真っ白なトランプと、強がりな君との答え合わせ

 僕が君に贈り物をするとしたら、真っ先にトランプを選ぶ。

 きっと花を渡せば、「お花もいいけど、一緒に遊ぶ方が楽しいよ」と言って僕の手を引っ張りどこかへ行こうとするだろう。

 そんな光景を思い浮かべると、不謹慎だがつい笑ってしまう。

 君はとてもきれいで安らかな表情を浮かべている。まるで日向ぼっこをしているみたいだ。

 肩を揺らして声を掛ければ、目を覚ましそうな気配すら感じさせる。

 君を大切に想う人たちがそっと花を添える中、僕は君だけに分かる秘密のトランプを入れた。

 君が起きた時に悲しくないように、寂しくないように、新しい世界での暇つぶしになるように、そして答え合わせができるように。

 ◆

 教室に休み時間を知らせるチャイムが鳴り響く。

 授業中は夜のような静けさをまとっていたのに、急に周囲は騒がしくなり、クラスメイトは楽しそうに会話を始めていた。

 僕――水谷(みずたに)はじめは、次の授業の準備を済ませた後、廊下側の真ん中の席で、ひっそりと一人でトランプを切っていた。

 誰かと遊ぶわけでもなく、誰かに見せるわけでもない。何年も続けてきたルーティーンで、ただ手が勝手に動いていただけだった。

 だが、トランプを切っていても、耳からは色んな情報が入ってきてしまう。誰かの話し声や笑い声、放課後の遊びの約束、あの動画見た? といった何気ない会話が教室を満たしている。僕のトランプから出される音は、誰に聞かれることなく、すぐに掻き消されてしまっていた。

「あっ」

 トランプを切る最中に一枚のカードが手元から離れていった。幸いにも机から落ちることはなく、すぐに手に取る。

 真っ白なトランプ。裏面には青い模様が描かれているが、表には何も描かれていない。ぽつりと家に取り残された白紙のカードを、僕は毎日、意味もなく触っていた。

 そんな、誰の目にも留まらないはずの僕の姿を、教室の後ろから一人だけ見ているクラスメイトがいることに、僕はまだ気づいていない。