「飲み物持って来るから、実月は部屋で待ってて」
自室のドアを明け、陽太が再び階段を下りていく。
「お構いなく」と絞り出した声は届いただろうか。
僕はその場でしばらく戸惑ったあと、開かれたドアの先へと一歩を踏み出した。
整理整頓されたそこは、白い家具で統一されていてあの頃よりも少し大人びた印象を受ける。
陽太の匂いがする部屋。
ふと目に入ったガラスケースを見て「わぁ……」と声が漏れた。
そこにはピカピカと輝きを放つ金色のトロフィーがズラリと並んでいて、陽太の才能を感じる。
「そういえば陽太って、習い事とか色々やってたっけ……」
柔道、空手、合気道、剣道、水泳に……あとはどんなのがあったかな。
ここにあるトロフィーはそういう大会の優勝トロフィーなんだろう。
クラスでも騒がれていたっけ。
僕はイヤフォンで陽太に関する情報をシャットアウトしてたけど、女子生徒達が彼を囲んで黄色い声を上げていたのはよく覚えてる。
「カッコよくて皆から好かれて、強くて……優しくて……本当にヒーローみたいになっちゃうんだもんな」
セリフのないモブ役がお似合いの僕とは大違い。
やっぱり、距離を置いたのは間違いじゃなかった。
そうだよね?
「ヒーローみたいって、俺のこと?」
後方からの声に、勢いよく振り返る。
そこには茶色のトレイの上、氷が入れられた飲み物のグラスを持った陽太がいた。
えっ……今の聞かれてた……!?
あわあわと声も出せずに口を開閉するだけの僕を見て、彼はこてんと首を傾げる。
「なあ、教えて。実月にとって俺ってさ、ヒーローに見えてる?」


