ぜんぶお前のためだから


「……なあ、実月。ちょっと聞いてもいい?」


会話の切れ目を狙ったように陽太が問いかけた。


「うん、なに?」


楽しい会話ですっかり油断しきっていた僕は、興奮気味に火照った顔をほころばせながら隣を見た。

サァ、と風が木々を揺らしている。

陽太はどこか寂しげな表情で僕を見つめていた。


「なんで……俺のこと、避けるようになったの?」


その言葉に、僅かに目を見開いて口をつぐむ。

視線を逸らしうつむいた先のコンクリートの地面に、僕の情けない影が伸びていた。

肩に掛けたスクールバッグのショルダーを強く握る。

立ち止まる互いの足。

問いについての返事を待たれているのは明白だった。

僕は下手くそな笑顔を作って、ワザと明るい調子で振る舞う。


「あ、ははっ……そんなの決まってるじゃん。僕みたいな、いじめられてばっかのオタクと友達だなんて陽太も嫌で――」


「俺は実月みたいな優しいやつと友達になれたこと、今でも誇りだと思ってるんだけど」


冗談めかす僕を真っ直ぐ見つめる陽太が即答した。


「小学校の時……俺が転校してきた日のこと覚えてる?」


小さく頷くと、陽太は空を見上げて思い出すようにあの日のことを語り出す。

それは僕もよく覚えている、遠い昔の記憶だった。