ぜんぶお前のためだから


二年生に進級して一ヶ月が経った5月の半ば。

放課後の廊下を歩く僕は肩にスクールバッグをかけて、上機嫌に鼻歌を歌っていた。

その両手には一枚のクリアファイル。

アニメとコンビニのコラボ企画で作成されたそれにはヒロインである女性キャラクターが大きくデザインされている。

販売期間を勘違いし、運悪く買い逃したクリアファイル……まさかこんな形で手に入るなんて。

二枚買ったからと快く譲ってくれたアニオタ友達に感謝しなきゃ。

今度ジュースか学食でもおごろうかな。

そう考えながら歩いていたからか、足先に伸ばされた悪意に気づけなかった。


「――わっ!」


何かに(つまづ)き、体が前に倒れる。

思わず手をついた拍子に、クリアファイルがヒラヒラと空中を舞った。

無様に転んだ僕を見て、ゲラゲラと笑いが起こる。

僕は拳を握りながら声のする方へ視線を上げた。

そこにはよく見知った“いじめっ子”達三人の顔が並んでいる。

彼らは僕と目が合うなり威圧するように睨みつけてきた。


「は?何こっち見てんだよ陰キャ」


「つーかそれ何?女のイラストが描かれたクリアファイルとか持って廊下歩いてたわけー?」


「うわ、キモ……どんな神経してんの、恥ずかしくないん?」


拾われそうになったクリアファイルを慌ててサッと取り上げる。