星降る夜の寓話

目を覚ますとベッドの上にいた。
律が運んでくれたんだ。
服もメイクもそのままだった。

時計を見ると9時を過ぎている。

今日がお休みじゃなかったら、困ったことになっていた。

平日だから、律はもう仕事に出た後。


シャワーを浴びて、すっきりしてから昨日置きっぱなしにしていたスマホを探した。
スマホは、律が充電してくれていたみたいでキャビネットの上にあった。

メッセージグループからは退出してしまおうと思い、アプリを立ちあげると、そのグループは既に削除されていた。

律がやったんだ。

ふっと自然に笑えた。


このまま、律に守られていられたら、どんなに幸せだろう。
他には何もいらないのに。


律はネクタイをちゃんと真っすぐにして出たんだろうか?

そんなことを考えながら掃除を始めた。


掃除機をかけ終え、片づけたところでドアフォンの音が聞こえた。
モニターのランプが点灯していたのでカメラを見ると、段ボール箱を持った宅配業者の男性が写っている。

そんなに重くはなさそうだったけれど、前に律が受け取るのを見た箱の2倍はありそうな箱だった。

SMグッズ……勝手にそんなふうに想像してるだけなんだけど。

律と「宅急便が来ても受け取らない」という約束をしてしまったから、受け取るわけにはいかない。
でも、そうすると宅配業者の人は二度手間になるわけだから、いるのにいないフリをするなんて申し訳なく思ってしまう。

ついうっかり出てしまったことにして受け取ってしまおうか?

別に中を見なければ、構わないんじゃない?

そうしよう。

そう思ってカメラを見ると、そこにはもう誰も写っていなかった。

慌てて追いかけようと、玄関のドアを開けた時、リビングでスマホの着信音が聞こえた。

平日のこんな時間に電話をかけてくるような人は律しかいない。

それで、開けたばかりの玄関のドアを閉めて、リビングに戻った。


スマホの画面には思った通り、律の番号が表示されている。
通話のアイコンをタップすると、すぐに律のあきれたような声が聞こえた。

「環、まだ寝てたのか?」
「起きてたよ」
「嘘だね。じゃあ何してたか言ってみろ」
「掃除機をかけて――」

宅急便を受け取ろうとしてたなんて言えない。

「掃除してた」
「何だそれ」
「何か用があってかけたんじゃなかったの?」
「ああ、それ、うん。あのさ……」
「何?」
「鶏の甘酢あんかけ」
「それがどうしたの?」
「普通の酢と黑酢の違いは何だ?」
「風味とかコク?」
「わかるもん?」
「どうかな。酸味が控えめとか聞くけど、うちにないからわからない。食べたこともないし」
「そっか」
「それがどうしたの?」
「気になったんだ。でもそれで解決した。じゃあな」
「あ、うん」


そんなのスマホで調べればいいのに。

もしかして、黒酢で作った鶏の甘酢あんかけが食べたいって意味だったのかな?
今日はわたしがお休みって知って、ちょっと手の込んだものが食べたいと思ったとか?

律がリクエストとかめずらしい。

支度をして黒酢と、必要な材料を買いに行くことにした。