星降る夜の寓話

夜遅くに帰って来た律に玄関のシーザーについて聞いた。

「ねぇ、どうして急に置物なんて飾ったの? しかもあんな大きなシーザー」
「あー、環、知らないのか。シーザーはなぁ、家に入って来る邪気を祓って、入って来ないようにしてくれるんだ。だから下駄箱の上は効果的なんだ」
「そんな迷信みたいなの今まで言ったことなかったよね?」
「迷信じゃない。これは風水。一緒にしてもらったら困る」
「風水……そんなの気にするの? 律が?」
「ほら、先月、犯人とやりあって肩がはずれたろ? あれで改心したんだ。やっぱこういう願掛けみたいなのは必要なんだって」
「でも、それと家に入って来る邪気を祓うのとは違う気がするんだけど?」
「わーかった。じゃあどけるよ。俺の部屋にでも飾っとく」
「だめ! せっかく律が置いたものなんだから、そのままにしておく。どうして急に置物を置く気になったのか聞いただけだから」
「ふうん。じゃあ、そのまま置いておく」
「シーザーもよく見たらかわいいよね」
「シーザーに『ただいま』を言う環もかわいいよ」
「見てたの?」
「何を?」
「何でもない」
「あー、シーザーに『ただいま』言ったんだ」
「言ってない!」

律は笑いながら、わたしの頭をポンっと軽く叩いた。

「やっぱ帰って来た時、部屋があったかいのはいいな。今日なんか車停めれないとこでずっと立ってたから寒かった」
「お疲れ様です」
「まぁ、世界平和のためだと思えばがんばれるわ」
「大げさ」
「いやいや、警察官はヒーローだろ?」
「自分で言う?」
「言ってくれないの?」
「はいはい、ヒーローだね」

律は「ふんっ」とふてくされた。