星降る夜の寓話

お弁当を詰め終えてキッチンを片付けていると、律が起きてきた。

「おはよう。今日ってお休みって言ってなかった? 事件?」
「俺が早起きしたらダメみたいな言い方」
「いつもお休みの日は昼まで起きてこないのに」
「目が覚めたんだよ」

律はダイニングの椅子に座ると、こっちを向いて話し続ける。

「いつから?」
「何が?」
「あいつとうまくいってるみたいだけど」
「あいつって?」
「杠葉大和。どういう経緯で?」

口調は何でもないみたいだけれど、下手な嘘ついたらすぐにバレるやつだ……

「何でも律に教えると思ったら大間違いだからね」
「帰りが遅い時はいつも一緒なのか?」
「律だって、西藤さんとデートしてる」
「俺、彼女の名前を言った?」


ミスした……
律はわたしが西藤さんと話したことがあるのを知らない。


「言ったよ〜。そんなことも覚えてないなんて刑事失格だね」

律がじっとわたしを見ているのがわかる。
目を合わせてしまったらまずいと思い、流しを見たまま、あとは流すだけだった洗い物をもう一度洗い直す。

「記憶にない」
「お昼ご飯、冷蔵庫に入ってるよ」
「ありがとう」
「お弁当の残り〜」
「なんだ。環の余り物か」

本当は、わたしのお弁当が、律の昼食の余り。

タオルで手を拭いたところでドアフォンが鳴った。

「俺が出る」

律がやり取りをしている間、わたしは自分の支度を始めた。


しばらくして律はそんなに大きくはない箱を持って戻ってきたけれど、そのまま律の寝室に持って入ってしまった。

すぐに戻って来たけれど何も言わず、今度はソファに座った。

「最近、よく荷物が届くね」
「通販でちょっと」


もしかして、荷物を受け取るために早起きしてきたの?


「何買ったの?」
「環には言えないもの」
「そんなこと言われたら気になる」
「俺がいない時に宅急便が来ても受け取らないで無視しろよ」
「受け取りくらいするよ?」
「勘弁して。発送元も品名見られるのも恥ずかしいから。警察官が買ってるってバレたくないから、受取りも環宛にしてるのに」
「勝手に名前使ってるの?」
「しょーもないことで足元すくわれることもあるから。まぁ、男にはいろいろあるんだよ。他人には言えないことが」
「なんか……それって……」
「絶対に受け取るな。万が一受け取っても絶対に中を見るな。環宛になってても俺の物だから。頼むから約束して」
「そんなに必死にならなくても……わかった。受け取らない」
「忘れるな。約束だからな」


これだけしつこく約束させられるなんて、よっぽど見られたら困るもんなんだ。
中身って、「男にはいろいろ」って言ってたけど、何かそういうものってこと?

西藤さんと会ってるのと何か関係がある?

警察官が買ってるのをバレたくないって何だろう?

……SMグッズ……とか?