星降る夜の寓話

朝起きて、朝食を2人で食べる。

律はハムを刻んで卵と混ぜて、甘く味付けをしたのが好き。
プチトマトは好きじゃない。
生野菜のことを「葉っぱ」と呼ぶ。
嫌いな物でも、作って出すと文句も言わずに食べてくれる。

何回こんな朝を迎えてきたかな。



「律、待って」

玄関へ向かう律を引き留めて、いつものように歪んだネクタイを直す。

「ねぇ、玄関に鏡を置いて、出かける前にネクタイを見たら? どうしていつもこんなにななめになってるの?」
「環が見てくれるからいいよ」
「いつまでも、律のめんどうを見られるわけじゃないよ」
「そう……だよな……」
「いってらっしゃい」
「うん、行って来る」

「行って来る」と言って、律は靴も履いたのに玄関を出ようとしない。

「遅れるよ?」
「環、帰ったら家にいるよな?」
「何いきなり?」
「あいつと会うんならいいんだけど」
「向こうも暇じゃないから。いろいろ大変みたい」
「それなら、しばらく仕事は休みもらったんだろ? 一日中だらだら寝とけ」
「律、変だよ? ずっと家にとじこもってろって言うの? そんなの無理だよ。さぁ、早く行って」

わたしは笑ったけど、律は笑わなかった。



律を送り出した後、部屋を掃除した。

普段拭かないような隅っこも手を伸ばして。

ずっと自分の部屋として使っていたところは特に入念に。


時間はかかってしまったけれど、なんとか片付いたと思う。

自分のものは極力置かないようにしていたし、少しづつ片づけてきたから、今日するべきことはそんなに残っていなかった。

いつも会社に行く時に持っているカバンを持って、リビングドアを閉める前に部屋の中を見渡した。

「行こう」

ひとりでつぶやいて、玄関を出た。