星降る夜の寓話

夜、めずらしく早い時間に律は帰って来た。
でも、玄関のドアを開ける音がしたのに、なかなかリビングに入ってこない。
何をしているのかと思い、リビングドアを開けると、律は玄関のシーザーと向き合っていた。

「何してるの?」
「ん? 願かけ?」

何で疑問形?

「腹減った」
「ご飯できてるよ。今日は早かったね」
「働き方改革だってよ。事件がない日はさっさと帰れって」
「でも、事件がないっていうのは平和ってことだからいいよね」
「まあな」


スーツを脱いできた律は、テーブルの上の料理を見ると意外そうな顔をした。

「鶏の甘酢あんかけ? めずらしいもん作ったんだ」
「食べたいのかと思って。昼間電話で言ってたから。ちゃんと黒酢使ったよ」
「うん。食べたかった」
「初めて作ったから……食べたこともなくて、こんな味であってるのかなぁ、って思いながらレシピ見ながら作って……成功か失敗かもわからない」
「いただきます」

律はそう言うと、一番に茄子を口に入れた。

「うまいよ」
「本当?」
「うん。米がすすむ」
「良かった。今日はお味噌汁じゃなくて、中華スープにしてみた」

言い終わる前に律はもう中華スープに口をつけていた。

「どっちもうまい」

律がパクパク食べてくれたのでほっとした。