そんなの、言うまでもない。
だけど、目の前に佇む彼の瞳が答えを求めて懇願しているのが分かって……気づけば僕は口を開いていた。
「うん……今も昔も、陽太は僕のヒーローだよ」
「……そっか」
陽太が目を伏せて口元を緩ませる。
そのまま部屋の中央に置かれた小さなローテーブルの上に飲み物を置いた。
表面に結露のついたグラスの中で氷同士がぶつかり、カランと涼やかな音を立てる。
陽太はトレイを置くとベッド近くに置かれていた本棚に進み、そこから数冊の単行本を手にした。
「はい、これ。読みたがってた漫画」
「え……本当に貸してくれる、の?」
「そのために俺の家まで来たんだろ?」
差し出された漫画を受け取る。
新品同然のそれはあまり読まれた形跡がない。
そういえば何度も読み返す僕と違い、陽太は一度か二度見たら満足するタイプだったなと思い出す。
……そんなところも、変わってないんだな。
「ありがとう……これ、いつ頃に返せばいいかな」
漫画を受け取りスクールバッグの空いたスペースに丁寧にしまい込む。
陽太は「そんなの実月の決めたタイミングでいいよ」と言いながらベッドに座った。
「え?いや……それだと話しかけるタイミングとか困るっていうか……」
陽太の近くにはいつも誰かがいる。
絶えない会話と笑い声。
とてもじゃないけど、そんな中に割って入る度胸は今の僕にはない。
ただでさえ教室でもクラスメイトと関わる機会が稀なのに。


