1週間後。
僕は、バスの車窓から空を仰いでいた。
雲ひとつない、澄みきった青空が広がっていてすがすがしい。
「晴れてよかった」
誰に言うでもなく呟くと、隣に座っている拓矢が、
「雨だと台無しだからな」
と、窓に顔を近づけて空を見上げた。
拓矢の顔が、僕の顔に息がかかるほどのところにある。体は少し触れている。
鼓動が大きくなっているのがわかって、恥ずかしかった。
こんなところで赤面したら、変に思われる。
僕は、拓矢にばれないようにゆっくりと静かに深呼吸をした。
そんな僕の気持ちなど知らない拓矢は、僕の顔の間近で、
「平日だから空いてるかなぁ」
なんて、のん気なことを言っている。
「空いているといいね」
そう言うのがやっとだった。
遊園地に着くと、拓矢はスリルのある乗り物ばかり乗りたがって僕を散々振り回すので、
「たまには、こういうのにも乗ろう」
とメリーゴーランドに誘ったら、
「まじかよぉ」
と、とても困惑した表情をしたので、愉快だった。
「学ラン男子が仲良くメリーゴーランドって、どうよ?」
拓矢は文句を言いながらも、優雅な音楽とともに木馬に揺られている。
「ロマンチックじゃないの」
と言ってやると、
「お前には敵わねぇ」
と言って、大きなため息をついていた。
拓矢と過ごす時間は、僕にとって、なにものにも代えがたい。
拓矢の困惑した顔も、思いきり笑った顔も、たまに見せる真剣な顔も、僕の胸を熱くさせる。
だけど、僕に見せるそれらの表情は、僕が「友達」だからであって……。
そう思うたび、突然、孤独に襲われる。
僕は。
ずっと、恋愛はできないんだろうか。
ずっと、片思いし続けなければならないんだろうか。
「お~い」
ベンチで僕の隣に座っている拓矢が、僕の顔の目の前で手を振っている。
「あ、ああ。ぼ~っとしてた」
はっと我に返り、今考えていたことを悟られないように、慌ててオレンジジュースを流し込んだ。
「オレンジジュース、一口ちょうだい」
拓矢はそう言って、自分が持っているジンジャーエールを僕に差し出している。
「う、うん」
どきどきしながらジンジャーエールを受け取り、オレンジジュースを手渡した。
拓矢は何の迷いもなく、僕がさっきまでくわえていたストローでオレンジジュースを飲んでいる。
僕も平静を装って、拓矢のジンジャーエールを一口飲んだ。
のどの奥の方が熱を帯びて、顔が赤くなりそうだったけど、必死に抑えた。
その時だった。
ひとりの女子がやってきて、僕の真ん前に立った。
ふと見上げると、彼女は、
「君島くん、ちょっといい?」
と言って、僕を連れ出した。
ふと拓矢の方を振り返ると、にやにやしながら僕を眺めているので、にらみつけてやった。
また、告白されるのかな。
人気の少ない木陰まで連れてこられると、その女子は、
「ごめんね、君島くん。ちょっと木戸くんをひとりにしたかったんだ」
と言った。
「え。それって、もしかして」
僕がそう言ったとたん、彼女は口の前で人差し指をたてて、拓矢の方を指差した。
すると、さっきまで僕が座っていたベンチに、拓矢の隣に、女子がひとり座っていた。
僕は、身をひそめてその様子を見つめた。
心臓が嫌な音を立てている。
僕は、彼女の恋が破れることを願っていた。
なのに。
拓矢は、顔を赤くしてその彼女に照れくさそうな笑顔を見せた。
「やった」
僕と一緒にその様子を見ていた女子は、友達の恋の成就を喜んでいる。
僕は。
何の前触れもなく、失恋した。
拓矢の隣にいた女子は、かわいらしい笑顔を拓矢に向け、こちらに向かって走ってきた。
そして、友達同士で恋の成就を喜びあった。
僕はその様子をちらりと見て、その場から去ろうとすると、拓矢の彼女に、
「君島くん。ごめんね。ありがとう」
と言われたので、
「ううん」
と笑顔を作ったが、顔の筋肉は完全に強ばっていた。
拓矢のもとに戻ると、拓矢は照れくさそうにしながらもなにもなかったかのように、
「おう」
とだけ言った。
「OKしたんだ」
「あ、うん」
さっきふたりの様子を見ていたのに、本人の口から事実を聞くと、やっぱりショックだった。
「好き、だったの?彼女のこと」
おそるおそる尋ねると、
「好き、っていうか。まあ、かわいいしさ。とりあえず付き合ってみよっかなって」
と言って、顔を赤くした。
なんだよ、それ。
とりあえずで付き合うなよ。
僕なんて、ずっとそばにいるのに。
そばでお前を見ているのに。
お前の好みだって、癖だって知っているのに。
どれだけ思っても、僕の恋は成就しないっていうのにさ。
「……うらやましいよ」
簡単に思いを伝えられて。
とりあえず、で付き合うことができて。
「お前なんて、選び放題じゃねぇか」
拓矢のその言葉に、苦笑するしかなかった。
僕は、バスの車窓から空を仰いでいた。
雲ひとつない、澄みきった青空が広がっていてすがすがしい。
「晴れてよかった」
誰に言うでもなく呟くと、隣に座っている拓矢が、
「雨だと台無しだからな」
と、窓に顔を近づけて空を見上げた。
拓矢の顔が、僕の顔に息がかかるほどのところにある。体は少し触れている。
鼓動が大きくなっているのがわかって、恥ずかしかった。
こんなところで赤面したら、変に思われる。
僕は、拓矢にばれないようにゆっくりと静かに深呼吸をした。
そんな僕の気持ちなど知らない拓矢は、僕の顔の間近で、
「平日だから空いてるかなぁ」
なんて、のん気なことを言っている。
「空いているといいね」
そう言うのがやっとだった。
遊園地に着くと、拓矢はスリルのある乗り物ばかり乗りたがって僕を散々振り回すので、
「たまには、こういうのにも乗ろう」
とメリーゴーランドに誘ったら、
「まじかよぉ」
と、とても困惑した表情をしたので、愉快だった。
「学ラン男子が仲良くメリーゴーランドって、どうよ?」
拓矢は文句を言いながらも、優雅な音楽とともに木馬に揺られている。
「ロマンチックじゃないの」
と言ってやると、
「お前には敵わねぇ」
と言って、大きなため息をついていた。
拓矢と過ごす時間は、僕にとって、なにものにも代えがたい。
拓矢の困惑した顔も、思いきり笑った顔も、たまに見せる真剣な顔も、僕の胸を熱くさせる。
だけど、僕に見せるそれらの表情は、僕が「友達」だからであって……。
そう思うたび、突然、孤独に襲われる。
僕は。
ずっと、恋愛はできないんだろうか。
ずっと、片思いし続けなければならないんだろうか。
「お~い」
ベンチで僕の隣に座っている拓矢が、僕の顔の目の前で手を振っている。
「あ、ああ。ぼ~っとしてた」
はっと我に返り、今考えていたことを悟られないように、慌ててオレンジジュースを流し込んだ。
「オレンジジュース、一口ちょうだい」
拓矢はそう言って、自分が持っているジンジャーエールを僕に差し出している。
「う、うん」
どきどきしながらジンジャーエールを受け取り、オレンジジュースを手渡した。
拓矢は何の迷いもなく、僕がさっきまでくわえていたストローでオレンジジュースを飲んでいる。
僕も平静を装って、拓矢のジンジャーエールを一口飲んだ。
のどの奥の方が熱を帯びて、顔が赤くなりそうだったけど、必死に抑えた。
その時だった。
ひとりの女子がやってきて、僕の真ん前に立った。
ふと見上げると、彼女は、
「君島くん、ちょっといい?」
と言って、僕を連れ出した。
ふと拓矢の方を振り返ると、にやにやしながら僕を眺めているので、にらみつけてやった。
また、告白されるのかな。
人気の少ない木陰まで連れてこられると、その女子は、
「ごめんね、君島くん。ちょっと木戸くんをひとりにしたかったんだ」
と言った。
「え。それって、もしかして」
僕がそう言ったとたん、彼女は口の前で人差し指をたてて、拓矢の方を指差した。
すると、さっきまで僕が座っていたベンチに、拓矢の隣に、女子がひとり座っていた。
僕は、身をひそめてその様子を見つめた。
心臓が嫌な音を立てている。
僕は、彼女の恋が破れることを願っていた。
なのに。
拓矢は、顔を赤くしてその彼女に照れくさそうな笑顔を見せた。
「やった」
僕と一緒にその様子を見ていた女子は、友達の恋の成就を喜んでいる。
僕は。
何の前触れもなく、失恋した。
拓矢の隣にいた女子は、かわいらしい笑顔を拓矢に向け、こちらに向かって走ってきた。
そして、友達同士で恋の成就を喜びあった。
僕はその様子をちらりと見て、その場から去ろうとすると、拓矢の彼女に、
「君島くん。ごめんね。ありがとう」
と言われたので、
「ううん」
と笑顔を作ったが、顔の筋肉は完全に強ばっていた。
拓矢のもとに戻ると、拓矢は照れくさそうにしながらもなにもなかったかのように、
「おう」
とだけ言った。
「OKしたんだ」
「あ、うん」
さっきふたりの様子を見ていたのに、本人の口から事実を聞くと、やっぱりショックだった。
「好き、だったの?彼女のこと」
おそるおそる尋ねると、
「好き、っていうか。まあ、かわいいしさ。とりあえず付き合ってみよっかなって」
と言って、顔を赤くした。
なんだよ、それ。
とりあえずで付き合うなよ。
僕なんて、ずっとそばにいるのに。
そばでお前を見ているのに。
お前の好みだって、癖だって知っているのに。
どれだけ思っても、僕の恋は成就しないっていうのにさ。
「……うらやましいよ」
簡単に思いを伝えられて。
とりあえず、で付き合うことができて。
「お前なんて、選び放題じゃねぇか」
拓矢のその言葉に、苦笑するしかなかった。



