「愛奈、思ったんだけどさ」
「なに?」
「現状だと実行しようにも難しい札とかあるんじゃないかなと思って。カードの変更とかするなら、僕はいいけど」
彼女は手元にある三枚のカードを一つずつ見渡した後、視線を下に向けたまま呟く。
「……ごめん。変えても、いいかな。ちょっとだけ」
「いいよ」
「ごめん」
愛奈は僕に何度も謝り、カードに触れた。僕は中身を見るわけにもいかず、窓に目を向ける。曇り空でぱっとしない天気だ。彼女と会ってから、ごめん、という言葉を何度聞いたことか。
そんなに謝らなくてもいいのに……むしろ禁止したいくらいだ。
あっ……これはいけるかもしれない。僕はとあるアイデアを思いつき、白紙のトランプに絵を描き始めた。少しすると、お互い準備が整い裏読みトランプを再開する。
「あれ? 知らない間に君のトランプが増えてる」
「うん、今書いた」
【水谷8 🚫】
「ふ~ん、楽しみ。私はね、数字の順番だけ変えた。内容は多分大丈夫」
【星川13➡1 😊】
「数字を変えたの? それって……意味ある?」
「大ありだよ、本当に叶えたいなと思ったの。大事なことでしょ?」
「なるほど……分かった」
全く見当がつかないが、笑顔の絵文字は強い存在感を放っていた。カードの端に折り目がハッキリとついているのはこのカードだけ。
気になる所ではあるが、他のカードにも目を向けてみることにする。
【星川6 👑】
【星川11 ⚡】
彼女を元気にするためにはどれを当てるといいだろう……そう考えると、今回は王冠のカードを当てるのがいいかもしれない。僕は狙うカードを指差す。
「じゃあ今回はこれで」
「えー折角変えたカードを当てないんだ」
「明らかに難しそうだし」
「ふーん。君、花火もギリギリまで当てなかったもんね」
「結果として深読みしすぎただけだったけど」
「君は考えすぎ。もっとシンプルに生きようよ」
そう簡単に切り替えられれば苦労しない、と思いつつ王冠から連想できるものを思案する。
「少しずつね、このカードで思いつくのは何かの一位になるとかだな……そんな方向性?」
「うーんちょっと違う」
「それなら王様になる?」
「近いかも」
なるほど、流石に一国を統治したいとかは現実的ではないだろう。高校生のうちにやりたいことに絞れば遊びもあり得るか?
「王様ゲームやってみたいとか?」
「おーやってみたいね、早速やる?」
「二人でやってどうする……というかその反応違うでしょ」
「どうでしょー」
とかいいつつ、早速王様ゲームのアプリを開き始める。おいおい。
「やらないから、僕らは今違うゲームやってる。OK?」
「ちぇー」
愛奈は不貞腐れながらアプリを閉じた。さて、他の候補を考えよう。何かヒントになりそうなものはないか……と模索していると、昔の当てたカードを思い出す。
【星川12 魔法をかけてほしい🪄 】
もしあれと同じ系統だとしたら、答えにグッと近づくかもしれない。
「例えば、お姫様になりたいとか?」
「ほぅ」
彼女はニヤケ顔をする。近いのか遠いのか分からないため、探ってみる。
「僕のお姫様姿を想像したの?」
「ふふふ、変なの~いいかもね。君、今からプリンセスになってよ」
「嫌だよ」
脇腹を抱えて大笑いする愛奈。笑いすぎだろ、まぁ自分も抑えきれる自信ないけど。
お姫様関係でかつ一緒に実行できること……漫画だと主人公の隣にいるのは……。
あっそれなら試したいことが一つ。僕はバッグを開けてイチゴ味のチョコが入ったお菓子を手に取って彼女に渡す。
「愛奈お嬢様、こちらお見舞いの品でございます」
「おー私の好きなイチゴじゃん、ありがと! 君、分かってるね~」
まるで社長のように鼻を高くして喜ぶ愛奈。この方向性で合っているようだ。
漫画でいうなら溺愛ものになる。花嫁いや、それって恋人ごっこ以上じゃないか。確かに数値的には一つ上だけどさ……。
「ねぇ、もしこのカードを当てたら、僕は甘い言葉を囁かないといけないの?」
「そうだよ」
彼女はニッコリと笑って頷く。うわぁ、嫌な予感が的中し、僕は頭を抱えた。
「あれ、当てなくていいの? 私が勝っちゃうよ」
「うむむ……やろう」
僕は歯を食いしばり、悩みながらも当てることを決意……というか開き直った。
「お嬢様になって溺愛されたい、これでどう?」
「で、できあい?! う、うそ……」
愛奈は手で赤くなった顔を覆う。いや、目の所だけはバッチリと開いてる。当たっているわけじゃないのか、これで外した場合かなり恥ずかしいぞ。
「ど、どうなの?」
「当たっているというか、それ以上だよ。もう!」
【星川6 お姫様みたいに甘やかされたい 👑】
「一緒じゃない?」
「全然違うよ……ふふ、楽しみだな。何してもらおうかな~」
「お手柔らかに頼むぞ」
気を良くした愛奈は早速スマホで溺愛ものの漫画をチェックし始めた……実行はまた今度やるらしく、それまでは忘れることにしよう。なお、僕が当てられるターンでは愛奈は楽しそうに的ハズレなことを言ってすぐ終わった。
「桐野には事情を話さなくていいのか? 返信来ないって泣いてたぞ」
「あぁ……そうだよね。気が重い」
「桐野のことだ。躍起になって探して夜にでも化けて出てくるぞ」
「流石に……いや、沙希ならあり得る。ねぇ、入院していること、伝えてくれないかな?」
「えぇ……」
「お願い!」
愛奈は頭を下げ、両手を合わせて頼んでくる。仕方ないな……。
「承知しました、お嬢様」
「なに?」
「現状だと実行しようにも難しい札とかあるんじゃないかなと思って。カードの変更とかするなら、僕はいいけど」
彼女は手元にある三枚のカードを一つずつ見渡した後、視線を下に向けたまま呟く。
「……ごめん。変えても、いいかな。ちょっとだけ」
「いいよ」
「ごめん」
愛奈は僕に何度も謝り、カードに触れた。僕は中身を見るわけにもいかず、窓に目を向ける。曇り空でぱっとしない天気だ。彼女と会ってから、ごめん、という言葉を何度聞いたことか。
そんなに謝らなくてもいいのに……むしろ禁止したいくらいだ。
あっ……これはいけるかもしれない。僕はとあるアイデアを思いつき、白紙のトランプに絵を描き始めた。少しすると、お互い準備が整い裏読みトランプを再開する。
「あれ? 知らない間に君のトランプが増えてる」
「うん、今書いた」
【水谷8 🚫】
「ふ~ん、楽しみ。私はね、数字の順番だけ変えた。内容は多分大丈夫」
【星川13➡1 😊】
「数字を変えたの? それって……意味ある?」
「大ありだよ、本当に叶えたいなと思ったの。大事なことでしょ?」
「なるほど……分かった」
全く見当がつかないが、笑顔の絵文字は強い存在感を放っていた。カードの端に折り目がハッキリとついているのはこのカードだけ。
気になる所ではあるが、他のカードにも目を向けてみることにする。
【星川6 👑】
【星川11 ⚡】
彼女を元気にするためにはどれを当てるといいだろう……そう考えると、今回は王冠のカードを当てるのがいいかもしれない。僕は狙うカードを指差す。
「じゃあ今回はこれで」
「えー折角変えたカードを当てないんだ」
「明らかに難しそうだし」
「ふーん。君、花火もギリギリまで当てなかったもんね」
「結果として深読みしすぎただけだったけど」
「君は考えすぎ。もっとシンプルに生きようよ」
そう簡単に切り替えられれば苦労しない、と思いつつ王冠から連想できるものを思案する。
「少しずつね、このカードで思いつくのは何かの一位になるとかだな……そんな方向性?」
「うーんちょっと違う」
「それなら王様になる?」
「近いかも」
なるほど、流石に一国を統治したいとかは現実的ではないだろう。高校生のうちにやりたいことに絞れば遊びもあり得るか?
「王様ゲームやってみたいとか?」
「おーやってみたいね、早速やる?」
「二人でやってどうする……というかその反応違うでしょ」
「どうでしょー」
とかいいつつ、早速王様ゲームのアプリを開き始める。おいおい。
「やらないから、僕らは今違うゲームやってる。OK?」
「ちぇー」
愛奈は不貞腐れながらアプリを閉じた。さて、他の候補を考えよう。何かヒントになりそうなものはないか……と模索していると、昔の当てたカードを思い出す。
【星川12 魔法をかけてほしい🪄 】
もしあれと同じ系統だとしたら、答えにグッと近づくかもしれない。
「例えば、お姫様になりたいとか?」
「ほぅ」
彼女はニヤケ顔をする。近いのか遠いのか分からないため、探ってみる。
「僕のお姫様姿を想像したの?」
「ふふふ、変なの~いいかもね。君、今からプリンセスになってよ」
「嫌だよ」
脇腹を抱えて大笑いする愛奈。笑いすぎだろ、まぁ自分も抑えきれる自信ないけど。
お姫様関係でかつ一緒に実行できること……漫画だと主人公の隣にいるのは……。
あっそれなら試したいことが一つ。僕はバッグを開けてイチゴ味のチョコが入ったお菓子を手に取って彼女に渡す。
「愛奈お嬢様、こちらお見舞いの品でございます」
「おー私の好きなイチゴじゃん、ありがと! 君、分かってるね~」
まるで社長のように鼻を高くして喜ぶ愛奈。この方向性で合っているようだ。
漫画でいうなら溺愛ものになる。花嫁いや、それって恋人ごっこ以上じゃないか。確かに数値的には一つ上だけどさ……。
「ねぇ、もしこのカードを当てたら、僕は甘い言葉を囁かないといけないの?」
「そうだよ」
彼女はニッコリと笑って頷く。うわぁ、嫌な予感が的中し、僕は頭を抱えた。
「あれ、当てなくていいの? 私が勝っちゃうよ」
「うむむ……やろう」
僕は歯を食いしばり、悩みながらも当てることを決意……というか開き直った。
「お嬢様になって溺愛されたい、これでどう?」
「で、できあい?! う、うそ……」
愛奈は手で赤くなった顔を覆う。いや、目の所だけはバッチリと開いてる。当たっているわけじゃないのか、これで外した場合かなり恥ずかしいぞ。
「ど、どうなの?」
「当たっているというか、それ以上だよ。もう!」
【星川6 お姫様みたいに甘やかされたい 👑】
「一緒じゃない?」
「全然違うよ……ふふ、楽しみだな。何してもらおうかな~」
「お手柔らかに頼むぞ」
気を良くした愛奈は早速スマホで溺愛ものの漫画をチェックし始めた……実行はまた今度やるらしく、それまでは忘れることにしよう。なお、僕が当てられるターンでは愛奈は楽しそうに的ハズレなことを言ってすぐ終わった。
「桐野には事情を話さなくていいのか? 返信来ないって泣いてたぞ」
「あぁ……そうだよね。気が重い」
「桐野のことだ。躍起になって探して夜にでも化けて出てくるぞ」
「流石に……いや、沙希ならあり得る。ねぇ、入院していること、伝えてくれないかな?」
「えぇ……」
「お願い!」
愛奈は頭を下げ、両手を合わせて頼んでくる。仕方ないな……。
「承知しました、お嬢様」

