今回は、門があるようなお店で、きれいな庭園の奥にある建物に入ると、着物を着た女性が迎えてくれて、席に案内してくれた。
畳の部屋になっている個室は、窓からさっき見たのとは違う庭が見えた。
きっとこういうところによく来る人は、お庭や生けてあるお花の良さが言葉で言えるんだろうけど、わたしはただ緊張するだけ。
「2人きりなんだから楽にしたらいいよ」
そう言った大和さんはご機嫌に見えた。
いつからだろう?
冷ややかだった大和さんの表情が優しく感じるようになったのは。
元々こういう人で、わたしが勝手に大和さんという人を作り上げていたのかもしれないけれど。
最初に飲み物を持って来てくれた若い女性が、一緒にアンケート用紙を持って来た。
「よろしかったらお願いいたします」
そう言ってA4の紙を渡した後、周りを見渡す。
「申し訳ございません。ペンを忘れてきたみたいで、すぐにお持ちします」
「持ってるので大丈夫ですよ」
大和さんが言う。
「いえ、お客様……」
「本当に、気になさらないでください」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
女性が部屋を出て行った後、大和さんを見ているわたしに気がついたのか「何?」と聞かれた。
「アンケート、ちゃんと書くんだと思って」
「書くよ。店の方でも時々書いてもらうように頼むけど、なかなか思うように集まらなくて残念に思うから」
「ショップの方でも時々集計をとるけど、集まらなくて苦労してるから、わたしも頼まれたら書くようにしてます」
大和さんは上着の内ポケットからボールペンを出すとアンケートに記入を始めた。
「そのボールペン、クリップにぶら下がってるのって、もしかして栗饅頭?」
「そう。販促用の非売品」
「かわいい。栗饅頭のケシの実までちゃんと再現されてる」
「井池店で作ったやつらしいんだけど、本社の方でも宣伝して欲しいって持たされてる」
「青葉店では去年マグネットを作ったんだけど、ボールペンもいいですね」
「これ、気に入ったならあげるよ」
「それはダメ! わたしが持ってても宣伝にならないから」
「だったら、次に会うときまで預かってて」
「預かる?」
「そう。貸すだけ。それならいいでしょ?」
大和さんがペンを差し出した。
そのペンを受け取って、クリップからぶら下がる栗饅頭を見た。
小さな本物みたい。
「次に会う理由が出来た」
作り物なんかじゃない本当の笑顔。
大和さんには会う義務があるのだから、理由なんて必要ないのに。
畳の部屋になっている個室は、窓からさっき見たのとは違う庭が見えた。
きっとこういうところによく来る人は、お庭や生けてあるお花の良さが言葉で言えるんだろうけど、わたしはただ緊張するだけ。
「2人きりなんだから楽にしたらいいよ」
そう言った大和さんはご機嫌に見えた。
いつからだろう?
冷ややかだった大和さんの表情が優しく感じるようになったのは。
元々こういう人で、わたしが勝手に大和さんという人を作り上げていたのかもしれないけれど。
最初に飲み物を持って来てくれた若い女性が、一緒にアンケート用紙を持って来た。
「よろしかったらお願いいたします」
そう言ってA4の紙を渡した後、周りを見渡す。
「申し訳ございません。ペンを忘れてきたみたいで、すぐにお持ちします」
「持ってるので大丈夫ですよ」
大和さんが言う。
「いえ、お客様……」
「本当に、気になさらないでください」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
女性が部屋を出て行った後、大和さんを見ているわたしに気がついたのか「何?」と聞かれた。
「アンケート、ちゃんと書くんだと思って」
「書くよ。店の方でも時々書いてもらうように頼むけど、なかなか思うように集まらなくて残念に思うから」
「ショップの方でも時々集計をとるけど、集まらなくて苦労してるから、わたしも頼まれたら書くようにしてます」
大和さんは上着の内ポケットからボールペンを出すとアンケートに記入を始めた。
「そのボールペン、クリップにぶら下がってるのって、もしかして栗饅頭?」
「そう。販促用の非売品」
「かわいい。栗饅頭のケシの実までちゃんと再現されてる」
「井池店で作ったやつらしいんだけど、本社の方でも宣伝して欲しいって持たされてる」
「青葉店では去年マグネットを作ったんだけど、ボールペンもいいですね」
「これ、気に入ったならあげるよ」
「それはダメ! わたしが持ってても宣伝にならないから」
「だったら、次に会うときまで預かってて」
「預かる?」
「そう。貸すだけ。それならいいでしょ?」
大和さんがペンを差し出した。
そのペンを受け取って、クリップからぶら下がる栗饅頭を見た。
小さな本物みたい。
「次に会う理由が出来た」
作り物なんかじゃない本当の笑顔。
大和さんには会う義務があるのだから、理由なんて必要ないのに。



