星降る夜の寓話

言ってすぐに大和さんは笑った。

「ごめん、冗談だよ」
「そういう冗談はやめて」
「さっきの2人、小笠原と山下は同級生なんだ。飯島とも仲がいい。正確には飯島と仲がいい。その関係で僕とも付き合いがある。先々月、小笠原の親が経営する法律事務所の30周年記念パーティで顔を合わせた。山下もそこで働いている。あいつらは僕と違って昔から……」

大和さんは言うことに一瞬躊躇したけれど、すぐに話を続けた。

「僕と違って昔から、飯島に似てると言ったらわかりやすい? 親がどうだとか、噂がどうとか、そんなことで人を判断するような人間を……嫌っている。だから飯島がいなければ、彼らは僕と付き合ったりしない」

そこでようやく大和さんは、掴んでいたわたしの手を離してくれた。

「僕も環に彼女たちと同じことをした。今はそのことを後悔している。心から謝りたい。僕を許して欲しい」

大和さんがわたしに頭をさげたので驚いてしまう。

「許してって……わたしは大和さんに何かされたわけじゃないから」
「もし、本当に、心からそう思ってくれるなら、お互い、過去にとらわれるのはやめにしないか? 環が時々何かを思い出して悲しそうな顔をするのを見たくない」
「……わたしは、大丈夫ですよ。でも……今日は……帰らせてください。ごめんなさい。次は、うまくやります。おやすみなさい」


そのまま大和さんの返事も聞かず、言い逃げみたいにすぐ近くにあった地下鉄への階段を下りた。

全然違う路線の入り口だったから、地下で迷ってしまうかもしれない。
それでも、あの場に居続けることが出来なかった。


泣いてるところを見られたくない。

あんなふうにかばってもらえるなんて、思ってもみなかった……