ぜんぶお前のためだから


すっかり緑色になった桜の木の下を、陽太と二人で並んで下校する。

この光景も小学校以来じゃないだろうか。

ちらりと隣を見ると、陽太も僕を見ていた。

ロシア人のお母さんから受け継いだという青く澄んだ瞳が僕を映している。

なんだか心がソワソワして落ち着かない。

咄嗟に視線を逸らしたとき、陽太が声を発した。


「そういえば実月ってさ、日曜日の朝に放送してる“ベビキュア”ってまだ見てる?」


「あ、うん……見てる、よ」


陽太が口にした女児向けアニメのタイトルに心臓がドキリと跳ねた。

どうしよう。

つい“見てる”なんて本音を言ってしまったけど――さすがに男子高校生が女児向けアニメ見てるなんてひかれるかな……。

そんな不安を抱く中、陽太の態度は変わらなかった。


「そっか、実月は今期だと誰が推し?」


「え?……えっと、僕は最近仲間になったベビハナかな……あ、でも主人公のベビスタも好きかも」


「やっぱり?俺もベビスタ派かなー。星がモチーフになってて変身シーンが見応えあるし、さすが主人公って感じ」


「わ、分かる!ベビスタの魅力って本当そこで、作画担当の人の力の入れようが分かるっていうか!エフェクトも丁寧に描かれてて迫力あるよね!」


まるで小学校時代のあの頃に戻ったように、僕らはアニメの話で盛り上がる。

何よりも、陽太が変わっていないことが知れて嬉しかった。

いつの間にか、遠い存在になったと思っていたから……なおさらそう思う。