そんな気取らない日常に、ちょっとした変化が訪れたのは一週間前のことだった。
友達とおしゃれなカフェに行って刺激を受けた凪は、その日の夜、伊吹の部屋で漫画を読みながら思い切って口に出してみたのだった。
「ねえねえ伊吹〜。たまにはさ、ちゃんとしたお店で、美味しいものでも食べたくない?」
「ちゃんとしたお店?」
漫画のページをめくる手を止め、伊吹が首をかしげる。
「そう! なんていうかさ、ドレスコードとまではいかなくても、ちょっとお洒落して行くようなお店! ほら、私達いっつも定食屋か家じゃない? それはそれで大好きなんだけど、たまには大人のデートってやつを経験してみたいわけですよ!」
凪が立ち上がり、胸を張って大げさにポーズを決めて見せると、伊吹は一瞬ポカンとしたあと、小さく吹き出した。
「お前が『大人のデート』ねぇ……。ナイフとフォーク落として惨事になりそう」
「ちょっと!失礼ね! 私だってやればできる子なんですー!」
「はいはい。……まあ、いいんじゃね」
「えっ! 本当!?」
「ちょうど、気になってるイタリアンがあったんだよ。駅前の隠れ家っぽい店。評判いいらしいから、来週の金曜、予約しとくわ」
照れくさそうに目線を逸らしながら言う伊吹の言葉に、凪の胸は跳ね上がった。
それからの短いはずの一週間は、凪にとって待ち遠しくてたまらない時間となった。
バイト代を握りしめてショッピングモールへ走り、この日のために一着の服を新調した。普段の凪なら、大学に行くのもバイトに行くのも、動きやすさを最優先したデニムにスニーカーが定番だ。けれど、今夜ばかりは特別だった。
自分の部屋の鏡の前で、新調した服に袖を通してみる。
それは、爽やかで柔らかい水色の生地に、控えめな小花柄があしらわれたロングワンピースだった。
「……うん! めっちゃ可愛くない!?」
くるりと一回転してみると、裾がふわリと揺れた。
普段はカジュアルなスタイルばかりの自分が、こんな可愛らしいワンピースを着たら、伊吹はどんな顔をするだろう。『似合ってるじゃん』と言ってくれるだろうか。それとも照れて目をそらすだろうか。どんな反応をされたとしても、今夜は笑顔で返せる自信があった。
友達とおしゃれなカフェに行って刺激を受けた凪は、その日の夜、伊吹の部屋で漫画を読みながら思い切って口に出してみたのだった。
「ねえねえ伊吹〜。たまにはさ、ちゃんとしたお店で、美味しいものでも食べたくない?」
「ちゃんとしたお店?」
漫画のページをめくる手を止め、伊吹が首をかしげる。
「そう! なんていうかさ、ドレスコードとまではいかなくても、ちょっとお洒落して行くようなお店! ほら、私達いっつも定食屋か家じゃない? それはそれで大好きなんだけど、たまには大人のデートってやつを経験してみたいわけですよ!」
凪が立ち上がり、胸を張って大げさにポーズを決めて見せると、伊吹は一瞬ポカンとしたあと、小さく吹き出した。
「お前が『大人のデート』ねぇ……。ナイフとフォーク落として惨事になりそう」
「ちょっと!失礼ね! 私だってやればできる子なんですー!」
「はいはい。……まあ、いいんじゃね」
「えっ! 本当!?」
「ちょうど、気になってるイタリアンがあったんだよ。駅前の隠れ家っぽい店。評判いいらしいから、来週の金曜、予約しとくわ」
照れくさそうに目線を逸らしながら言う伊吹の言葉に、凪の胸は跳ね上がった。
それからの短いはずの一週間は、凪にとって待ち遠しくてたまらない時間となった。
バイト代を握りしめてショッピングモールへ走り、この日のために一着の服を新調した。普段の凪なら、大学に行くのもバイトに行くのも、動きやすさを最優先したデニムにスニーカーが定番だ。けれど、今夜ばかりは特別だった。
自分の部屋の鏡の前で、新調した服に袖を通してみる。
それは、爽やかで柔らかい水色の生地に、控えめな小花柄があしらわれたロングワンピースだった。
「……うん! めっちゃ可愛くない!?」
くるりと一回転してみると、裾がふわリと揺れた。
普段はカジュアルなスタイルばかりの自分が、こんな可愛らしいワンピースを着たら、伊吹はどんな顔をするだろう。『似合ってるじゃん』と言ってくれるだろうか。それとも照れて目をそらすだろうか。どんな反応をされたとしても、今夜は笑顔で返せる自信があった。


