新幹線の窓の外、めまぐるしく流れていく景色を眺めながら、私はまぶたを閉じた。
耳の奥で、まだ発車のベルが鳴り響いているような気がする。
目を閉じると、浮かんでくるのは決まって、あの優しくて温かいあの日々の記憶だ。
◇
私と恭弥と凛は、生まれたときからの幼馴染。
同じマンションの同じ階に住んでいて、保育園のもも組のときから、ずっと三人で一緒に育ってきた。
二人はとにかく優しかった。
お姉さんみたいにしっかり者で大人びた凛と、面倒見がよくてみんなのリーダー的存在だった恭弥。
二人に比べて、私は子どもの頃からおっとりしていて、何をやらせても不器用だった。
だからいつも、二人は私の面倒を見るかのように、私を真ん中にして手を引いてくれた。
保育園の園庭で、私が派手に転んで膝を擦りむいたとき。
熱を出して、一人で教室の隅でうずくまっていたとき。
先生よりも誰よりも、いの一番に気づいて駆けつけてくれるのは、決まってあの二人だった。
「いと! 我慢しちゃだめだろ」
眉をひそめて、自分のことみたいに焦った顔で覗き込んでくる、小さな恭弥。
「いーと! しんどいの? 私がおんぶしたげる!」
小さな背中を精一杯丸めて、私の前にしゃがみ込んでくれる、優しい凛。
そのたびに、胸の奥がぽかぽかと温かくなって、涙なんてどこかへ吹き飛んでしまう。
「恭くん、凛ちゃん! ありがとう」
そう言って私が笑うと、二人はホッとしたように顔を見合わせて、私以上に嬉しそうに笑うのだった。
そんな、三人でいるのが当たり前だった日常のなかで。
私の心に、小さな、けれど消えない変化が訪れたのは、あるよく晴れた春の日のこと。
その日は、凛が珍しく風邪で保育園を休んでいた。
「……ん、できた」
一人で砂場に座り込み、小さなスコップで砂の山を作っていた私のもとに、影が落ちる。
見上げると、そこには恭弥が立っていた。
「友達と遊ばないのか?」
恭弥は、私が一人で寂しくしていると思ったのだろう。
他のお友達が元気に走り回る園庭を気にする風でもなく、私の前にすとん、としゃがみ込んだ。
頭上から降り注ぐ太陽の光を背負って、まるでお兄さんのような、安心する顔で私に話しかけてくる。
「恭くんは、みんなと遊ばないの?」
「俺は、糸が一人でいるから来たんだよ。ほら、一緒に山作ろうぜ」
恭弥はズボンの汚れなんて気にせずに、小さな手で砂を集め始めた。
いつもそうだ。恭弥はいつだって、私のことを一番に気にかけてくれる。
ずっと、胸の奥で気になっていたことが、ぽろりと口からこぼれ落ちた。
「なんで、いつも恭くんは、私のことを心配してくれるの?」
砂を握ったまま、恭弥の顔をじっと見つめる。
子どもながらに、ずっと知りたかった。どうして恭弥は、私にこんなにも優しいのだろう、と。
耳の奥で、まだ発車のベルが鳴り響いているような気がする。
目を閉じると、浮かんでくるのは決まって、あの優しくて温かいあの日々の記憶だ。
◇
私と恭弥と凛は、生まれたときからの幼馴染。
同じマンションの同じ階に住んでいて、保育園のもも組のときから、ずっと三人で一緒に育ってきた。
二人はとにかく優しかった。
お姉さんみたいにしっかり者で大人びた凛と、面倒見がよくてみんなのリーダー的存在だった恭弥。
二人に比べて、私は子どもの頃からおっとりしていて、何をやらせても不器用だった。
だからいつも、二人は私の面倒を見るかのように、私を真ん中にして手を引いてくれた。
保育園の園庭で、私が派手に転んで膝を擦りむいたとき。
熱を出して、一人で教室の隅でうずくまっていたとき。
先生よりも誰よりも、いの一番に気づいて駆けつけてくれるのは、決まってあの二人だった。
「いと! 我慢しちゃだめだろ」
眉をひそめて、自分のことみたいに焦った顔で覗き込んでくる、小さな恭弥。
「いーと! しんどいの? 私がおんぶしたげる!」
小さな背中を精一杯丸めて、私の前にしゃがみ込んでくれる、優しい凛。
そのたびに、胸の奥がぽかぽかと温かくなって、涙なんてどこかへ吹き飛んでしまう。
「恭くん、凛ちゃん! ありがとう」
そう言って私が笑うと、二人はホッとしたように顔を見合わせて、私以上に嬉しそうに笑うのだった。
そんな、三人でいるのが当たり前だった日常のなかで。
私の心に、小さな、けれど消えない変化が訪れたのは、あるよく晴れた春の日のこと。
その日は、凛が珍しく風邪で保育園を休んでいた。
「……ん、できた」
一人で砂場に座り込み、小さなスコップで砂の山を作っていた私のもとに、影が落ちる。
見上げると、そこには恭弥が立っていた。
「友達と遊ばないのか?」
恭弥は、私が一人で寂しくしていると思ったのだろう。
他のお友達が元気に走り回る園庭を気にする風でもなく、私の前にすとん、としゃがみ込んだ。
頭上から降り注ぐ太陽の光を背負って、まるでお兄さんのような、安心する顔で私に話しかけてくる。
「恭くんは、みんなと遊ばないの?」
「俺は、糸が一人でいるから来たんだよ。ほら、一緒に山作ろうぜ」
恭弥はズボンの汚れなんて気にせずに、小さな手で砂を集め始めた。
いつもそうだ。恭弥はいつだって、私のことを一番に気にかけてくれる。
ずっと、胸の奥で気になっていたことが、ぽろりと口からこぼれ落ちた。
「なんで、いつも恭くんは、私のことを心配してくれるの?」
砂を握ったまま、恭弥の顔をじっと見つめる。
子どもながらに、ずっと知りたかった。どうして恭弥は、私にこんなにも優しいのだろう、と。



