君を忘れるための春。

私の問いかけに、小さな恭弥は、持っていたスコップを握り直して少し照れたように言った。

「それは、その……糸が大切で、大好きだからだよ!」

太陽の光に負けないくらい真っ直ぐな、きらきらした笑顔。
その瞬間、私の胸の奥が、生まれて初めてドキンと大きく跳ね上がった。

(恭くんは、私のことが、大好き……?)

顔がカッと熱くなる。
きっと恭弥は誰に対してもそうで、私と凛のことが大好きだから、いつも一緒にいてくれているだけ。
そう、思いたかった。

でも、一度跳ね上がってしまった私の胸の内は、だんだんと自分に嘘をつけなくなっていった。

数日後、風邪の治った凛が保育園に登園してきた。
私たちは、またいつも通りの『三人』に戻って、いつものように園庭で遊んでいた。

恭弥は、凛に対しても、私にくれたのと同じ太陽みたいな笑顔を向けている。

(恭くん、私のこと『大好き』って言ったけど……凛ちゃんのことも、同じなのかな……?)

三人で笑い合っているはずなのに、胸の奥に、じわりと冷たいもやもやが募っていく。
おままごとの砂のケーキが、急に色褪せて見えた。

こんな、嫌な自分なんて知らなければよかったのに。
誰も悪くないのに、大好きな二人を素直に見られなくなる自分が、怖くて仕方がなかった。

「あ、恭くん、お洋服汚れてるよ」
「うわ、ホントだ。凛、ありがとな」

ふと、私は隣にいる凛の横顔を盗み見た。
凛はいつもの優しいお姉さんの笑顔で、恭弥のことを見つめている。
でも、その瞳の奥にある熱は、私と同じ、特別なものを映しているような気がした。

(もしかして……もしかして凛ちゃんも、恭くんのことが好きなのかな……?)

凛は恭弥をどう思っているんだろう。
一度生まれてしまったその疑問は、それから毎日、私の頭から離れなくなってしまった。