次々と聞かされる事実に、驚くことしかできなかった。
渡瀬千鶴は、大学時代に大和さんのことを好きになり、ストーカー行為を始めた。
大和さんがゆずり葉の社長の息子だと知った上で、ゆすり葉に就職し、大和さんといとこの飯島さんに近づいた。
そうすれば飯島さんに大和さんを紹介してもらえるんじゃないかと思って。
けれども、飯島さんは大和さんに渡瀬千鶴を紹介しなかった。
渡瀬千鶴は大和さんのすぐ近くにいながら、自分が大和さんと付き合えないことを全て、大和さんではなく、大和さんの彼女のせいにして追い詰めていく。
同時に自分の行為を暴こうとしている人間を逆に見つけては、その相手に近づいて懐柔し、決して自分を見つけることが出来ないようにしていた。
これまでは大和さんに彼女がいても、どんな付き合いなのか、外からしか見ることができなかったのを、飯島さんが大和さんとわたしの2人ともを知っていたことで、いろいろ話を聞き出し、わたしへの憎悪を募らせていった。
最初から最後まで渡瀬千鶴をかばい続け、心酔していたのが、彼女のことを「ちーちゃん」と呼んでいたあの男。
彼の仕事は、プロの探偵だった。
律が鑑識の力を借りても、彼の正体をなかなかつかめないでいたのは、彼が探偵で、捜査のソウハウを知っていたためだった。
そして律が逮捕に苦戦したのは、彼の前職がSPで、接近戦を得意としていたからだった。
皮肉にも大和さんはそれを理由に、ストーカーを探すため彼を雇ったのだった。
ストーカーを探すために雇った人が、ストーカーの相棒だったのだから、正体がバレるわけがない。
飯島さんに渡瀬千鶴の写真を見せてもらったけれど、顔を見てもやっぱり覚えていなかった。
モデルみたいにきれいな女で、普通に大和さんに近づけば、大和さんだって好きになったかもしれないのに、と思った。
写真を見ていたわたしに、飯島さんが言った。
「千鶴は、一度、大和に告白してフラれてるらしい。でも、それを彼女は自分の容姿のせいだと思ったみたい」
「え? でも?」
「全部、整形なんだって」
「そこまでするほど大和さんが好きだったなんて……」
「大和の彼女って、確かにきれいな子ばかりだった。でも、あいつは顔で選んでたわけじゃない。あいつの基準はステータスなんだよね。『ステータスだった』かな。環ちゃんに会ってあいつ変わったから」
わたしをストーカーの囮に選んだ時の大和さんを思い出した。
彼は、わたしが犯罪者の娘だから、わたしを選んだ……
「大和は、学歴とか、家柄や親の職業で人を見下すところがあって、そういうところ嫌いだった。だから千鶴を大和に紹介することができなかった。彼女の家、母子家庭だったから。大和がどんな態度で彼女に接するか想像できて……紹介しないのは千鶴を思ってのことだったんだけど、紹介してたら……何か違ったのかな……」
「誰かを思う気持ちが悪意に変わるなんて、寂しすぎます」
「環ちゃんと話すきっかけが欲しいと言ってきた時の大和は、『環ちゃんの笑顔に惹かれた』って言ってた。誰かを思って優しくなれることもあるのにね」
その時の大和さんは、本当はそんなふうには思っていなかった。
でも、その後、大和さんはわたしに謝った。
大和さんを好きだった渡瀬千鶴は、大和さんの彼女に悪意を向け、そんな渡瀬千鶴を好きだったあの男は、彼女のために犯罪を犯した。
母は?
ずっと考えないようにしていた。
母は取り調べ中から黙秘を続け、最後まで何も言わなかったと聞いた。
自分の身を守るためじゃなくて、誰かのために父を?
もしそうなら、その「誰か」はわたししかいない。
渡瀬千鶴は、大学時代に大和さんのことを好きになり、ストーカー行為を始めた。
大和さんがゆずり葉の社長の息子だと知った上で、ゆすり葉に就職し、大和さんといとこの飯島さんに近づいた。
そうすれば飯島さんに大和さんを紹介してもらえるんじゃないかと思って。
けれども、飯島さんは大和さんに渡瀬千鶴を紹介しなかった。
渡瀬千鶴は大和さんのすぐ近くにいながら、自分が大和さんと付き合えないことを全て、大和さんではなく、大和さんの彼女のせいにして追い詰めていく。
同時に自分の行為を暴こうとしている人間を逆に見つけては、その相手に近づいて懐柔し、決して自分を見つけることが出来ないようにしていた。
これまでは大和さんに彼女がいても、どんな付き合いなのか、外からしか見ることができなかったのを、飯島さんが大和さんとわたしの2人ともを知っていたことで、いろいろ話を聞き出し、わたしへの憎悪を募らせていった。
最初から最後まで渡瀬千鶴をかばい続け、心酔していたのが、彼女のことを「ちーちゃん」と呼んでいたあの男。
彼の仕事は、プロの探偵だった。
律が鑑識の力を借りても、彼の正体をなかなかつかめないでいたのは、彼が探偵で、捜査のソウハウを知っていたためだった。
そして律が逮捕に苦戦したのは、彼の前職がSPで、接近戦を得意としていたからだった。
皮肉にも大和さんはそれを理由に、ストーカーを探すため彼を雇ったのだった。
ストーカーを探すために雇った人が、ストーカーの相棒だったのだから、正体がバレるわけがない。
飯島さんに渡瀬千鶴の写真を見せてもらったけれど、顔を見てもやっぱり覚えていなかった。
モデルみたいにきれいな女で、普通に大和さんに近づけば、大和さんだって好きになったかもしれないのに、と思った。
写真を見ていたわたしに、飯島さんが言った。
「千鶴は、一度、大和に告白してフラれてるらしい。でも、それを彼女は自分の容姿のせいだと思ったみたい」
「え? でも?」
「全部、整形なんだって」
「そこまでするほど大和さんが好きだったなんて……」
「大和の彼女って、確かにきれいな子ばかりだった。でも、あいつは顔で選んでたわけじゃない。あいつの基準はステータスなんだよね。『ステータスだった』かな。環ちゃんに会ってあいつ変わったから」
わたしをストーカーの囮に選んだ時の大和さんを思い出した。
彼は、わたしが犯罪者の娘だから、わたしを選んだ……
「大和は、学歴とか、家柄や親の職業で人を見下すところがあって、そういうところ嫌いだった。だから千鶴を大和に紹介することができなかった。彼女の家、母子家庭だったから。大和がどんな態度で彼女に接するか想像できて……紹介しないのは千鶴を思ってのことだったんだけど、紹介してたら……何か違ったのかな……」
「誰かを思う気持ちが悪意に変わるなんて、寂しすぎます」
「環ちゃんと話すきっかけが欲しいと言ってきた時の大和は、『環ちゃんの笑顔に惹かれた』って言ってた。誰かを思って優しくなれることもあるのにね」
その時の大和さんは、本当はそんなふうには思っていなかった。
でも、その後、大和さんはわたしに謝った。
大和さんを好きだった渡瀬千鶴は、大和さんの彼女に悪意を向け、そんな渡瀬千鶴を好きだったあの男は、彼女のために犯罪を犯した。
母は?
ずっと考えないようにしていた。
母は取り調べ中から黙秘を続け、最後まで何も言わなかったと聞いた。
自分の身を守るためじゃなくて、誰かのために父を?
もしそうなら、その「誰か」はわたししかいない。



