俺の体感では、沖縄は一年を通して、雨の多い場所だった。
沖縄といえば、青い海と穏やかな気候を思い浮かべる人が多い。
けれど、住んでいる身からすれば、そんなものは観光客が来る日に合わせて用意されている景色のように思える。
晴れていたと思えば、突然雨が降る。
朝は青空だったのに、帰る頃には道路が濡れている。
傘を持って出るかどうか迷って、結局どちらを選んでも少し後悔する。
沖縄の天気は、昔からそういうものだった。
……特に冬は、晴れ間がほとんど見えなかった。
「おい、自称晴れ男。」
「はい晴れ男。」
「……最近、雨と曇りがずっと続いてるじゃねーか。」
横で歩きながら折り畳み傘を振り回している聖人を見る。
空からは濡れるか濡れないのか怪しい程度の小雨が降っていて、俺と聖人はもう傘をさしていなかった。
——夏の頃と比べると、聖人は少し背が伸びた。
話しかける時に俺の目線が若干上を向いている気がして、複雑な気持ちだった。
「知らないよ。たまには俺の力も鈍るの。」
「かれこれ二ヶ月近く鈍ってるけどな。」
「マジレスやめて。」
聖人は笑って俺を軽く小突いた。
「でも、最近ほんと寒くなったよな。」
「沖縄でそれ言う?」
「言うよ。普通に寒い。」
「本土の人が聞いたら笑うぞ。」
「本土って寒いの?」
「場所によるだろ。」
「へえ。」
聖人はそれだけ言って、また前を向いた。
たぶん、深い意味はない。
ただ知らないことを聞いて、知ったから納得した。それだけのことだ。
雨は細く降り続いていた。
冬は、夏ほど雨が激しくない。
その代わり、一度降り始めると、いつまでも空が晴れない。
空はずっと薄暗く、太陽を厚く覆っていた。
ずっと降り続ける糸雨に濡れながら、俺たちは並んで歩いた。
……聖人と並んで歩くと、その差が前よりほんの少しだけ分かる。
それが妙に悔しくて、俺は歩幅を少しだけ広くした。
聖人は何も言わなかった。
ただ、少しだけ歩幅を俺に合わせた……ような気がした。
しばらく歩いて、交差点の角にあるコンビニが見えてきた。
「寄っていい?」
「え、なんで。」
「寒いから。」
聖人はそう言って、先に店へ入っていった。
俺も仕方なく後を追う。
「何にしよっかなー……」
そう呟きながらペットボトルコーナーに行き、聖人は二本のペットボトルを手に取った。
……温かいコーン茶とココア。
「なんで二本なの。」
「俺と由寿の。」
即答だった。
「……俺の?」
「うん。」
聖人は何でもないことみたいに答えて、ココアを俺に差し出した。
「はい。俺の奢り。」
「なんでココア。」
「寒いって言ってたから。」
「言ってないけど。」
「顔が寒そうだった。」
「意味分かんない。」
そう言いながら、俺はココアを受け取った。
缶ではなく、ペットボトルのココア。
手のひらに伝わる温かさが、思っていたより心地よかった。
「聖人はコーン茶?」
「うん。」
「ココアじゃなくて?」
「甘いの苦手。」
「へえ。」
どうでもいいことを一つ知った。
それだけなのに、なぜか少し嬉しかった。
店を出ると、さっきより雨が細かくなっていた。
聖人はコーン茶を一口飲んで、満足そうに息を吐く。
「やっぱ冬はこれだな。」
「おじいちゃんみたい。」
「うるさい。」
聖人は笑いながら、俺の肩を軽く押した。
そのまま二人で歩き出す。
雨はまだ降っていた。
けれど、さっきより寒くはなかった。
沖縄といえば、青い海と穏やかな気候を思い浮かべる人が多い。
けれど、住んでいる身からすれば、そんなものは観光客が来る日に合わせて用意されている景色のように思える。
晴れていたと思えば、突然雨が降る。
朝は青空だったのに、帰る頃には道路が濡れている。
傘を持って出るかどうか迷って、結局どちらを選んでも少し後悔する。
沖縄の天気は、昔からそういうものだった。
……特に冬は、晴れ間がほとんど見えなかった。
「おい、自称晴れ男。」
「はい晴れ男。」
「……最近、雨と曇りがずっと続いてるじゃねーか。」
横で歩きながら折り畳み傘を振り回している聖人を見る。
空からは濡れるか濡れないのか怪しい程度の小雨が降っていて、俺と聖人はもう傘をさしていなかった。
——夏の頃と比べると、聖人は少し背が伸びた。
話しかける時に俺の目線が若干上を向いている気がして、複雑な気持ちだった。
「知らないよ。たまには俺の力も鈍るの。」
「かれこれ二ヶ月近く鈍ってるけどな。」
「マジレスやめて。」
聖人は笑って俺を軽く小突いた。
「でも、最近ほんと寒くなったよな。」
「沖縄でそれ言う?」
「言うよ。普通に寒い。」
「本土の人が聞いたら笑うぞ。」
「本土って寒いの?」
「場所によるだろ。」
「へえ。」
聖人はそれだけ言って、また前を向いた。
たぶん、深い意味はない。
ただ知らないことを聞いて、知ったから納得した。それだけのことだ。
雨は細く降り続いていた。
冬は、夏ほど雨が激しくない。
その代わり、一度降り始めると、いつまでも空が晴れない。
空はずっと薄暗く、太陽を厚く覆っていた。
ずっと降り続ける糸雨に濡れながら、俺たちは並んで歩いた。
……聖人と並んで歩くと、その差が前よりほんの少しだけ分かる。
それが妙に悔しくて、俺は歩幅を少しだけ広くした。
聖人は何も言わなかった。
ただ、少しだけ歩幅を俺に合わせた……ような気がした。
しばらく歩いて、交差点の角にあるコンビニが見えてきた。
「寄っていい?」
「え、なんで。」
「寒いから。」
聖人はそう言って、先に店へ入っていった。
俺も仕方なく後を追う。
「何にしよっかなー……」
そう呟きながらペットボトルコーナーに行き、聖人は二本のペットボトルを手に取った。
……温かいコーン茶とココア。
「なんで二本なの。」
「俺と由寿の。」
即答だった。
「……俺の?」
「うん。」
聖人は何でもないことみたいに答えて、ココアを俺に差し出した。
「はい。俺の奢り。」
「なんでココア。」
「寒いって言ってたから。」
「言ってないけど。」
「顔が寒そうだった。」
「意味分かんない。」
そう言いながら、俺はココアを受け取った。
缶ではなく、ペットボトルのココア。
手のひらに伝わる温かさが、思っていたより心地よかった。
「聖人はコーン茶?」
「うん。」
「ココアじゃなくて?」
「甘いの苦手。」
「へえ。」
どうでもいいことを一つ知った。
それだけなのに、なぜか少し嬉しかった。
店を出ると、さっきより雨が細かくなっていた。
聖人はコーン茶を一口飲んで、満足そうに息を吐く。
「やっぱ冬はこれだな。」
「おじいちゃんみたい。」
「うるさい。」
聖人は笑いながら、俺の肩を軽く押した。
そのまま二人で歩き出す。
雨はまだ降っていた。
けれど、さっきより寒くはなかった。
