ぜんぶお前のためだから


「陽太ー!早くハンバーガー食いに行こうぜー」


教室から顔を出した派手な男子生徒が、数人で陽太の名前を呼ぶ。

何か約束をしていたんだろうと気づいて、僕は唇を噛み締めた。


「あ……あのさ、助けてくれてありがとう!じゃあ僕はこれで――」


そう言って、そそくさとその場を去ろうとした瞬間、陽太が僕の腕を軽く掴んだ。

不思議に思い振り返ると、真っ直ぐに僕を見つめる彼の瞳と目が合う。

吸い込まれるような深い青に、声が出ない。


「今からアイツらとハンバーガー食いに行くんだけど、実月も一緒に行かね?」


「えっ……」


まさかのお誘いだった。

僕はすぐさま思考を巡らせる。

あの陽キャ集団の中で、僕みたいな陰キャが交じって一緒に食事なんて……そんなの考えられない。


「えっと、せっかくだけど遠慮させてもらおうかな……」


「そっか、分かった」


特に引き止められるわけでもなく、陽太が頷く。

それでも、僕の腕は掴まれたままだった。

陽太が後方で待つ男子生徒達を振り返り、声を上げる。


「悪ぃ、用事できたからハンバーガーはパスする」


「そうなん?分かったー、じゃあまたなー」


「えっ……えっ……?」


去って行く男子生徒数人の背中と目の前の陽太を、困惑しながら交互に見つめる。


「んじゃあ、帰ろうか実月」


ようやく僕の腕を離した陽太が、決定事項かのようにそう呟いた。