星降る夜の寓話

「これまでの子は死骸を送り付けたところで身をひいたのに。ひとりだけもうちょっとねばったのもいたけど。お前みたいなのは初めて。一緒に住んでる男がいるくせに! 全く母親が母親なら娘も図々しい」


死骸?

大和さんが言っていた。

『誰かと付き合うと、そのターゲットがその相手に移る』
『脅迫状と共に』
『送られてくる物が写真から、死骸に』


でも、わたしはそんなもの受け取ってない。

写真も脅迫状も、一度も送られて来なかった。

今、目の前にバラまかれている写真だって、初めて目にするものばかり。

だから大和さんから別の人にターゲットが移ったんだと――


宅急便……

ドクンと心臓がお大きな音を鳴らした。

違う。

送られてきてた。

律が……


『俺がいない時に宅急便が来ても受け取らないで無視して』
『絶対に受け取るな。万が一受け取っても絶対に中を見るな。環宛になってても俺の物だから。頼むから約束して』
『忘れるな。約束だからな』


律が、わたしに隠して受け取っていた……


「あなたが……大和さんのストーカー?」
「違う! そんなのと一緒にするな! 彼女の想いは純粋なんだ!」


彼女?

それに声……


「お前のせいで、ちーちゃんがどんなに悲しんでるか! 彼女こそが運命の相手なのに! お前なんかが邪魔をしていいわけがない!」

ちーちゃん?

「邪魔! 邪魔! 邪魔!」

女性はポケットから大型のカッターを取り出すと、わたしを睨みつけたまま、ネジロックスライダーを回して、その刃を出した。


写真の次は小さな死骸が送られてくる。そしてそれはだんだんと大きな動物になって……

これまでの(ひと)は、そこで大和さんと別れている。

それでも大和さんと付き合ってたら?

その先を……知らない……


さっきまで掃除をしていたからベランダの窓は開いたままになっている。

そこから逃げる?

でもここは3階だから……

ここを事故物件にするわけにはいかない。

ここは、律の家だから。


「お願い……」
「今更遅いんだよ!」
「そうじゃない。何でも……言うこと聞くから、大人しくついて行くから……ここじゃない、別の場所にして」

女性は眉をひそめた。

「ここは、刑事の家だから……こんなとこで事件が起きたら……普通よりすごい勢いで、犯人捜しすると思う。あなたが捕まったら、わたしがいなくなっても、大和さんに新しい彼女ができたら、そうしたら、ち、ちーちゃんはどうするの? ここに痕跡なんか、残さない方がいいよ?」

女性は考えているように見えた。

普通の人間なら、こんな提案おかしいと気がつくに違いない。

でも、彼女は普通じゃない。


「少しでも妙な真似したらすぐに殺す」
「わかってる」
「スマホはどこ? GPSで追跡とかされたらここを出ても意味がない」
「そこ、キャビネットの上」

女性がスマホを見るために、わたしからほんの少し離れた時だった。


「逃げろ、環!」


突然、ベランダから律が飛び込んでくると、女性に体当たりした。