星降る夜の寓話

会社の更衣室で制服に着替え、ロッカーを閉めたタイミングで、既に着替え終わった飯島さんが近寄ってきた。

「環ちゃん、大和とケンカでもした? どうせ全部あいつが悪いんだろうけど」
「ケンカ、ですか?」
「大和に呼び出されて、お酒付き合わされたんだけど、ぐちぐちぐちぐち、うざかった」
「何か言われてました?」
「ううん、何かっていうわけじゃないの。環ちゃんとどこそこでこれこれ食べたーとか、ショッピング行ったーとか、報告だけ。でもそれがずーーーっとしつこく続くから、疲れた」
「ケンカは、してないと思います」
「環ちゃんから誘ってやってよ。あいつ、あんなやつだったっけ?ってくらい面倒くさかった」
「そうですか……じゃあ、電話してみます」
「そうしてー」


ケンカをしたつもりはなかったけど、最後に会った日、逃げるみたいに別れたから怒ってるのかもしれない。

きっと契約違反。

相変わらずわたしのところには何も送られてこないし……

大和さんはいつもわたしにご馳走してくれてるから、経費ばっかりかかって成果が出ないことにイラついてるのかもしれない。

この間のことをきちんと謝って、契約のことをどうするべきか話さないといけない。
ストーカーが何もしてこない以上、契約は無効になるかもしれない。


大和さんはSNSをやっていないから、連絡はいつも電話だった。
そう言えば、わたしから電話をしたことは一度もない。
仕事が終わったら電話をしようと思っていたら、向こうから電話がかかってきた。

「急な出張が入って、東北に2泊3日で行くことになったんだ。その前にでもどこかで会えるかな」

そう言われて、大和さんが出張に行く前日、一緒にご飯を食べることになった。