

漫画だけ借りて、ササッと帰るしか……。

そんな思考を回転させながら、2階へと続く白い階段を上る陽太の背中を追いかける。

……大きくなったな。

昔は僕とたいして変わらなかったのに。

背丈も体つきも、いつの間にか追い越されてしまったのが少し寂しい。