星降る夜の寓話

「あいつは、親が事件を起こしてからずっと、死にたがってたんだ! それを、俺が、金を貸して……返すまでは生きててもらわないと困るって……ずっと……つなぎとめていたのに……その間に考えが変わるかもしれないと希望を持って」
「嘘だ……」
「環はお前と付き合ってるんだと思ってた。環は幸せなんだと思ってた。だから俺は見守ることにしたのに! あいつは旅行が好きなわけじゃない! なぜ、お前が気が付かない! そばで見ていたくせに!」
「環は……僕のことを好きだったわけじゃない。付き合っているフリを頼んだんだ。ストーカーを捕まえるために、彼女のフリをして囮になってもらった。その代償にお金が欲しいと言われた」
「……何言ってる……それ……お前が環を危険にさらしたのか!」
「環は、何も届いていないと言ってたから、それを信じてたんだ。君が環の目にふれないようにしていたなんて知らなかった。最初は環に興味なんてなかった。それなのに、何度も会ううちに気がついたら本気で好きになっていた。でも、環は僕を好きじゃなかった」

なんで……
どうしてこんなことになった……

「環は、君が環の母親を逮捕したことで責任を感じて自分と一緒にいるんだと言っていた」
「違う。確かに責任は感じているけれど、一緒にいる理由はそれとは関係ない」
「警察ならスマホの位置情報でどこにいるかくらいわかるんじゃないか?」
「そんなものとっくに調べた」
「……環は、いつも持ってるバッグを持って出ただろうか?」
「それがどうした」
「君なら環を探せるかもしれない」
「どうやって? 教えろ! 俺は環のためなら何だってやってやる!」
「今、勾留されている渡瀬千鶴なら、環の居場所がわかるかもしれない」
「どうしてその女が? 環と何の関係がある?」
「彼女は僕の持ち物にGPSを仕込んでいた。だから彼女はいつも僕の行くところを知っていた。それが、今回なぜか環のところにいると勘違いした。それはつまり、僕が環にあげたものにGPSが仕込まれてたということにならないだろうか?」
「それが何だかわかるのか?」
「ゆずり葉の販促グッズで、非売品のボールペン。グリップのところにお饅頭がチェーンでついていて、環がそれを可愛いと言ったからあの事件が起こる数日前、環に渡した」
「仮にGPSが仕込まれてたとして、追跡方法は?」
「それは、渡瀬千鶴しかわからない」
「それで俺か」
「確証があるわけじゃないから、君はリスクを背負うことになる」
「構わない」
「……君をそこに留めていたのは環なんだ?」
「そうだよ。俺は最初から全て捨てる覚悟がある」